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16 決意

七奈視点です!

 私は慶のことが、気づいたら好きになっていた。


 好きになったタイミングとかもよくわからない。

 気づいたら慶は私のそばにいて、気づいたら慶と一日中一緒にいて、気づいたら目で追うようになってて、気づいたら触れ合うだけで飛び跳ねるくらいに胸がドキドキするようになっていた。


 慶のことが好きだと思うと毎度のことのように「告白しようかな」と思うのだが、恥ずかしくていつも勇気を振り絞れなかった。

 しかしだんだん私はストッパーが効かなくなってきてしまっているようで、どうしても慶と恋人になって、幼馴染じゃできないようなことをしたい……と強く思うようになってしまった。


 でもその気持ちの隣にはいつも恥ずかしいという気持ちがあって、私は一歩が踏み出せない。


 そんなときに私は、あるSF映画を見て、ある奇策を思い付いた。


 ——そうだ。私が慶にアピールするのを、あらかじめ慶に宣言しちゃえばいいんだ。


 そうすれば、やらなきゃだめだ、という縛りも付けられるし、きっと私は逃げられずに済むはずだ。

 そう思った私はその日にすぐに実行に移した。


 というのもノートを使った案を出してくれたのは、私と一緒に映画を見ていた慶の妹の三咲で、私は最強の助っ人と協力して、『告白大作戦』を決行したのだ。


 三咲に慶が部屋を確実に離れる時間——お風呂の時間を教えてもらい、忍者のごとくささっと慶の部屋に忍び込んで、私なりの宣言を書いたノートを机の上に置く。

 そして後日、それを実行して、自分が告白できる状態にする、もしくは慶に私を意識してもらう。


 慶は私のことをどう見ているのかわからないけど、幼馴染として接してくれている感が強かった。

 

 でも私はやはり、幼馴染というよりも異性として、恋人として接してもらいたいと思ったのだ。


 ほんとは最初から『告白する』と宣言してもよかった。しかし、そこはチキってしまったのでこれ以上言及しないでほしい……。


 ただ私もこれ以上は先延ばしにし続けてはいけないなと思っている。

 というのも、もう告白しようという準備が整ったのだ。

 準備というのは、心の準備。


 本来すぐにでも告白することをあのノートに書いて宣言してしまおうと思っていたのだから遅いくらいだ。

 それは私があまりにも奥手で、照れてしまったせい。


 相変わらず自分は根性なしで、強がりだなと思う。


 でもそれはもう卒業してやる。

 

 私は慶に——




 告白の宣言をしてやる。




 その意思を固めて、私は三咲にメールを送った。


『私、告白しようと思う』


 するとすぐに返信が来た。


『ほ、ほんとに⁈ 明日?』


『うん。そのつもり』


『わかった。じゃあいつも通り、お兄ちゃんがお風呂に入ったら連絡するね』


『わかった。いつもありがとね。もうこれで、最後にするから』 


『うん! 頑張ってね!』


 そのメッセージとともにウサギがサムズアップしているスタンプが送られてきた。

 

 それに微笑みつつも、内心はドキドキしていて大変だ。

 

 ついに私は明日、告白の宣言をする。

 

 そしてその明日——つまり明後日が、私の勝負の日となるだろう。


 やっぱり緊張するけど、いつまでもトリッキーなことをしてちゃだめだ。 

 気持ちを伝えないと、だめだ。


 私は自分に何度もそう言い聞かせて、自分がまた逃げないように外堀を固めていく。

 もう一押し、頬を両手でぱちんと叩いて、気合を入れた。


「よし。頑張るぞ!」


 誰もいない自室でそう言って、私は明日に思いをはせるのだった。


 


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