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5頁:突然ですが、非日常

 …おいで。


 おいで…。


 おいで…おいで…。


 …どこにだよ。


 ヂヂヂヂ…


 おいで…ヂヂ…で


 だから…どこに…?


ヂヂ…いで…ヂヂヂヂヂ…


 どこにって…?


おいで…ヂヂヂ…おいで!




 んあー、いい夢―。


 最近…つってもまだ記憶喪失から一月も経ってないけどねー。


 ともかく、最近こんな夢ばっかりだよ。


 悪夢…っていうのかなー。

 毎回毎回毎回不快な夢。


 さて、そんなことはどうでもいいんだけどー。


 今、問題なのはー。





 …お医者さんがお医者さんごっこやってることだからねー。




 あー、そうだな。今の状況を例えるなら。


 怪しい女の人(お医者さん…田中さんだっけ)が、メスによって僕の体を切ろうとしている感じかな。

 ちなみに僕はベッドに寝かされている感じかなー。


 …あ、今疑ったろ。


 でもねー、これ、医療現場の様子じゃなくてー。



 …まじでメス振り回した危ない田中さんが僕をぶっ殺そうとしてんだよね…。


 いや、意味わかんねえー。


 何で、こんな状況?

 何、僕狙われてるの?


 いやいや、いらねーよ、その設定。


 どーでもいー!


ヂヂ…

 うっせー!



「ねえ…いい加減死になよ」


「あっは、やですよー…っち!」


 うおっと!


 あー、切れた。

 ちょー、切れた。


 …いってー。

 ってか、いい加減ってなに?前から?前からなの?


 いつからだよ!


 て、血…ドバドバじゃん。


 …あああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!

 アアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァ!


 いってえーよ!ふつーに!


ヂヂヂ…ヂヂ…

 今かまってる暇ないんだよね…!


「つー、痛いなあ…それでもお医者さんで…すか?」


「へえ…君は痛みを表に出さないタイプか…くく、それはそれで」


「変質者…が」


 あっは…あー、くっそ。


 ●○ゲの主人公おとなしくやってればよかったああ!


 こんなサスペンス展開…い・ら・な・い!


…ヂヂヂ「よ!」


 …あー、何言ったとかどうでもいー。

 とりあえず、…痛いの…やだなあ。


 あ、そだ、ナースコール…


「クク…今、皆休憩中さあ…ついでに、ナースコールは私が切っておいたよ」


 あー、くっそー。


 ってか、どうしようかな…。


「ほら…血が出てるじゃない…治療してあげるからさ」


「うっそー」


 ブン!っと音がした気がする。


 ともかく、メスを本来の用途ではない使い方している田中さん。

 …美人が…台無し…っだよ!


 おっと、…あぶな…!


 どんどん追い詰められて…って、後壁かよ!


「あらー…くくく、どうしようか。後が…ないね?」


「あっは、つー…」


 あー、やべー…地味に痛いんですけど。


 お腹から血がドクドク…。


 あれ、けっこーやばい?


 おいおい…だから…ヴァイオレンス展開…いらねーよ。

 期待してねーよ。


 …さて、どうするかなあ。

 とりあえず、サクっと状況確認。


 …足元にはベッド、後は壁、右は壊れたナースコール。

 左は花瓶、…正面はキチガイ美人。…その向こうに栄光の扉。


 …きつくね?


「くく…君、この状況でも冷静なんだねえ…」


「あれ?僕って心の声漏れてるタイプですか?」


「まさか、…顔に出やすいだけだよ…冷静な顔だ」


「あっは、かだいひょっ!」

 ごろごろ…

 ベッドから転げ落ちる。


 おおおぁああ!?


 やっべー、きてるきてる。


 今、あの人…!あの人メス投げたよ!?

 

 やべーよ、おいおい。

 てか、頭ぶつけたし…いてえ。


「抵抗とか…やめたら?」


「やですよ…」


 …花瓶を思いっきり…投げ…投げ…。


 ガシャアアアン!


 あー、重いし!あー!体衰弱してんじゃん!


「くく…あは、昼間から殺人とか、ゾクゾクするね」


「変態…っすかー!」


「かもね…」

 ゆらりと、…変態美人殺人鬼の体が揺れ…て。

 あれ?…メス、目の前…あれ。


 死ぬ。




    死ぬ。


 


 あああああああ!!!


 おい、変態は認め…と。

 って、違う!そうじゃなくて!そんな事考えんな!僕!




