合格発表と最初の友達
ダグラス学園の補足
「武術科」「魔法科」「総合学科」の3つがあり、総合学科は武術と魔法均等に習う。武術科と魔法科はそれぞれ8対2ほどの割合で習う。
合格者数は全部で90人で、各学科30人ずつ。
クラス編成は、学科に関係なく、受験得点の
1ー10位がSクラス、
11ー30位がAクラス、
31位ー50位がBクラス、
51位ー70位がCクラス、
71位ー90位がDクラスの5クラス。
となっている。
「はあ」
ため息をつくほどに今の俺は元気がない。今日は合格発表なんだけど、絶対に落ちてるからだ。人間とドラゴンの力の差を理解しきれていなかった自分が悪い。
それは分かっているが、親に偉そうなことを言った手前、戻りづらくなっている。
「合格した方はこちらに並んでくださーい」
受付の人が誘導してるけど俺は関係ないだろう。一応見にきてはいるが、覚悟してる。と思ってたんだけど…
「2457番…あるじゃん」
俺の番号はあった。完全に落ちたと思っていたが…自分でも顔がニヤニヤしてくるのがわかる。これで人間観察を間近でできるんだ。そう思うとワクワクしてきた。
早速さっきの誘導通りに進み、資料を受け取った。
「あ、2457番のニーグさんですね。あなたは首席なので、新入生代表挨拶をお願いします」
「…え」
いやいや。急にそんなこと言われましてもですね…後3日しかないのに代表挨拶なんて…
「いいじゃないかニーグ君?代表挨拶くらい」
後ろから急に名前を呼ばれたからびっくりしてしまった。
「で、殿下!!」
受付の人が慌てて深くお辞儀をした。殿下ってことはこのダグラス王国の王座を継ぐ立場なのか。そんな奴が受けてるなんて知らなかったな。俺も一般市民という設定だし、頭を下げておこう。
「殿下、はじめまして。私この度この王立ダグラス学園に入学することになったニーグです。よろしくお願い致します」
慌てて行った割にはうまく言えたかな?そういう教養はあると思うけど…。
「ああ。畏まらなくていい。同学年の仲間として、名前で呼んでくれ。敬語も使わないで構わない」
「は、はあ」
名前は確か、レクトだったか。覚えておいて良かった。それにしても、やたらとフレンドリーな王子様だな。
「あ、あのー…」
受付が困った顔をしてこちらを見てくる。
「ああ。すまない。話を中断させてしまったな。続けてくれ」
「はい。せっかくですので殿下もご一緒に説明させて頂きます。お二人は共にSクラスです。入学式はクラスごとに並んでもらうので覚えておいてください。先ほども申した通り、ニーグさんは代表挨拶をしてもらうので、考えておいてください。後は、お二人とも総合学科ですので、あちらに見える列の1番右にお並びください」
一通り説明が終わったようなので、俺とレクトは言われた通りの場所に並びにいった。
「なあレクト。代表挨拶ってどんなことを言えばいいと思う?」
「…っ!!だ、代表挨拶か?適当なことを言っとけばいいんじゃないか」
なんでそんな驚いたんだ。もしかして人間の間だと代表挨拶なんて簡単なのか?
「なんでそんなに驚いてる?」
「い、いや、私が王子と知ると媚びへつらって来る奴らばかりだから、敬語を使わなくていいと言った瞬間他と変わらない口調になるお前にびっくりしただけだ」
そういうことか。でも俺も普段同じ立場だから分かるけど、結構うざいからね。それも理由の1つで出てきたわけだし。
「あー。まあ殿下の命令だから聞かないわけにはいかないだろ?それともさっきのは冗談でやっぱりきちんとした話し方のほうがいいか?」
「い、いや、今のままでいい!」
ちょっと食い気味に来た。まあいいけど。
そんなこんなで俺らの順番が回ってきた。元々そんなに並んでないからすぐにきたよ。
そこでは教科書とか制服を受け取った。それでこの日は終わりになったので、俺は寮に、レクトは王城に帰ることになった。
まあそれはいいんだけどさ、周りがざわつき始めて何だと思ったら国王様が出てきたよ。もちろん横にレクトがあるからこっちに迷わず向かってきた。
「レクト。その様子だと合格しているようだな。首席は取れたか?」
「いえ。力及ばず首席を取ることはできませんでした」
「何?10年に1人の才能を持つと言われているお前が首席ではないだと?では誰が首席なんだ」
「それは隣にいる…」
「申し遅れました。私、ニーグと申します。この度、殿下と同じクラスになることができ、至極幸せでございます」
「…このニーグが首席です」
「ほお。君が首席か。私のことは知っていると思うが、この国の王のキーランだ。よろしく頼むよ」
「よろしくお願い致します」
「はっはっ。なかなか礼儀正しい子だが…君は貴族ではないね。どこから来たのかな?」
「えっと…」
言葉に詰まる。いきなり困る質問しないでほしい。
「…山を越えた辺りに小さな村があるので、そこから来ました」
「そんなところに村が…?」
「小さい村ですので」
「そうか。分かった。これから息子のことをよろしく頼むよ。レクト、帰るぞ」
「はい、父上。じゃあなニーグ」
「さようなら」
流石に国王の前では礼儀正しくした方がいいと思いきちんと挨拶したが、レクトは少し不満そうだった。
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「レクト」
「なんでしょうか父上」
「彼…ニーグ君から目を離すな」
「どういうことでしょう。彼はそんな我が国に不利益をもたらすとは思えないのですが…」
「今はな。だが、私にはどうもあの子が怪しく見える。まだ確信がないから出来ないが、何かあった時は、あの子を処刑する必要があるかもしれない」
「!!!!!」
「まあさっきも言ったように確信がない。だから闇雲に処刑なぞできないし、する気もない。
…私の後継であるお前にこんな危険なことを命じるのは心苦しいが…頼めるか?レクト」
「お任せください」
(大丈夫だよな…ニーグ)
初めて自分と対等に話してくれたニーグは、学園生活においていい関係を築けると思っていた。だが、本当に父上のいう通り何かがあったら…私は国民を優先する義務がある。
レクトはニーグがいるであろう寮の方を振り返って決意を固めるのだった…。