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第4話:メイド喫茶

 頬が痛かった。


 それはとても痛くて、マジで痛い。痛い。


「助言は嬉しかったけど、ビンタについては謝んないわよ」


「耳元で、小声で助言するべきでした、ゴメンナサイ……」


「よろしい」


 そうして、彼女は頬を撫でてくれた。


 少し痛みが引いて、代わりにくすぐったさが頬に感じられた。何だか恥ずかしくて、彼女に目を合わせられない。


 そうして目を背けたら、フフフっと彼女から笑い声が鳴る。こんな俺を見て笑ったのだろう。更に恥ずかしくなって、この状態を変えようと、俺は声を上げた。


「ひ、ひるご飯を食べない? ほら、丁度、12時になりそうな頃合いだし!」


 何も考えずに勢いで口を開いたので、早口で忙しない感じになってしまった。フフフっと笑い声が彼女から、またもや鳴った。顔が真っ赤になりそうだ。


 何だか嬉しそうな彼女が問う。


「何か食べたいのある?」


「食べたいもの?」


 ……特にない。正直、彼女と一緒に食べるものなら土でも美味しいと思えるだろう。


「特になければ屋台を回ってみる?」


 だけど、ご飯くらいは座って食べたい。なので俺は、


「いや、でも出し物を回ってて疲れてないの? ご飯の時くらいは座ろうぜ?」


 っと提案した。なんか俺のせいで座る所を探すなんて恥ずかしいと言う気持ちがあった。ので、彼女を尊重するような? 言い分になった。


「疲れてないから大丈夫よ」


 ……そっかー。


「ごめん。座らせてください……」


 っと彼女に頼み込むことになった。




 @




 そんな訳でやってきましたメイド喫茶。文化祭の出し物の鉄板だ。


 女子生徒がメイドのコスプレをして接客をする軽食屋。しかし、ただコスプレをするだけじゃ飽き足らず、男がメイドになったり、お化け屋敷と合体した、恐怖のメイドゾンビ喫茶なんていうキメラアントが誕生する場合もある出し物だ。


 そして、この高校でも、世にも奇妙なメイド喫茶が誕生していた。


「ウホウホウホ……」


「え、と、このAセットを……」


「同じのをお願いします」


「ウホホ!」


 どたどたっとメイドらしき原始人が注文を聞いて、去っていた。なんだよこれ?


「紀元前にあったメイド喫茶を再現したとか聞いたけど、ほんとに何だよコレ?」


「……狂気を感じるわね」


「狂気ってもんじゃないよ。意味不明だよ」


「このクラスには変な薬でも回ってるのかしら?」


 俺らは、お互いに意見を交換し始めた。


 紀元前のメイド喫茶という、良く分からない物を忠実に再現するためか、辺りには岩らしき物が転がっている。草も生えてたりする。机も教室机ではなく板を組み合わせた奴だ。ご丁寧に釘も使ってない。


 紀元前のメイドは動物の毛皮らしき物を着ていて、全く持ってメイド要素はゼロだ。というか顔にペイントが施されており、メイドと言うかアマゾネスっていう風貌だ。アマゾネス喫茶に改名した方が良いのでは?


「おまたっ——じゃなくてウホフウホ!」


「え、あ、ありがとう……」


 キャラ崩壊しそうになったアマゾネスからAセットを受け取る。


 Aセットなる物は、パンケーキと紅茶のセットだ。……紀元前要素が無いんだけど? チョコレートでハートが書かれてるし。


 味は甘くて、とっても美味しかった。

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