第6話:ビンゴ大会
学校の体育館は、時間によって様々な出し物が開催されていた。
午前中は軽音部の演奏や、ダンス部のソーラン節が行われていたらしい。……ソーラン節はダンスなのか?
そして現在、午後の部では、
「只今より! ビンゴ大会の開催を宣言します!!」
うわー!! っと観客の叫び声と共に、ビンゴ球をカラカラ回して出すアレを、司会者はカラカラと回しだす。
コロコロと玉が排出される映像が、カメラを通してプロジェクターが出力。体育館の巨大スクリーンに投影される。
「2! 2番です!!」
なんて司会が叫びながら、時間は少しずつ進んでいく。
そんな場で、俺たち二人はビンゴをしながら話し合っていた。
「……もうちょっと、くっ付いて良いか?」
「くっ付くって、隣同士に座っているのに、どうやってコレ以上同くっ付くって言うのよ?」
「腕出して。それを抱く」
「え?」
「早くしてほしい。怖いんだよ」
「……ここはお化け屋敷じゃあないんだけど」
「暗いんだよぉ!」
思わず叫んでしまい、近くに座っていた名の知らぬ学生がビクリと震え、こちらを見る。学生の顔は困惑に染まっている。数秒後には席を移動し、こちらを離れた。変な奴に思われたらしい。
「えーと……冗談じゃなさそうね」
「冗談ではないよ。怖いんだよ。一緒に居てくれ。温もりが欲しい。俺は一人ではないという証明が欲しいんだ」
「……そこまで言うのなら」
そう言って彼女は手をこちらに向けてくれた。
手を握る。温かい。恐怖で冷え切った俺の体温よりも少し暖かい。
美しい手だ。手荒れが無く、爪が程よく手入れされていて、形が良い。暗いので全体像は良く分からない。細部が見えない。でも肌触りでソレが分かった。
しばらく、手を触っていると彼女からクレームが届いた。
「いつまで触っているの? 触り方が何だかイヤらしくて、さっきまで怖いって言っていたのが演技じゃないかと思い始めてきたのだけど」
最初から手を触る事が目的だったんじゃないの? っと問いかけてきた彼女は何だか嬉しそうだ。嫌じゃないのか? ……じゃなくて、
「いや、確かに怖かったんだけど」
「けど?」
「手を握ったら、お前の手に集中しちゃって怖かった事を忘れられたよ」
「ふふ、何よそれ?」
くすくすっと彼女は笑う。ホントの事なんだけどなぁ。
「だったら何で夜は大丈夫なのよ?」
「夜ってなんだよ」
「前、一緒に夜遅くまで出かけた時とか普通だったじゃない」
「そりゃ大丈夫だよ。俺はホラーを体験してなければ、暗がりに居ても普通に対応できるよ」
「じゃあ今度からデート前にホラー映画を一緒に見ない?」
「止めてくれ」
そんな事を話しながら、時間は進む。
「お、リーチだ」
「あら、早いわね」
10分が経過。ビンゴに至った人類はまだ居ない。そんな中、あと一歩でビンゴとなるリーチになったのは、とても運が良い。
ビンゴ一着の人には景品として、豪華賞品が貰える。どんな物品なのかは分からないが、良い物なら彼女にプレゼントしても良いかもしれない。
席を立つ。リーチに至った人間は立つ事になっているのだ。
右手が涼しい。さっきまで彼女の手を握っていたので、立つ時にはどうしても手を離さないといけなかったので、周りの空気が感じられた。
なんだか寂しい気分だ。そんな気持ちが滲み出ていたのか、彼女は俺の服の裾を握ってくれた。心地よい重みが掛かる。
辺りを見合わすと立っている人間がチラホラ見える。とは言っても5名もいかない程度。こんな早い段階でリーチに至った人間は案外少なかった。
……これは、行けるか?
豪華賞品を彼女にプレゼントする夢を見ながら、次の番号を待つ。
カランカラっと音が鳴り、番号が発表される。
残念ながら、その番号ではビンゴカードに穴をあける事が出来なかった。
なら次の番号で当たることを祈ろ――
「ビンゴの方は――おっと、一名! ビンゴの方が一名出ました!!」
――今日は厄日だ。




