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第7話:実は授業を教える教師にも嫉妬してる

 一年三学期、付き合い始めたころ――


「ねぇそれ何?」


「ん?」


 彼女が指さしたのは俺のシャーペン。


「シャーペンだけど」


「そのシャーペン、なんか貼ってあるわよ」


「え?」


 ぐるぐる回してみると、目口が書かれている鏡餅シールが貼ってある。それを見て今日の出来事を思い出す。


「ああ、知り合いから貰ったんだ。消しゴムを貸してくれたお礼だって」


「貸した? お礼?」


「うん、隣の席の人が窓側でね、消しゴムを外にやっちゃたんだよ。それで貸したんだ。そしたらお礼にってくれたんだ。いらないって言ったんだけど、そしたらシャーペンに無理やり張られちゃってさ今に至るんだけど……あれどうしたの?」


 彼女は震えていた。プルプルとプルプルと。


 それはまるで火山の噴火前の地震を幻視させて、


「そのシール、たしか女子の中でブーム中のカガミモチ君シールよね……!」


 ――それは正に事実だった。




 @




 あのあと、俺は物を貸すのも借りるのも禁止となった。男子はギリオッケーで、女子は完全にアウトみたいな感じで。


 つまりその、今まさに大ピンチなんだけど、


「授業中にさ、その、消しゴムを無くしたのに気づいたから隣の人に貸してもらったんだ」


 残念ながら言い訳を思いつかず、正直に言った。


「で?」


「えっと、周りの席で唯一しゃべれる人が女子だったんだよ」


「……なるほど、ね」


 彼女は腕を組んだ。彼女が考え込んだ時の癖だ。


 考え込んだというのは助かったのか。


 よかっ――


「周りの席に男子は居た?」


 良くなかった。


「……いまし「私言ったよね」


 食い気味に、彼女は言葉を突っ込んだ。


「女子から物を借りるなって」


「イヤでもしゃべれる人が」


「言ったよね」


「あ、はい」


「借りるなら男子にしてよ。それか借りるな」


 いつも以上に乱暴な口ぶりに、俺は首を赤べこ化するしかなかった。


「そうやって首を動かすんじゃなくて、口を動かして欲しいな」


「わかりましたゴメンナサイ」


「次は無いと誓えと言ってんのよ」


「次からはモウシマセン」


 追加に土下座体制に入る。


 だがしかし、俺は彼女の嫉妬を舐めていた。


「弱い」


「え?」


「もう男子からも借りないで」


「え、もし忘れたら勉強でき「しなくていいわ」


 ――そのかわり、私が教えてあげる。


 そう言い切った彼女は思わず見とれるほど美しかった。言っている内容に目を瞑れば。




 @




 そんなこんなで一日が終わり、また同じような一日が始まる。


 勉強の内容、弁当の内容、掃除当番、嫉妬する内容、行動。違いはいくつもあるが、今日のように似たような感じ。


 それでも楽しい日常だ。


 だけどそんな日常が変わる日が来る。


 変化が乏しい高校でもそうだ。


 しかも、そんなきっかけが定期的にやってくる。


 その名は――一学期期末試験。

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