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第5話:人間、変わるのが難しい

 彼女と同じくらい頭が良くなるにはどうすれば良いのか?


 その答えは勉強あるのみだ。


 誰でも簡単に頭が良くなるの方法があるのならば、その方法は周知されているはずだ。だが少なくとも俺は知らない。なら勉強をひたすらやるしかない。


 だがしかし、中学時代から勉強を真面目にやっていない人間が、高校から心機一転して勉強を頑張れるのか?


 答えはノーだ。


 まず、勉強の方法が分からなかった。どれを勉強すれば良いのか。どのように勉強をすれば良いのかが分からなかった。


 だが、その問題を解決する存在が学校には居る。先生だ。


 というわけで、勉強のスペシャリストなはずの先生に勉強の方法を聞いた。が、返答は授業中で聞いた内容と変わらなかった。


 なんかもっとないのか、っと憤怒したが考えてみれば当たり前である。沢山いる生徒のうち1人だけ特別扱いするなんてダメなのだ。


 だといえ、その授業中で聞いた内容だからと言ってダメなわけではない。むしろこれが最適解に近い勉強方法のはずだ。


 聞いた方法はいくつもあるが、それらをすべて実践できるように頑張る。教科書を読んで予習。授業でノートに書いた内容を用いて復習。友達に聞いたら「あたりまえの事をしているだけじゃないか」と言われた勉強方法をやっていく。


 ただ、俺にとってはこの勉強は当たり前じゃあなかった。勉強なんて授業を1回聞いてそのままと言うのが普通だった俺には大変だった。


 教科書でさえまともに読んだ記憶が無いので、予習はかなり苦痛だった。


 今日の復習は後どのくらいで終わるのだろうかと、めんどくさくなる。サボりたくなるし、実際にサボってしまい後で後悔することが何回もあった。


 だからサボりを監視する人が必要だ。そこで、


「いやなんで僕が君と一緒に勉強しないといけないの?」


「ジュースおごるから」


「ばっちこい、相棒!」


 友達を呼んで一緒に予習することにした。お互いを監視して勉強するのでサボることはなくなった。


 これを続ける。


 最初の1週間はとても苦しく、2週間目ではだいぶ慣れて「俺、意外とやれるんじゃないのか?」っと思い始める。


 が、しかし、1ヶ月目になると再び辛くなってきた。原因は良く分からないがめんどくさくなってきたのだ。だけども、やる。やり遂げる。


 そのおかげか、中間テストでは入学当初よりも高い点数を取ることが出来た。


「平均60点台か……」


「まぁまぁな点数になって来たじゃないか」


「1番上のクラスに行くにはどのくらいの点数が必要?」


「90」


「はぁ……」


「でも最初のころよりは現実的な目標になってるから」


「そうだけどさぁ……」


 ちらりと窓の外を見る。


 現在、俺がいる場所は図書館だ。放課後はここでいつも勉強している。


 そんな図書館の窓からは高校の玄関を一望できる。


 そして、今の時間帯になると――学年1位の彼女を見ることが出来るのだ。


「半分、ストーカーじみてる気がするよ、君」


「いつも図書館で勉強していたら偶然分かった事だから。自分から調べたことじゃないから」


「……ホントかなぁ」


 本当だって。嘘はついてない。偶然の産物だし、彼女の動向はこの帰宅時間しか知らない。


 窓を見てしばらくすると、目当ての顔が見えた。彼女だ。


 だけど、様子がいつもと違う。隣に人が居るのだ。


「……」


 それだけなら良かった。彼女はたまに友達と思われる女性と、一緒に帰る姿を俺は見ている。


 だけど、隣に居るのは女性じゃない。男性だ。


 距離が離れているので、男性について分かるのは髪型と体格、服装くらいだ。


 そんな男が、彼女と話していた。


 何を話しているのかは分からない。けど、楽しそうだった。


「……っ」


 もしかしたら、もう彼女には恋人がいるんじゃないのか。その疑問はあった。それが彼なんじゃないのか。そんな事を考えてしまう。


 時が止まったように、俺の体は動かなくなった。




 @




 夏祭りに彼女と一緒に行ってから、1時間近く経過した。


 俺はトイレの近くで突っ立っていた。1人で。


 1人なのは彼女が花を摘んでいるので待っているからだ。寂しい。


 彼女が買った牛串を持ちながら、ひたすらぼぉっとしていた。


 牛串の美味しいそうな匂いが鼻孔に突き刺さり、食欲を膨らませてくる。食べてもいいかな?


 そんな時だった。


「久しぶりっす、色男くん」


「……さっきも同じことを聞いた気がするよ」


 顔を上げると、そこには正にイケメンな顔が見えた。


 この顔は間違いない。かつて俺が図書館で見た、彼女と話していた男性だ。


「久しぶり、色男マン」


「男とマンで意味が被ってるっすよ~」


「……色男なのは否定しないんだな」


「いやぁだって実際そうですし?」


「とてもムカつく返答ありがとう。で、そっちは1人なのか?」


「まぁそうっすね。俺、休憩中なんですよ」


「ってことは、なんか手伝ってんの?」


「ほら、あの踊り場の整備とかやってるっすよ」


 そう言ったイケメンは、その口を俺の顔近くに近づけるとこう話す。


「……で、今年もアノ人はくるんっすか?」


「……彼女の姉さんなら、今年も太鼓やるって言ってたけ「よっしゃー!!」


 急に大声を出してガッツポーズをするイケメンに、びっくりした。思わず牛串を落としそうになる。


 ガッツポーズ男はこちらを向いて「ありがとうっす!!」なんて言葉を吐いて、踊り場の方へ走っていく。


「……まだ、あきらめてなかったのか」


「何が?」


「うわっ」


 振り向くと彼女の顔がこちらを見ていた。


「いや、ついさっき姉さん好き好き男と会ったもんで」


「姉さん好き好き男……?」


「ほら、語尾が「ッス」の何か後輩ぽい話し方するイケメン」


「あぁ……」


 彼女は何だかあきれた顔をしながらうなずいた。


「貴方が私の彼氏だと誤解した人ね」


「……やめてくれよ」


「ふふふ、ごめんなさいね」


 彼女の顔は、とても楽しそうだった。それはまるで、いたずら好きな猫のようにウキウキと。


「あの人はただ、姉さんの好きなモノを聞きに私と話してきたのにねぇ」


「はい、そうですね……」


「ふふふ!」


 彼女は他人を虐めて楽しむ人間ではないのは知っている。が、何故か俺には適応されないらしい。


 しばらくの間、この内容で弄られた。

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