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第6話:デートの後は、行く予定だったので

 謎の相撲を止めようと声を出そうとしたが、出なかった。体全体にかかるダルさが原因だ。朝から登山していた疲れがここで出てしまったのだろう。


 だから俺は相撲を観戦するしかなかった。


「あんたのせいでっ、カルボナーラが食べられなかったのよっ!!」


「だったらミーと一緒にタッベマセンカー!?」


「恋人と食べたいのよっ!! というかなんでっ、急にっ、似非外人風にしゃべるのよ?!」


 最初の数分間(とはいっても俺は気絶していたから厳密には不明だが)の相撲は真面目に取り掛かっていた。


「ワシがスイィトサァッド(こいびと)になってあげますよ!」


「私にそっちの趣味は無いわっ!!」


 押し合い、貼りて、かわし。ある意味超人的な肉体を持つ二人だからか、その相撲をする光景はテレビで見るような大相撲となんも遜色がなかった。


 その相撲が崩れたのは、とある些細な出来事。


 2人が再びつかみ合いになった時。妹が彼女の腰を掴んだ時だった。


 当たり前であるが本来相撲をするときは廻しをするのが普通だ。そしてつかみ合い時には廻しを握る。


 だが今回はしていない。そのままの格好だ。ゆえに掴む場所は腰回りのズボンだ。


 だがしかし、妹は強く掴みすぎたのか――彼女のズボンを下におろしてしまった。


「――っ!」


 ズボンの下は当たり前だが下着であった。


 黒だ。黒いパンツだ。


 そういえばこのパンツを前にも見た気がするな。


 たしかラブ――


「――見ないで!!」


「ぐへぃっ!!」


 生娘みたいな反応をした彼女に顎を蹴られて俺は気絶した。




 @




 日の光が目に刺さる。気絶から回復したら朝だった。気絶から睡眠に移行していたらしい。


 体全体が締め付けられている。締め殺しの木に寄生された大樹の気分だ。ちなみにその絞め殺しの木に値するものは彼女だ。柔らかいけど苦しい。嬉しいけど呼吸が困難で辛い。


 匍匐前進のように這い出る。彼女はまだ幸せそうに寝ているので起こさないように慎重にだ。その試みは成功して、俺は呼吸が満足に出来るようになって快適だ。


 あたりを見回してみる。


 切り倒したはずの木とかは知らないうちに消滅して、代わりに犬小屋が出来ていた。俺が今寝ていたところだ。上に名前札が掲げられていて、とても馬鹿にされていた。絶対に妹の仕業だろう。つらい。


 その妹と言えば、


「グッモーニング! ブラザー!!」


 めっちゃ生き生きとしながら荷物を片付けていた。


 昨日の事で悪気を感じることが一切なさそうな雰囲気。ある意味いつもの妹だが、とてもムカついた。


 だが言葉を投げてもコイツは反省とかを一切しないだろう。そういう人間だ。どうしようもない。


 暴力? 妹は一見華奢だが、内部はガッチガッチな筋肉密度を誇っている。どうあがいても勝てないだろう。


 どうしようもない。いつものようにとりあえず「はいはい」従うのが正しい判断に思える。


 だけど、彼女に対してあんな態度をとったのはどうしても――


 俺は、鼻歌を歌いながら片付けに没頭している妹の後ろににじり寄り、関節技を決めようと思ったがキャメルクラッチを逆にかけられ首がもげそうになった。

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