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6頁:やっぱり非日常

…ヂヂヂヂ


ヂヂ…ヂ


 うあー…ノーイーズー。


 きてますねえ。


 いや、あー。


ヂヂヂヂヂヂヂ…


 つー、なんか、全身動かないー。


 あ、これ、あれですかね。


 金縛り体験?


 わーお、初体験。


 …いや、もしかしたら前の僕は体験してるのかもねえ。


ヂヂヂ…ヂヂヂヂヂ

ヂヂヂヂヂ…!


ヂヂ…


 あー、はいはい。



 いい加減分かってるよ。


 …前の自分に触れようとするとノイズ大きくなるもんなあ。




 理由までは…しらねー。


 ってか、動かないな体。



 何か熱いし。



 …あー、変な夢と関係してんのかなあ。

 狂った元美人にザックリ刺される夢。



 …ちょっと…楽しかったかもなあ。

 多分、嘘だけどさ。



 あああああああああああ!!

 分かってるよ!分かってるとも!


 あれ、夢じゃない!


 まじで痛かったし、怖かったし、ちょーうるさかったし!


ヂヂヂ…

 そう、ノイズがうるさいんだよ!


 ってか、…何よりも!

 人を刺す感覚が一番いやだった!


 人を蹴る感覚とか経験したく無かったよ!


 …だって、何かゾクゾクしたもん!

 ぐにゅって、ザクって、ゴリって。


 あー!


 違う違う。


 僕、そういうキャラじゃない!


 …必死?

 だって、死活問題だものねえ。


 ってか、いい加減動かないかなあ、カラダ。


ヂヂヂヂ…ヂヂ

 瞼が開かないとノイズうっさいんですけど。


 てか、このノイズどんどんひどくなってるかも。


 …気のせいかな?




「あー、よく寝た」


 お、声出た。


「残念だけど、夢じゃない。この被害者が」


「つ…あー、何ですか、加害者みたいな口調で被害者って言わないでくださいよ」


 おー、毒舌の方のナースさんだ。

 久々ー。


 …だっけ?


「…あれ?…んー。いたいな」


「そりゃそうでしょう。…腹部に12箇所、右太ももに1箇所、背中に2箇所の刺し傷と、後腹部に大きな斬り傷一つ」


ヂヂ…ヂヂヂヂヂヂ

 …あー、そんなこともあったねー。ノイズうっせー。


「…よく死ななかったわね」


「残念そうに言わないでください」


「あ、そうそう、絶対安静にしていてね。動いたら更に入院期間が延びていずれ私が殺しちゃう」


「…本気?」


「…いや、さすがに嘘」


 ですよねー。


 あー、よかった。

 知り合いに殺されるとかまじで勘弁。


「はあ…まったく。ま、ちなみに言っておくと、あのアホは警察に捕まった。…もう一つ言っておくと、君は三日寝ていた」


「…さらっと言いますねえ」


「まあね」


 あー、捕まったんだ。


 ってことは、一応僕は法律が適用される人間ということかな。


「…あ、裁判とか」


「気にしなくていい。君の膨大な遺産から勝手に弁護士がやっている」


「あっそ」


 へー。

 あ、そうそう、ここで僕の自己紹介追加情報。


 お父さんの…ヂヂヂヂヂ…さんと、お…ヂヂヂ…の…ヂヂヂヂ…さん、実は事故で死んでるらしいよ。

 …実感わかないけど。


 で、まあー。


 …保険金と遺産合わせて4億くらいあるんだなー。


 …結構お金持だったのね。

 あっは。


 僕には使えないけど?


 宝くじよりも大きい配当だよ。


 …べ、別にかなしくなんかないんだからっ。


「と、聞いてる?」


「ええ、もちろん」


「そうか、じゃあ遺産の9割は私が貰っておくから」


「言ってませんよね」


「ちっ」


 …最悪だなーやっぱりこの人。

 でも、こうでなくちゃね。


「あ、それと前の隣の部屋の…来栖」…ヂヂ「さんには感謝しておきなよ。命の恩人だから」


 やっぱ、名前だけ聞こえないー。


 何、もしかして今後の展開にかかわる重要なファクター!?

 …いや、そんな事全く思ってないけど。


「あー、そうですねえ…前の?」


「…アホになってしまったのね。血まみれの部屋に患者が入れるわけがない」


「ああ、そういえば」


 花瓶も割っちゃったし!


