第3話:東京フレンドパーク
「ココに山がありますね。川がありますね」
そうですね。
「この山から桃が流れてきます」
ピピピと電子音がして、川と説明されていた所から光が流れてくる。
「その流れてくる桃を踏むとゲームクリアです」
そう言って、説明係の男がジャンプして――光を踏んだ。
デレデッテ、テー。音割れがひどい音楽が、横に置いてあったスピーカーから流れた。
「……なんで東京フレンドパークのフラッシュザウルスを、そんな設定にしたんですか?」
「えーっと……なんとなく?」
なんとなくで桃を踏むな。
というわけで、パソコン同好会の展示である、謎の桃踏みゲームをやっている。
フラッシュザウルス自体はテレビで有名なアトラクションなので、遊ぶのはとても楽しい。しかし何で桃を踏む設定にしたのかが分からない。まあ気にせずに遊ぶ。
「ああ、惜しい。少しタイミングが早かったですね。じゃあ参加賞の飴玉です」
そう言って男部員はサクマドロップの蓋を開ける。手を出すと、そこに飴を出してくれた。白色。ハッカだった。
「なんでよりによっても、ハッカなんだよ……」
「なんか貴方、ついてないわね」
彼女に苦笑されつつ、フラッシュザウルス(男部員は桃踏みデストロイアーゲームと言い張る)から離れる。次の人に邪魔になるからだ。
次の人は彼女だ。男部員の説明が始まる。
「ココに山がありますね。川がありま「さっき聞いたから」——アッハイ」
その光景を見ていて、俺の頭に、急に、ある一つの予測が出た。
——ジャンプしたらスカート捲れるんじゃね?
フラッシュザウルスの参加者の初期地点は、そこそこの高さの台だ。そっから光を踏みにジャンプするのだが、その間の距離がそこそこ離れている。
彼女の今の格好は制服だ。スカートだ。ミニとまではいかないが、膝の皿が見れるくらいに上げている。もう秋なのに。
なので、ジャンプから着地の間にスカートが捲れて……見えるかもしれない。
何を下らないことをと言われるかもしれないが、俺にとっては大事だった。他の人には見られてはいけない絶対領域なのだ。
「うーん。ジャンプの勢いをつけたいから、台をもう少し高くしたいのだけど?」
「なら、台の上に椅子を乗せるんで、そっからやります? この桃踏みデストロイアーは結構頑丈に作ってるんで、遠慮なくやっちゃって良いですよ!」
マジかよ。距離がさらに長くなってしまったぞ。俺は驚きの余り、白目をむきそうになった。
男部員はジャンプ台に椅子を乗せ、「どーぞ」と彼女を誘導する。
……彼女のジャンプ位置から着地地点まで、およそ1メートル近くになってしまった。
スカート捲れるぞ、っと助言しようとするが――止める。
なにせ周りには結構な人が居る。このフラッシュザウルスは結構人気な出し物らしく、並んでいるヒューマンが多いのだ。
そんな場で「スカート捲れて、パンツ見えるぞー」っと言うのか? 彼女が恥ずかしがるに決まってる。子供みたいに、はしゃいでパンツが見える事に恥ずかしがるだろう。ついでに俺も恥ずかしい。パンツとか言いたくない。
しかし、このままだと確実にスカートが捲れるだろう。俺が助言する未来よりも、彼女はもっと恥ずかしがるだろう。何より、俺が嫌だ。
……ならば言うべきだろう。
それが一番なはずだ。
俺は腹をくくり、
「そんな高さでジャンプしたらパンツ見えちゃうぞ」
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彼氏の顔が赤く腫れ、紅葉が出来た。




