13頁:日常の壊し方
ヂヂ…ヂヂヂヂ…
あう、うるさー。
ヂ…
うっせ、つってん、だろ。
あー、頭痛いー。
あ、間違えた。…頭が頭痛で痛いー。
だっけか?
はあ、何か、痛い。
頭の中は激痛、外はなんかいい感じ。
…これだーれだ。
正解は…なんだろね。
ヂ…ヂヂヂ
はい、ノイズさんは存在自体が不正解だから二度と出てくるなー。
あー、んー。
このまま寝てるかなー。
…いいよねえ。
だよねえ。
うん。
いーいーよーねー。
「起きてますね?」
んー?
何やら頭上から声が。
「…えい」
グサ、…うあー頭のてっぺんに刺激がッ。
例えばそうだな…つむじをつつかれたような。
って、まんまだなあ…。
あっは。
あーあ、うー、…何回つつく気ですか。
えい、グサ、えい、グサ、えい、グサ。
「あ…あの…下痢なっちゃうのでやめてください」
「単なる迷信ですよ、気にせずに」
…うー。
「チチチさんこそ、人を枕、にしないでください」
一瞬声が裏返ったようなー?
…そこまで重いか、僕。
「はて、枕とな?」
「重いです、暑苦しいです」
あー、同感。
…まあ、今の状態に気がついたら脳が終わりそうだから無視するけど。
ふっ、逃げたのではない。戦略的撤退というやつだ。
ヂ…ヂヂヂ
うっさい。…あー、気分台無しだよ。
…なんの気分?
…な、ななな、なんでもないっ。
「おはようございます、来栖さん」
「いえ、残念ですね。現在の時刻は3時です」
「驚きました、おやつはどこですか?」
「…残念ですが、深夜の3時です」
「ん、面会時間ー」
「騒がれても面倒なので、…隠しておきました」
やっさしー。
多分、いい人だあーっ。
「…あ、ちなみに言うとですね。起こしても起きなかったからです」
「ご迷惑おかけしました」
「いえ、こっそり抜け出してどこかへ行ってください」
んー…?
微妙な、違和感。
「…あ、…あっは」
「…どうかしましたか?」
…あー、ておくれ?
うあー。
ちっ。
ヂヂ…
…黙れ。
ヂヂ…「なたは」…ヂヂヂヂ「じゃなか」…ヂヂ「です」…ヂヂ
うるさい、うるさい、黙れ。
「あなたは」…ヂヂ…「そつきで」ヂヂヂヂ…「で、さら」ヂヂ
頭痛くなるだろ、黙れ。
うるさい。
ヂヂヂヂヂ…ヂヂヂヂヂ
うるさい、うるさい。
聞こえないだろ、聞こえない聞こえない聞こえない。
ああああ!
「あなたは、…」ヂヂヂヂヂヂ「です」
「黙れ!」
ヂヂ…ヂヂ…
うっさい。
「うるさい、黙れ、うるさいんだよ!」
「…哀れですね」
「…あ、これはすみません、まだ夢を見ていたようです」
ヂヂ…ヂヂ…ヂ
あとちょっと、静かに…してろ。
「そうですか」
「ええ、…はい」
…頭…割れるだろ…。
ヂ…
痛い…あ…う…。
ズキズキと、頭に響く、ノイズ。
ああああああ!!!!
何なんだよ!
はぁ…あ。
「…いい加減、やめたらどうですか」
「何のことか、分からないよー?」
「…それが、素ですか」
あっは。
……。
「な、なんのことですか?分からないですけど」
「…子供っぽくふるまってる貴方が本物なんですね」
「…何のこと?」
…あっは。
まだまだ、セーフ。
まだ、ばれてないや。
「…まあ、どうでもいいことです」
「ですよね」
「この部屋から出ていってください」
あっは。
おっけー。
ヂ…ヂ…
あっは。
「はい」
扉をあけて、ガラガラ。
…静寂に響き渡る、音。
なんか、懐かしいー。
…クルクルさんが、若干辛そうだったのは…生理か何かかな?
後はまあ、毒の後遺症とか。
気にしたらだめだねっ。
ヂ…ヂ
黙れ。
あっは…あー。
もうちょっと、保てよ…僕の頭。
もうちょっとで、そろそろノイズも聞こえなくなるはずだから。
…あっは。
真っ暗な病院怖いなあ。
早く外出よう。
…外も暗い。
ま、いいか。
外の世界へ…一歩踏み出しました!
この一歩は、僕にとって、貴重な一歩となるだろう!
…あっは。
あー、っは。
つー、頭壊れそう。
…今何してる?
あー、歩いてるか。
…どこを?
横断歩道?
…信号は?
赤。
…車は?
来てる。
あっは。
…あー、死ぬことはないだろ。
多分。
とりあえず、意識不明的なあれかな?
ま、いいや。
ヂ…ヂヂヂ…
ヤバいときくらい静かにね?
…いろんな意味でおやすみ。