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第2話:俺は王子様とか似合わないよ

【更新を休んですみません。いろいろと忙しく、毎日投稿が厳しくなってきました。できるだけの更新になります。すみません。】





 この学校の学園祭は、夏と秋の間らへんに開催される。


 生徒数が多い我が校では、クラスでやる物がある程度決まっている。お化け屋敷が何個も建てられては色々困るからだ。


 ひと学年につき10近くクラスがあり、その中で被らないように出し物を決める必要がある。


 まず各自のクラスで10個ほどやりたい出し物を考えて、その後に各学級長どうしが決める形になる。


 俺は彼女と話すのが楽しすぎてその辺は何が起こっていたのかは把握してない。なんかロングホームルームでやっていた事は記憶しているのだが、その具体的な内容は彼女との会話で埋め尽くされている。


 まぁ、その辺はどうでも良いとして、これは学園祭まで後1ヶ月半になろうかという時の話だ。


「えーと、僕たちの出し物は演劇になりました」


 学級長が発言した瞬間、周りからは喜びの声が上がり、同時に批難の声が上がった。賛否両論な出し物らしい。


「まぁそれで、どんな演劇をしたいのか? 後、どんな役割が必要なのかを大体決めちゃいたいと思います」


 じゃあ意見ある人はいます? そう学級長は周りに尋ねる。


 周りから次々に案が湧いてくる。クラスの剽軽者が桃太郎が良いんじゃないかと言って笑う声が上がったり、目立たなそうな生徒がゲームを原作にした物語を提案して周りの空気が凍ったり。


 そんな様子を感じながら、俺は彼女と話していた。


「お前は劇の内容は何が良いと思う?」


「逆に貴方はどうなのよ?」


「え? ……何も考えてないよ」


「ふーん……」


 そう言うと彼女は俺に疑惑の目を向ける。


 ……俺の試みがバレてるな。正直に白状しよう。


「……お前の意見を聞いて『俺もそれが良いと思う!』『俺たち相性抜群だな!!』とか言う予定でした……」


「ふふふ、ありがとう」


 また弄りだ。


 弄られるたびに、なんかムカつくので逆に弄ってやろうっと何時も思っているのだが、なかなか出来ない。悲しい。


 そんな俺の心情は知らずか、彼女は言葉を発する。


「私は白雪姫が良いわ」


「……へー。どうして?」


「何よその反応? ……まぁ良いわ。ラストシーンが理由よ」


 そう言った後、彼女は、


「私がお姫様で、貴方が王子様。2人はそこで目覚めのキスをするのよ」


 唇に指を当てながらそう言った。


 ……えーとつまり、観客が見てる中でキスをしたいとか言っているのか? 流石に無理だ。恥ずかしい。


 しかし、その言葉を言ってしまったらと思うと――彼女が怒るシーンが頭を過った。


『へぇ。そんな理由でキスしたくないの?』


 そんな事を言いながら詰め寄る、彼女の姿が考えられた。


 ……いや、流石に俺の思い過ごしだよな? こんな極端な理由で怒ることは流石に無いはずだ。でも、かつての行動とかを考えると――


「……俺は王子様とか似合わないよ」


「あら、残念」


 俺の返しに、彼女はふふふっと笑いながらそう答えた。




 @




「じゃあ、ロミオとジュリエットで決まりで。詳しい脚本とかは後で考えるとして、とりあえずメインキャラだけ決めようと思います」


 学級長はそう言った。最初の方は司会や声がグダグダしていたが、やっているうちに慣れてきたのだろう。はきはきと声を出している。


 学級長はスマホを取り出し、いじりながら再び声を出す。


「えーと、Wikipediaを参照すると物語の登場人物は……ロミオ、ロザライン、ジュリエット、ロレンス、マキューシオ、ティボルト――」


「それ原作じゃん、最後2人が死ぬ奴だよ。それは嫌だなぁ」


 学級長の後ろから声が出される。後ろで黒板に板書していた副学級長だ。


 その声にビックリしているのか、学級長は声を若干震えさせながら声を出す。


「え、そ、それじゃあ、どうすれば良いの?」


「そうだなぁ、一幕だけやるってどうだよ? そこだけ切り取ればハッピーエンドじゃね? 全部やるとしたら、時間が足りなくなっちゃうよ。そこそこの所で切らなくちゃね。俺たちは素人なんだからさ。とりあえず、登場人物も一幕だけで考えようぜ」


 副学級長の言葉には誰も文句を言わなかった。それより同意の声が多く上がった。俺も同等だ。


 副学級長が気が良い奴でイケメンだからという理由ではなく、単純に良い意見だと思っていたからだ。


「んじゃあ続き宜しく!」


「あ、うん。……えーと、メインキャラクターは、ロミオ、ロザライン、ジュリエット、ロレンスかな。それぞれの役割を言うと――


 ……ロミオ:主人公。


 ……ロザライン:主人公が片思いしていた子。


 ……ジュリエット:ヒロイン。


 ……ロレンス:修道僧でロミオとジュリエットの結婚の立会人。


 ——って感じです。立候補者はいますか?」


 上がらなかった。


 当たり前だろう。誰が積極的にやろうというのだ。


「ロミオ役立候補しないの? 私がジュリエット役やるから」


「勘弁してくれ……」


 彼女の冗談を受け流しているうちに、こんな声が上がった。


「じゃあさ。それぞれの登場人物ぽい奴にあった人を多数決で決めようよ」


 誰が言ったかは分からない。けど、それで良いのでは? 不細工な中途半端な奴を舞台に上げるよりは、美男美女をここで祭り上げてやらせればよいのでは? っという空気になり、それが実行された。


 その結果、どうなったのか。


 ロミオは副学級長になった。当たり前だろう。気が良い奴という評価を受けたイケメンだ。


 ロザラインは可愛い女の子になった。名前は知らない。女の子の名雨を覚えようとすると彼女が嫉妬するからだ。つらい。


 そして、ジュリエット役は――


「え、私?」


「うん、ジュリエット役をお願いします」


 ――俺の彼女となった。

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