 あ。


 …避けたのにー!


 いってー!


 …肩にグッサリ……いや、刺さったりとか、ないから!


「赤くて…きれいだよ…ゾクゾクする…」


「ああああああああああああぁああ!くっそーがー!」


「……まだ冷静か」


「どこがだああ!」


ヂヂヂ…ヂヂ…ヂヂヂヂッ!!

 ああああ…あ…うっさ…また…うるさ…。


 こんなときに…ノイズ頑張んな!


 うるさい!痛い!熱い!




 ああああ!もう、どうでもいいいいいいいいい!


「かかってこいやー!」


「おっけー」


 ブン!


「うそうそ、今の取り消し、って…あが」


 ブン!


 あー、くっそ、メス振り回すんじゃねえよ!


 ゴロゴロ…ってどんだけ必死?


 生きるのに必死?


 あー、くそ、いつから僕はそんなキャラに。

 てきとーに、てきとー。


 …誰か助けてー!


「くく…無理無理。せめて私をどかさないと…逃げられないよ?」


「…あっそ」


 …痛い、熱い、うるさい…ヂヂヂ…だからそれうるさい。


 …もう、どーでもいい。


「あー、右肩痛い。左脇腹痛い。ついでにあんた…うざいよ」


「くく…で?」


「お前が死ね」


 もういい。


「うわあああああああああああ!!!」


 タックル。


 猛然と、勇猛果敢に。

 

 技術の粋を究めた、超すげー切れ味のメスに…。


 …素手で立ち向かう?


「くく…そうこなくっちゃ!」


 ズッ!…メスがどっかに刺さった気がする。


 …血あったけー。


 ああああああああ!いってー。

 で?


「おあああああ!」


 そのまま、タックル継続。

 押し倒す。


 美人を押し倒すとか言ってる余裕ねー。


「いってええんだよおお!!!」


「んなっ!?」


 頭突き。

 頭を使え、頭を。


 何度も、何度も、…もう、痛いとかどうでもいい。


「くっ!このっ!」


 …あー、何か、背中にメスがもう一本刺さってる感じ。


 何本メス持ってんだ、こいつ。


 いってー、あっちー、うっせー。


…ヂヂヂ…

 思い出したように…出て…くん…な!

 

「あああああああああああああああああああ!!」


「ひっ!…なんてね」


 …顔が頭突きで潰れて、頭血まみれで、きれいな顔ぐちゃぐちゃで、鼻多分折れてんな…い てえーだろ。


 もう、いいじゃん。…くそめ。

 …ちーくしょー、腕に力はいんねー。


 …とまあ、足にメス刺さったし。


 …なんか、お腹からメス抜いて、刺して、抜いて、刺して。


 …何の愛情表現だよ。


「…いって…」


「ほう…そろそろ痛みを感じてないのか…くく」


「あああ…うっせ…変態…ノイズめ…うっせ」


「ノイズ…?はて…まあ、そろそろ…死ねばいいね」


 大きく振りかぶって、首めがけて…メスが!


 きったーーーーーーーーーー!!!!


ヂヂヂ…ヂヂヂヂヂヂ!


 もう、ノイズとか気にしねー、…全力で…横に転がる。


 あー、マウントポジションがあ。


「ちっ!」


 空を切るメス。


 あー、こえええ!


ヂヂヂ…

 ああああああああああああああああああああああああ!!!!!

 もう、ノイズなんなんだよ!

 こんなときまで、こんなときまで!

 折角痛いの我慢してんだ、邪魔スンナ。

 気が散る、ってかいってえ、熱い!うるさい!

ヂヂヂ…ああああああああああああ!!!!!!!!!


「あああああああああああああああああ!」


 心の叫びが漏れ出す、漏れて溢れだす!


 …いって…。


 まあ、…ああああああああああ!


「っち…!逃がすか!」


 絶叫しながら、痛くて熱い体をごろごろ転がして無様にたどり着く…脱出への道。


「くく…逃がすかあ!」


 そして、あの人気づいてないなー。


 …僕の背中のメス…貰っちゃった、エヘ。


 手の中に、…ちょっと手が切れてる気がするけど。

 隠し持った…一本だけのメス。


「死にな…よ!」


「あんたがね」


 ずぶり…と刺さる、もっかい右肩。


 だから?


 いい加減、この痛み、も熱さ…も、慣れてきたよ?


ヂヂヂ…

 お前ははなっから慣れてんだよ!


