一章 入学試験
「忘れ物はない?ちゃんと受験票と筆記用具持った?」
「大丈夫だよ母様。行ってきます」
俺は父様、母様に見送られ、試験会場へと向かう。
ライトは泣きすぎてこれなかったらしい。それもそうか。あいつが父様母様の次に俺の面倒を見てくれていた。息子が出ていくみたいな感じで悲しくなったのだろう。帰ってきたときにはお土産をあげよっと。
さて、今回受けるのはダグラス王国にある、王立ダグラス学園だ。実力主義の学校らしいが、まあ大丈夫だろう。募集人数90人に対し、希望者数3000だから、エリートなのは間違いない。
「お、見えてきたか」
俺は独り言を言いながら王都近くの森に着陸し、人化の術を使った。こうしないと騒ぎになるからね。
何事もなく王都に入って、試験会場へと向かった。人だかりがあったから簡単に見つかった。
そして、テストが始まった。筆記試験のところはサクサクいくよ。超簡単。小さい頃から英才教育を受けている俺はわからないはずがない。これは簡単すぎるのではと思ったが、周りが
「全然分からなかった…」
と知り合い同士で話しているのを聞いて安堵した。筆記だけだとまず受かりそうだと。
次に実技試験が始まった。この学園は「武術科」「魔法科」「総合学科」の3つがあり、それぞれ試験が違う。俺が受けた総合学科の試験は試験官との一騎打ち。…人間の力ってどんなものなのかな。オラワクワクしてきたぞ!なんて考えてたら俺の番が回ってきた。
「次!ニーグ!」
「はい!」
元気よく走ってかけて行ったら、ジロジロ見られた。
「そんな軟弱な体で大丈夫なのか?」
俺が人化した時の姿は痩せてるからな。
「ああ。大丈夫です!」
「そ、そうか。ではいくぞ!」
と言って試験官はこっちに向かって蹴りを出した。
分かってはいたけど、ドラゴンと人間では能力が違いすぎる。余裕でかわしてしまった。
「ほお?今のをかわすか。ではこれならどうだ!」
さっきよりも強く、そして早く繰り出される蹴りだったが、それでも俺は余裕で今度は受け止めてしまった。
「なっ」
驚いているが、知ったこっちゃない。俺も落ちたくないんだ。
「こっちから行きますね」
と宣告してから少し試験官の足を持っている手を少し握り強めたら、
「ギャァァァ」
と試験官が人側じゃない声を出して苦しみ出したので慌てて離した。今のでもやりすぎか…注意しなければ。
「…ニーグ。お前の試験は終了だ。帰れ」
…え、もしかして試験官怪我させたから不合格ってこと?それはやばい…父様と母様になんて伝えれば…
取り敢えずここにいても仕方がないので、トボトボと帰路に着いた。
今日は宿屋に泊まる。合格すれば寮に住めるけど…それは叶わず実家に帰ることになりそうだ。
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学園サイド
ここではその日の試験結果についてが会議されていた。
「…この2457番、ニーグについてだが…何か知っているものは?」
学園長の問いに対して答える人はいない。全員沈黙したままだ。
「この子を担当した試験官が適当なことを言っているだけでは?掴まれただけで足を骨折したなど信じられません」
教師の1人がやっと口を開く。
「ですが、この子は筆記試験もほぼ満点です。実技がそれくらいでもありえない話では…」
「それに、試験官が足を骨折していたのは事実だし、骨折の場所に握った跡があったのも事実だ」
「そんなことはどうでもいい!」
学園長が一括した。
「この子が貴族の子ではないことは確かだ。だが、こんなに力を持った子を放置するわけにもいかない。暴れられても困るから、なるべく優遇しよう」
「「「「はい」」」」
他の教師が全員一致で賛成した。この後はすんなり会議が進み、ニーグが首席となったのだった。
本当に自分のペースで書きますので、1日3話投稿だったり、1ヶ月に一回の投稿だったり不定期ですがよろしくお願いします。