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11 ゾンビを駆逐

「で、お前らいつまで俺の部屋にいるんだよ」


「んー、一生じゃない?」


「適当すぎんだろ!」


 夜ご飯も食べてお風呂も入って。

 そろそろ三咲の部屋にて男子禁制の恋バナでも始めるんじゃないの? と思っていたのだが、こいつらなぜだか俺の部屋でバイ●ハザードやってやがる……。


 もっと女子らしい事しろよ! ってか、もう十二時回ってんのにゲームしてんじゃねぇい! 美容の敵だろうが。


 しかしこの女子二人は強者らしい。

 俺眠い。


「ゾンビ来たゾンビ来た! どうしよう七奈ちゃん!」


「撃ち殺しちゃえ!」


「ラジャ! ずばばばばばばばばばばばん!」


「おぉー殺した殺した! ナイスだわ三咲!」


「うん!」


 会話の内容がひどく物騒なんですけど……恐ろしい。

 もっと女子らしい会話しろよ、と思うのだがそれを言ったら二人がかりで俺をシメてきそうなので大人しくしている。


 ほんと寝たい。


「ふぅー疲れたー。お兄ちゃんジュース持ってきて」


 何この妹。俺の部屋勝手に来ておいて普段からパシってるお兄ちゃんのことをまたパシしろうとしてるんですけど? 前世ファシズム?


「自分でもってこい。そんぐらいしないと太るぞ」


「七奈ちゃんお兄ちゃんがセクハラしてくるよぉぉぉ‼」


「なぜすぐセクハラにする⁈」


 最近セクハラとかパワハラとかに敏感だから、すぐにこうなる。

 ってかこの妹すぐにセクハラにするじゃねーか。セクハラ冤罪だぞこれ。


 しかし三咲大好き俺の幼馴染こと七奈は俺を軽蔑しきった目で見ている。


「慶……最低」


「俺なんかした⁈」


「セクハラ」


「だからしてねぇんだけど⁈」


「……最低」


「無理やり感が隠しきれてねぇ……」


 男子一人の女子二人という数的不利な状況。

 今ならどんな裁判も俺の有罪に決定しそうです。

 

 俺は大人しく一階にジュースを取りに行った。

 

 ——俺がお前らにパワハラされてんだろこれ。


 しかしそんな申告は言っても通るはずもないので心の奥底にしまっておいた。

 ほんと妹なんてろくなもんじゃない。


 まぁあいつのおかげで七奈と気まずくないし、普通に話せるんだけど。

 その代償がなかなかに酷なものだが。


 ジュースをもって、俺の部屋に入ると、二人はまたゾンビを殺して歓声を上げていた。


 俺、今ならゾンビ応援できちゃう。


「お兄ちゃんおっそい。めっちゃ待った」


「お前だけ精神と●の部屋にでも入ってんのかよ」


「えっ何言ってるかわかんない」


「お兄ちゃん泣きそうです」


 ため息をつきながらジュースをちゃぶ台の上に置き、俺はベッドから二人がゲームする姿を見ていた。

 三咲、ほんと生き生きしてんなぁ。


 そんなことを思っていたら、俺の方に振り向いた七奈と目が合い、そして七奈が俺の隣に腰をかけた。


「わ、悪いわねこんなにうるさくしちゃって」


「罪の意識はあったんだな」


「ま、まぁ……でも、慶もなんだかんだ楽しそうにしてるじゃない」


「どこがや」


 寝不足なのに部屋を占拠され、パシられて楽しいわけあるか。楽しかったら俺はドMかよ。

 しかしあいにく俺はドMではないので、パシられて楽しいわけではない。


 ただ、こうして七奈や三咲の楽しんでいる姿を見るのは、まぁ確かに楽しかった。


「慶と三咲って仲いいわよね」


「明確な上下関係あるけどな」


 兄というものは大体妹に振り回されると相場が決まっているらしい。

 もうストレスはなくなったが。


 七奈はゾンビをひたすら駆逐し続ける三咲に対して、羨望の眼差しを向けた。

 どこか三咲に憧れているような、そんな目で。


 そして七奈の口から、言葉がこぼれた。




「ほんと、羨ましい」




 ……どっちの羨ましいなんだ?

 

 わからなくてそう聞いたが、「あ、あんたのことじゃないんだからね!」とツンデレのヒロインが言いそうなセリフナンバーワンのセリフを返された。



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