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桜が散る頃に  作者: 柏木ひな
2/2

中等部入学

いよいよ三琴が中等部へ入学します

幼なじみで親友の六花と離れ離れの中学生活に大きな不安をかかえる三琴の足取りは重い

そんな中出会う一人の男の子

そしてクラスで惹かれる二人の女の子

不思議な気持ちで迎える中等部入学の時だった

四月

歩き慣れない桜並木の道を三琴は歩いていた

いよいよ今日から中等部入学である


六花達と同じ学校に行きたかったな・・・


爽やかな春の風とは裏腹に三琴は今にも泣きだしそうな顔を俯いたまま、新しい学校へと向かっていた

同じ学校へと向かっているだろう生徒達は三琴とは正反対でこれからの新しい学期に向けて晴れ晴れしい顔で通学している

三琴だけが俯いて歩いていた

気持ちの問題か通学する足も心無しか遅い

遅刻するかしないかのギリギリの時間である

気の所為か足がだんだん重く感じてきた


やっぱり寂しいよ。悲しいよ。離れたくないよ


泣きそうな瞳をギュッと瞑る

ギリギリで涙をこらえていた


タッタッタッ

ドンっ


三琴は衝撃で転んでしまった

後ろから誰に衝突されたようだ


「ごめん!マジごめん!遅刻しそうで急いでてスマホ見ながら走ってたから。マジ悪い」

「あ、いえ、私もボーッと歩いてましたし」

「あれ?その制服。もしかして同じ学校?何年生?」

「あ、一年です、今日から入学の」

「マジで!?俺と同じじゃん。てか大丈夫?急がなくて」

「あ、そうですよね。急がないと」

「だよな。よし!一緒に走ろうぜ」

「え?あの・・・」

「いいから、ほら、行くよ」


半ば無理矢理に腕を掴まれて走り出した

転びそうになりながら三琴もつい走った

さっきまでの泣きだしそうな顔は驚きの顔に変わっていた


7:42

ようやく二人は校門を潜った


「はぁはぁはぁ。よかった、間に合ったみたいだな」

「はぁはぁはぁ、そうみたいですね」

「はは、じゃあクラス分け見に行こっか」

「あ、はい」


二人はクラス分けが表示された場所まで歩いた

人混みでごった返していたが何とか見れる


「あ、俺1-Aだ、あんたは?」

「あ、1-Aです」

「マジで?同じじゃん!俺、千草紫苑。あんたは?」

「あ、月城三琴です」

「三琴か、いい名前だな。よろしく!」

「あ、ありがとうございます・・・よ、宜しくお願いします」

「なんだよー、タメなんだから敬語はなしにしよーぜ!ほら、教室行こ」

「あ、はい・・・」


強引な人だな・・・


三琴は言われるがままに教室に向かった

千草と一緒に入った教室では既に何組かの輪が出来上がっていた


「お、紫苑じゃん!こっちこっち」


教室に入るとすぐに紫苑は呼ばれて輪の中に入る

ぽつんと残された三琴は黒板に書かれた自分の席まで向かう

誰も知らない一人きり

人見知りな性格ゆえ声も掛けづらくただ席に座って周りをぼーっと軽く見渡してみた


やっぱり馴染めないよ・・・


三琴は席で俯くしか出来なかった


「お、三琴、席近いじゃん」

「え?あ、」

「へへ、改めてよろしくな」

「あ、はい・・・宜しくお願いします」

「だから敬語はなしだって」

「あ、えーと・・・」

「俺、紫苑。シオンって呼んでみて。さん付けは無しな」

「え、あ、えーと、シオン君?」

「そそそ、そんな感じ。俺は三琴でいい?」

「あ、はい」

「敬語クセなのな。ま、だんだん慣れてくれればいいよ」

「ありがとうございます」

「三琴は外部生だよな?俺も外部生だけど何人かここの内部生とも友達なんだよ。三琴は?」

「あ、私は兄と姉がいるくらいで知り合いは誰も・・・」

「そっか、じゃあ今から友達楽しみだな。因みに兄ちゃんと姉ちゃんっていくつ?」

「兄は大学2年で姉は高校2年です」

「けっこう離れてるのな。大学と高等部遠いから大変だな。ん、そういえば三琴の苗字月城だっけ?兄ちゃんと姉ちゃんの名前なんていうの?」

「兄は一夜です。月城一夜。姉は二菜、月城二菜です」

「マジで!一夜さんと二菜さんの妹!?」


紫苑が叫ぶと教室中の視線が紫苑と三琴に集まった

視線が集まった事で更に三琴は萎縮した


「マジすげー!一夜さんってあの伝説の一夜さんだよな!?小等部から高等部までずっと生徒会で小等部5年からはずっと生徒会長だった人だろ?二菜さんは中等部、高等部のミスコン今年もミスコン候補の!?すっげー!」


