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第5話:そのころ男どもの昼飯場は音ゲーコーナー化していた

 キンコンカンコンなんて電子音をスピーカーが垂れ流し、三限目の授業が終わる。


「今日も彼女ちゃんとご飯か?」


「まぁ……」


「うわぁお。うらやましぃなぁ、俺たちは寂しく男と食べるぜ」


「花がねぇな」


「誰か性転換しない?」


「発想が狂気過ぎない?」


「じゃあ俺らが女友達作れると思う?」


「俺は無理」


「俺も」


「ワイも」


「でっしょ~! つまり誰かが性転換するしかない」


「というか彼女もちが「俺も」なんて答えるなよ」


「いやだって彼女、嫉妬深いし……」


「死ね!」


「地獄に落ちろ!」


「fuck off!!」


 バカなクラスにふさわしいバカな友人たちと別れ、教室から廊下へ。

 彼女は廊下には居ない。いつもは廊下で待っているのに。

 そう、いつも集合場所を決めているのに彼女は早く授業を終えると教室前に待っていてくれるのだ。

 つまり、今日はこっちのクラスが早く授業を終えたようだ。


 ……いや、終わってるがまだ誰かと一緒に話しているかもしれない。それはアノ友人かもしれないし、もしかしたら男かも――


「……ムカついてきたな」


 いつもは彼女に迷惑が掛からないように、彼女の教室前に出迎えるのは遠慮している。

 でも彼女との昼休み時間が短縮されるのは嫌だ。少しでも長くいたい。


 だから決して、彼女が誰かに取られたくないという嫉妬では――いや嫉妬だこれ。


 長くいたいとかじゃあない。それは多分、ただの後付。

 俺はもしもの仮想敵に嫉妬していたのだ。


「はぁ……」


 自分のマヌケさに思わずため息が出る。

 引き返して集合場所に行こうか。そんな事を思った時だった。


「なにため息してるの?」


「……ぃ」


「なにキツネに頬を摘ままれた顔してんのよ」


 彼女が目の前に居た。


「えっと、自分を見つめなおしていたとか?」


「なに私に聞いてんの? 私が分かるわけないじゃない」


「ですよね。ごめんなさい。正直あまり触れてほしくない話題かもしれない」


「そう?」


「そう。だから行こうぜ」


 そうやって俺たちは集合場所――裏庭へ行った。


   (「昼にそっちから向)   (かいに来るなんて何)   (時ぶりかしら」)




 @




 裏庭なんて辛気臭そうな名前をしているが日当たりはとても良い。

 チューリップやらなにかしらの花が咲いており、校舎側にはアサガオが緑のカーテンになろうと「上へ上へ」と身を伸ばしている。


 そんな裏庭の一角。木陰になっている場所に俺たちは尻を地に付けていた。


「なんかさっきから嬉しそうだなお前は」


「ふふふ。そう?」


「頬が常に上がってるぞ」


「ふふふ」


 彼女はなんか気持ち悪い笑いをしながら、弁当を広げた。


「ほんと手作りなんてよくやるよな。いったい何時寝てるんだ?」


「授業中よ」


「うわぁ。なんでそれで学年一位取れるんだか……」


「寝るのと聞くのを両立させてるのよ」


「俺は度々お前が人間かどうか疑ってるんだけど、今がその時だわ」


「別れる?」


「ごめんなさい」


 謝りながら、俺は焼きそばパンをほおばる。今日はUFOをパンに挟んでみたが中々いける。


「……もしかして今日の昼はそれだけ?」


「そうだけど」


「いつか尿結石になるわよ」


「大丈夫、大丈夫。薬はいつもカバンに入れてある」


「ちゃんとしたものを食べろって言ってんの」


 そう言ってカバンをごそごそと漁りだして、


「はい」


「はいって、カロリーメイトじゃん」


「栄養素抜群でちゃんとした食べ物よ」


「なんか自分が思っていたのとは違うなぁ」


「どんなの?」


「こんなの(彼女の弁当)」


「食べたい?」


「うん!」


 あーん。ぱく。セロリ美味しい!!

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