 …どうでもいいけど。


 さすがに血なまぐさいのは嫌だから、助かったよ。


「…と、その来栖さんは隣のベッドだ」


「は?」


 なんでー?


「…あの一角は封鎖されている。誰かが死にかけたせいで」


「あのー、僕のせいみたいに言わないでください。そちらの管理責任です」


「…そう…ね」


 あー、言いすぎた。

 管理責任とか難しい言葉使うべきじゃなかったわ―。


「…ま、ようするに、あそこの一角の洗浄が終わるまでは使えないってだけ。医者が減った分も補充したしね」


「ほあー、じゃ、そろそろ寝ていいですか?」


「だめ、隣に恩人が居ると言ったばかりでしょう」


「ですよねー。ってか、なんかカーテンカリカリ言ってますし」


 …引っ掻かれてるカーテンかわいそー。


 こえー、…僕のお財布にお金補充しなきゃ。


「うん、それじゃ、お大事にね」


 …ナースさんはスタスタと僕のベッドを後にした。


 っていうか、なんかすごく心配そうだったんですけど。

 そんなに保護欲そそるかな、僕。


ヂヂヂヂ…カリカリ

 あー、なんかノイズに混じって、変な音が。


 …気にしたら負け…


「…ランチ」


「…退院したらでいいですか?」


「…今、ホットココアも」


「分かりました」


 …あ、お財布空っぽだったっけ。

 僕の飲み物も買えねーよ!


ヂヂ…ヂヂ…

 おっかしいなー、なんか、一部の女性と話してるとノイズひでー。


「ところで…いつからニックネームがクルルさんに変わったのですか」


「…あっれー?僕の心の声なんですけどー」


「…聞こえました。というより…言ってました」


 あっはー、まじかー。

 

「まじですかあー。…来栖さん」


「無理しなくても結構ですよ」


 うるさい、クルクルさんめ。


「ふう…あ、カーテン開けますね」


 そういえば、カーテンも開けずに寝ながら会話してたよ僕ら。


 シャーと、カーテンが開く。

 …もっといい擬音ねーのかな。


 なんか、別の音と混同するよ。


ヂヂヂ…ヂヂヂヂ

 ノイズはどうでもいいやー。うるさい。


「まあ…やつれた顔」


「嬉しそうに言わないでください」


 ひっでー。


「…歩けます?」


「…んー、多分絶対安静なんですけど」


「…肩くらいなら貸せますよ?」


「そんなに行きたいんですか?僕と」


「そこ強調する必要ありませんから。…奢ってほしいだけですよ」


 …あれえー?

 なんか、変な感じ。


「もしかして、前の僕と知り合い?」


「…いわゆる恋人関係です」


 えー?

 おい、衝撃の展開すぎ、すぎるんですけど。


 恋人?

 誰と、誰が?


 クルクルさんと?


 誰が?…僕が?


 ようするに。

 クルクルさんと僕が恋人?


 え?


 ちょ、え?


 わきゃああああああ!!


 昔の恋人に何見られてんだよ!

 ってか、昔の恋人って言い方やだな!


 わきゃああ!

 もーいい!


ヂヂヂ…ヂヂヂ

 だから、もーいい!


 ノイズ出そうだからもーいい!って先に言ったんだよ!


「…冗談ですよ」


「あ、冗談じゃないんですね…」


 まーじかー。

 顔がまじだよー、この人。


「…うふふ」


 こええー!


 ってか、前の恋人にホットココア奢らせてたのかよこの人。


「…同年代ですっけ」


「同級生です」


「それは嘘ですよね…?」


 いや、おいおい、だって…記憶を手繰ってみると。

 …あってるか知らないけど。


 モモちゃんとクルクルさん初対面っぽかったよね?


「…ばれますか」


「ばれますねえ」


 …あー、やっぱ会話しづれー。


 だりー。ヂヂヂ…うっせー。


「でも、同級生にはなりますよ…転校するので」


「あっはー、それは本当ですか?」


 …面倒くさいことになりそうだなあ。


 あー、でも、こういう展開…いいなあ。


 ヴァイオレンスな展開…期待してないんだよー。


 なんか、あのときのノイズすごいうるさいし。

 …すごく、ゾクゾクしたし。


ヂヂヂ…ヂヂ

 うそうそ!今のなし!