「あっははっはあははあああ!!」


 近づいたああ!


 何事?みたいな顔してすっとぼけてんな!


 …あーーーーー、痛いの痛いの…あいつに飛んでけー!


「え?」


 ズブリ…刺さるメス。


 刺された右目。


 …あの人の。


 変態美人殺人鬼…あ、今はそんなに美人じゃねーなー。


 の、み・ぎ・め。


 そう、右目右目右目。


 ああああああああ!!


 きっもちいーーーーーーわありりいいい!


 ぐにゅって、ぐにゅっていったあ!


 きっもー!


 ああああああああ!!!!!!


 刺す方が刺されるよりよっぽど苦痛!


 痛くないけど、苦しー!


 ああああああああああ!


ヂヂヂ…


ヂヂヂヂヂヂ…ヂヂヂ


「ぎゃああああああああああ!!!」


「もーっちょっと、品のある…叫び声は出せないんですか?」


 …メス放置。


 実は、僕、左利きなんっすよー。


 だから?って話ですけど。


 変態…もうめんどくせー。


 とにかく、あいつの顔面を…蹴り飛ばす。


 のっかってくんな、気持ち悪い。


「ぎゃああああああ!!!」


「黙れよお…あー、…いってー」


ヂヂヂ…ヂヂヂヂヂ!


 もうー、どうでもいい。


 ずるずる…あ、そろそろやばいな。


 …ずりずりと、体で扉をスライド。


 鍵かけ忘れてよかったー。


 ちょっと隙間ができる。


「ぎゃあ…あああああ!」


 …叫ぶな…さて…逃げよ…って…あ?


 グサリ。


 とでも表現すべき?

 

 なんか…メスぶんまわして…刺さった。


 …誰に?僕に。

 

 …どこに?背中に。


 …どこら辺?…なんか、やばそうな…肺のあたり?


「ゴホッ…ゲホ…ボッ…ガ」


「ああ…あ…」


 何か…口から…血?


 あー、いって…血?


 きんきゅうにゅーいんがひつよーです。


 …ってか、ここ病院ジャン。


 今お昼?知るかよ、助けに来いよ。


 …何か、冷静。


 走馬灯?何それ。


 …走馬灯に見るような思い出何一つねーよ。


 プッ。自分で言ってて笑えないー。


「ああ!…あ…」


 っつ…あ…だめだ、目がかすむ。


 ってか、勝手に気絶してんじゃねえよ…。


 お前のせいで僕は気絶すら出来てねえんだよ。


 痛すぎて。


 目刺されたぐらいで気絶とかふざけるな。


ヂヂヂ…ヂヂヂヂヂヂ

 好きに鳴り響けよ、ノイズ。


 もう、好きにしろよ。


 あー、いって…。


「ごほ…」


 …おい…やばいんじゃないの?

 

 血いっぱいだよ。


 あ、何がやばいって言うとさ。


 …この部屋、呪いの部屋として使われなくなっちゃうんじゃないのーって…。








 あー、お別れ?


 …早すぎ。


 ってか、防音うぜー。


 隣の部屋…のクルルさ…ん。


 おい、あの人に頼るの?


 仕方ないじゃん。


 …あー…。


 扉…頭一個分あいてるな。

 …僕の頭挟まってるし。


 さー、それじゃー、いってみよー。


 いち、…にの…


ヂヂヂ…


 さん…


「ああああああああああああああ、、、あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ、、、、、、あああああああああああああ、、、、、あああああああああああああああああああああああああああああああああああ、、、、、、、あああああああああああああああ、、あああああああああああああ、、、、ああああああああああ、、、ああああああああああああああああああああああああああああ、、、あああああああああああああああああああああああ、、ああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」


 ゴホッ…気管に血入った。

 あれ、気管から血が出てるのか?


 …どうでもいいか。


 気づいてよ…頼む。


 110円のホットココア…奢ったろ?


 …お財布空にしてやったじゃないの。


「…大丈夫ですか?」


「…そう…ご…見え…ほっ」


「…誰かーーーーーー!…って」


 おいおい、あの人…叫ぶようなキャラかよ。


ヂヂヂ…ヂヂヂヂ…ヂヂヂ…


 ノイズーともおーわかれー。


 あー、意識、手放す。


 …手放す…。


 もういいや。


 クルルさん。任せた。



 …寝よー。


 …寝る?








 

 永眠ってやつですか?



ヂヂヂヂ…




 グンナイ…糞野郎。



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