最終話:誰とも会ってほしくないだけ
文化祭が終わり数日たった後、俺は退学処分を食らった。
まぁ当たり前だろう。俺は劇の最後に副学級長をぶん殴り逃亡したのだ。
副学級長はしばらく湿布が頬から取れない生活を強いられてたらしいが、俺は反省する気はまるでなかった。
朝から晩まで指導室に放り込まれ怒られまくったが反省する気は欠片もなかった。教師はもちろん、俺の親、副学級長、そいつの親まで押し寄せ俺に反省を求めたが撤回する気はゼロだった。
確かに俺が悪いのかもしれない。もう少し穏便にどうにかする方法は山のようにあるだろう。
だが、それがどうした。
俺がそんな行動をしてしまったのは副学級長が原因だ。副学級長がムカつく行動を何度も何度もしたのが原因だ。だから俺だけが責められる理由はない。副学級長が原因の半分を占めている。
そんな俺の態度に学校側は見切りをつけたのか、最初は休学処分になっていたが、退学処分に格上げ? となった。
……正直、少し後悔はある。
これから彼女と学校生活を送れないのはとても残念だ。まだまだしたいことはたくさんあったのに。
逆に言えばその程度だ。大学進学をするには高校卒業は別に必須ではない。認定状をもらえれば良いのだ。
「まぁ、そういうことで俺は自宅学習に専念しようと思うよ。親からは色々と言われたけどさ、今更高校に行けないしさ。クラスメイトに色々言われるだろ?」
退学処分になった次の日。土曜日。彼女の家の部屋で俺は、そう彼女に語ったところ、
「私も高校やめる事にしたから、一緒に勉強しましょう」
と言われた。
「へ?」
思わずびっくりして変な声が出た。いやだって、辞めるって。
「私は貴方の彼女なのよ。ならその繋がりでクラスメイトに色々言われそうだから」
「あ、そうか。……そうだよな。ごめんな」
「謝らなくて良いわよ。これは複数ある理由の一つで一番重要性が低い理由なのよ」
というと他にもあるのか。
「私はそもそも高校に通う意義をあまり見いだせていないのよ。勉強なら高校卒業できる位はあるし、入学当時はそれでも良かったのだけど、今は貴方がいない高校は行く意味もないし。……それに、ね。貴方の先生になりたいのよ、私は」
「先生って……俺の勉強でも見てくれるのか?」
「ええ、全部見てあげる。……毎日あなたの家に来て、勉強を全て教えてあげる。ついでにご飯とかも作ってあげるし、掃除とかの家の管理もしてあげるから――」
彼女の声は、だんだんと力強さを増していく。
「――だから、貴方は二度と外に出ないで」
「いや、それは流石に拒否するわ!!」
「なによ、私は貴方に誰とも会ってほしくないだけ! どうして分かってくれないの!」
何でそんな良く分からない事を熱弁しているんだ? こいつは自分の彼氏をヒモにする気なのだろうか。俺はそう思った。
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これで俺と彼女の高校生活はお終い。
俺たち二人は周りから色々言われながらも、豊かに日々を送り始めたのだった。
【おわり】




