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ヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂ…

ヂヂ…ヂヂヂヂ…ヂヂヂヂヂヂヂヂ

 

 耳障りな音。

 セミの鳴き声のような、テレビの砂嵐のような…不愉快な音。


 僕はその大音量の音によってたたき起こされた。

 

 目を開けたのに…、何も見えない。



 真っ暗?


ヂヂヂ…

 

 あの音は、やまない。


…ヂヂヂ「起」ヂヂ…「て」ヂヂヂヂヂヂ


 誰かの…声がする。


 きれいな…声?



 でも…あの不愉快な音で聞こえない…。


 誰…?


…ヂヂヂ「いー」

 

 すごく…きれいな声…。


 女の子…?


 僕の耳から頭に直接響く、…きれいな声。


 だけど、不愉快な音でかき消されてゆく。


 


 目の前は…真っ暗。


 暗闇の中に、きれいな声と、不愉快な音だけが響き渡る。


「誰…?」


ヂヂ…ヂヂヂヂヂ

 

 音のせいで、自分がちゃんと声を出せたか不安になる。


「あ」ヂヂヂヂ…「た!」ヂヂヂヂヂ


 嬉しそうな…声?


 

 どこか懐かしく…響き渡るような声。

 

 不愉快な音よりも、ずっと頭に残る声…。


ヂヂヂ…「だよ!」…ヂヂヂヂヂヂヂ「よ!」ヂヂヂ


 徐々に…聞こえてくる…声。


「だ…れ…?」


 少しづつ、あの音が減ってくる…。


「わた」ヂヂヂヂ…「だよ!」ヂヂヂヂ

 

 ああ…きれいで、可愛らしい声…。


 絶対、女の子の…声だ。


「わたし」…ヂヂヂヂヂ「よ!」ヂヂヂヂヂ

 

 ああ、そうか…"わたしだよ!"…だ。

 


 何度も、何度も…自分を認識させようとしてるんだ…。




 …誰に?



 …僕に?



 




 え?…僕って?









 ぞくり、と…耳が引きちぎれた気がした。



 !…ふいに、音が大きくなる…声も、大きく、どんどん、どんどん、大きく大きく大きく。



 あああああああああああああああああああああ!

 ああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!

 ああああああ…ああああああああぁぁあぁああぁぁぁああ!!!!!!!!!!

 な…んだあ…こ…!…こここ…れ…あ!

 

 痛い、苦しい。音が、音が…。


ヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂ!!!!!!!!

ヂヂヂ……

 あぁっ…っは…く…。

 

 音…苦し…やだ…。


 音…。


「起きて!わたしだよ!!」


「あぁっ…かはっ…っあ…?」


 はっ…っは…。


 肩が、上下するのが分かる。


 苦し…あぁ…。

 音…止まった。

 力が抜ける。


 …眩しい。

 

 あれ?…真っ暗じゃ…ない?


 …目の前に、すごく可愛い女の子が居る。


 ああ、この子があの声の…と、無条件で認識した。

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