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15 目覚め

「……ガンゲーってこんなに疲れるもんなんだな」


「慶大した活躍してないじゃない」


「悲鳴を上げるという活躍はすごくしたと思う」


「誇れないわね……」


 シメのゲームを終えた俺と七奈は、すっかり夜になった外に出て、帰路についていた。


 ちなみにシメのゲームはガンシューティングゲーム。よくゲームセンターにある、ゾンビを殺すゲームだ。

 七奈はどうやらゾンビを殺すゲームにはまったらしい。

 爽快感はあると思うのだが……実際に銃を持って殺すとなると少し怖かったので俺はひたすら悲鳴を上げていた。


 足をひたすら引っ張る俺をイケメン過ぎる七奈が救出。

 もはや一人プレーであった。


「もし現実でゾンビ現れたら多分俺真っ先に死ぬんだろうな」


「……来世に期待ね」


「そこは『私がさっきみたいに助けてあげるわ!』的なこと言ってもいいんじゃないですかねどうなんですかね!」


「お、男なんだから逆に私のこと守りなさいよ!」


「……守ってほしいのか?」


「な、なわけないでしょ! ふんっ」


「マジでどっちなんだよ……」


 七奈は言うことがコロコロ変わるもんだから困る。

 俺はそこまで勘が鋭いわけではないので、本当にわからないことはわからない。


 ただ、男なんだから守りなさい! というのは本心からなんだろうなと思う。


 ってか好きな女の子に守られる主人公とか、なんか想像しただけで恥ずかしいんですけど! 女々しすぎるんですけど!


 男に生まれたからには勇ましく生きたいなと思うのは自然なことで、これから筋トレでもするかな、と考えてみる。

 がしかし、自分が筋肉マッチョになった時のことを想像してみたが、あまりにも似合わなさそうなのでやめておくことにした。

 

 そう、いうなればこれは戦略的撤退なのだ。(自己防衛)


「まぁ安心しなくても、私たちが生きてるのは現実世界なんだから、ゾンビがはびこる世界にはならないと思うわ」


「そうであると俺のメンツ的に助かるわ」


 まさにゾンビが現れるなんて想像上のことで、確かに現実で必ずしもゾンビが出現しないということは証明できないが、ゾンビが現れると信じているものはそうそういない。



 ——まぁゾンビが目の前に現れたりしたのなら、信じてしまうかもしれないがな。



「……ん?」


 何かが胸の中につっかえて、俺は足を止めた。

 そんな俺と同様に七奈も足を止めて、俺の方へ振り返る。


「どうしたの? 早く帰りましょ?」


「…………」


 七奈の言葉にこたえる余裕もなく、俺の思考は加速していく。


 リアル。現実。想像上のこと。


 この世界は紛れもない、普通の世界。

 空想なんてただの空想にすぎなくて、それが現実で起こらないからこそ空想は生きている。

 

 そんな空想が現実で息をし始めることがない確率は、ほぼ百パーセントに近い。

 

 しかし起こらないということを完全に証明できるものはおらず、つまりは空想が起こる確率は限りなく低くとも存在する。


 ——そうか。俺はこのわずかな可能性ばかりに、目を向けてしまっていたのか。


 実際に空想らしき事象が起きて、夢見る俺はそのわずかな可能性に夢を見てしまった。

 しかしようやく覚めた夢は空想を消し去り、現実を見せる。


 そして俺の中で一つの仮説が、当然のようにふっと浮かんできた。



 もしかして、この予知ノートは——

 

 


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