視線が集まり周りがざわつき始めた

一夜と二菜はそれなりに知名度があったらしくヒソヒソと小声がちらほら聞こえる


「三琴すげーな!あれ?でも何で外部生なんだ?一夜さんと二菜さんは幼稚舎からいるよな?」

「あ、それは・・・私の我儘で友達と一緒の学校に行きたくて・・・でも両親が中学はここの中等部へと言われたので・・・」

「そうなのか、じゃあまずは友達作りからだな。よかったら俺と友達になってよ」

「あ、はい。宜しくお願いします」

「やっりぃ!よし!友達だからもう敬語は禁止な!」

「あ、えーと、あの・・・」

「敬語使ったらデコピンな(笑)」

「あ、えーと。うん」

「よっし!それでいい」


ニカッと笑いながら紫苑は握手を求めてきた

三琴は戸惑いながらもそれに応じた

先程からの視線のうちギャルっぽい輪から一人の女の子が近付いてきた


「えっと、月城さんだっけ?ホントに一夜さんの妹なの?」

「え、あ、はい。あの、月城一夜は兄です」

「マジで?私小等部からのファンなんだよね~今度会わせてよ」

「えっと、今兄は家を出ているので、家に帰ってる時じゃないと会えないんですが・・・」

「じゃあ帰ってる時は会わせてくれるんだよね?」

「え、あ、えーと・・・」

「ありがとーやったー!じゃあララン交換しよ」

「え、あ、はい・・・」

「私、陽向萌愛。モアでいいよ」

「あ、私、月城三琴です」

「じゃあ三琴って呼ぶね。よろしくぅ」


半ば強引に連絡先の交換をすると莉來はまた元いた輪の中に戻って行った


「三琴やったじゃん!友達またゲットだな」


ニカッとした笑いを向けながら紫苑は三琴にピースサインをしている

戸惑いながら三琴はピースサインを返した


チャイムの音がする

先生が入ってきた

ザワザワしていた教室がそれぞれの席へ戻り少し静かになった


「えー、1-Aの担任をします沢渡光(さわたりひかる)です。一年間宜しくお願いします」

「それでは出席を取っていきます」

愛丘莉來(あいおかりら)

「はい」


少しトーンの低い例えるならジャズシンガーのような低く心地いい声で返事をしたのは、どうみてもヤンキーとしか見えない女の子だった


「愛丘、なんだその服装は。リボンはどうした」


ここ聖学院中等部の制服はブレザーで男子はネクタイ、女子はリボンと決まっている

その愛丘と呼ばれた女の子はスカート丈は長めシャツは第二ボタンまで開けてリボンはしていなかった


「朝急いでたのでつけ忘れましたー今からつけまーす」


ぶっきらぼうに返事をした愛丘は、気だるく第二ボタンだけを閉め緩くリボンを付けた


「制服はちゃんと着るように。では次、相葉悠馬」

「はい」

藍上花梨(あいがみかりん)

「はい」


静かに透き通るような澄んだ声で返事をした女の子はロングの黒髪で眼鏡をかけたいかにも優等生らしい佇まいをしてる

そういえば朝の喧騒の中も静かに本を読んでいた

特に目を引くというわけではないが姿勢のよいお嬢様という風格がある


どんどん出席を取っていく中、この二人の女の子に三琴は少し惹かれていた


「千草紫苑」

「はい」


元気な返事にハッと我に返る


「月城三琴」

「はい」


少し驚きながら返事をする

上擦ってはないが驚いた声はわかる


「月城どうした?何かあったか?」

「あ。いえ、何もないです。すみません・・・」

「そうか、ならいい」


消え入りそうな声で答え恥ずかしさで俯いてしまう

しかし視線は先程の二人の女の子に自然と向いていた

出席が一通り済んだところで先生は黒板の席の字を消し時間を書き始めた


「はい、入学式は9時半からそれまでに新入生のリボンを付けておくように」


言うと同時に先生は持っていた箱を開け中から花のモチーフのリボンを出して胸の当たりに付ける動作をした


「一人ずつ順番にこい。愛丘」

「はい」

「相葉」

「はい」

「藍上」

「はい」


名前を呼ばれた順にリボンを取りに教卓へ向かう

リボンを取ったら席についてリボンを付ける

流れ作業の様に名前を呼ばれたら教卓へ向かいリボンを受け取り席についてリボンを付けていった

三琴も名前を呼ばれてリボンを受け取り席で胸の当たりにリボンを付けた


そろそろ入学式が始まる

三琴がいよいよ中等部に入学します

紫苑、萌愛、莉來、花梨の四人との出会いが三琴のこれからの中等部生活を大きく取り巻きます

どのような関係になっていくのか今後ご期待ください

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