 ノイズに免じて取り消して!


「…くす、じゃあ、…貸しにしておきますね」


「何を…?」


 すごく、怖いです。


「恋人を忘れていたことと、命を救ったことと、ホットココアを奢らないことと、散歩に付き合わないこと」


「まってください、ホットココアは奢りましたよね」


「一回だけですよね、私は2回も頼んでます」


 …わーがーまーまー。

 でも、きれいだから許しちゃう。


 …ってならねーよ!


 わがまま言われるのはそんなに嫌いじゃないけどね!

 だって、なんか…いいし!


 変態?…ちげーよ!


ヂヂ…ヂヂ

 ノイズ?…そーだよ!


「なんだか、会話の間隔が広くないですか?」


「気のせいですよー。やだなあー」


 あっぶねー。


ヂヂヂヂヂヂ…ヂヂ

 自粛しようとしてるとこに出てくんな、ノイズ!


 もう、ノイズなんか無視してやろう。


ヂヂ…「で」…ヂヂヂヂヂ


 …毎回毎回毎回…このパターンかい!


「…全部まとめて」ヂヂ「してくれたら許します」


「意味が分かりません」


 いや、比喩とか、冗談とかじゃなくて、本当に。

 …ノイズのせいですけど。


「…間接」ヂヂヂ「したくせに…」


 …分かっちゃいました。


 …いや嘘です、分かってません。


 分かりませんんん!!


ヂヂ…「してください…」


 あー、もしかして、ノイズは僕が聞きたくない言葉も消してるのかな?


 …前は消してくれなかったけど。


 そのせいで発狂しかけたし!


「…えあー、貴方、言う、意味分からない」


「…してくれないんですか…?」


 眼に涙ためてウルウルとか、やめてください。


 潤んだ瞳とか、嫌いです…。


 …嫌いです!本当です!


ヂヂヂ…ヂヂヂヂ

 うるさい!


 あ、敬語になってた?動揺してた?…てか、してる?


「ああああ!しません!」


「…意味分かってるじゃないですか」


「もー、いいじゃなーい、そんな昔のことはー」


「…ぐす」


 やめてー!鼻とかすすらないで!


 あーああーあー!


ヂヂヂ…ヂヂヂヂ

 うるさい!


 やっぱり、こういう展開もヤダ!


「…じゃあ、30秒目を瞑っていてください」


「や、だめ、です」


 あわわ、あわわわ。


 近い近いよ!


 なんか、クルクルさんベッドから降りてこっちに近づいてきてるよ!


ヂヂヂ…

 うるさい!


 あああ!ノイズにかまってる間に僕のベッドに乗ってるよ!


 ギシ…とか、やめて、その音!


 わきゃあああ!


 僕、純情なの!


「そー…」


 そっとしておいて!

 あう、近い、近い…。


 あー、うー!


「ちょ…来栖…さ」




















 わきゃあああああああああ!!!!!!!!


「わきゃああああああ!!」


 ああああああ!


 声に出ちゃった!


 わきゃああああ!って、出た!


 何か出た!出た!


 魂ー!


ヂヂヂ…ヂヂヂヂ!

 ノイズ!そう、うるさい!あーーーーーーー!


 あー!


「ふふ…これで許してあげますね」


 わきゃあああ!


「あう、あ、ちゅ…あー」


 何を言ってるか分からない?


 僕もです。


 そあ、クルクルさん、その仕草やめて!


 唇を舌でちょっと舐めないで!


 やあああああ!!!


 わきゃああ!


「…ごちそうさまです」


 わきゃああああああああああああ!!!


 すっげー、大人の余裕?


 同年代だロ!


ヂヂヂ…ヂヂヂヂヂ


 るーっさい!!


 スッっと、ベッドから居なくなって、名残惜しそうにベッドがギシリと鳴って。


「おやすみなさい」


 一言挨拶が聞こえて!


 …カーテンシャーってなって、隣から…寝息聞こえてきて。

 はええよ!


 寝つきいいですね!


 わきゃあああ!


 あー!







 僕は何もしてない!


 何も見てない、今何もなかった!


 うん!


ヂヂヂヂヂヂヂヂ…ヂヂ


ヂヂ…ヂ


 うあー、はー!


 …ね、寝よう!


 そうだ!



 …おや、おやすみ!


 …後ろめたいとかないから!




 おやすみ!


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