第2話:明日に用事があると起きるのが早いタイプ
遠足に行く前、ワクワクして寝るのが遅くなる人がいるだろう。
私の場合は起きるのも早くなる。いつも起きる時間の1時間前とかに起きてしまうタイプだ。
つまり何が言いたいかと、
「ふ~ん、ふぅふーん……」
私は朝5時くらいに起きてしまった。
今回の遠足に当たるものは、カップル限定メニューのカルボナーラを食べに行こうと言う約束だ。
海水浴に行った時よりは小規模な約束かもしれない。けど、こういうのは大きさの違いじゃない。
だから鼻歌歌いながら出かける準備しているのだ。
昼頃に食べる予定だから早すぎる準備かもしれないが、まぁ時間をかけて準備できるし。
なんて考えていると、ブ~っとスマホの振動音が聞こえた。
画面にはLINEの通知。彼氏からだ。
何だろうか? こんな朝早くから連絡を寄こすような人間ではないと思っていたが。
内容を確認してみる。
『いきなりごめん。今日の昼飯食べに行く約束だけど行けなくなった。昨日、急に妹が帰ってきてさ。それで一緒に富士山に登ることになっちゃって。拒否したんだけどさ。無理やり連れてかれちゃって。本当にごめんなさい』
「……は?」
内容が一瞬理解できなかった。
妹が帰ってきて富士山登る? どういうことなの……?
もうよく分からないので、彼氏に電話を掛けてみる。
「もしもし。おはよう、なんで富士山に行ってんのよ?」
『おはよう……えっと伝えにくいな』
「早くして」
『ア、ハイ……』
う~んなんて唸りながら、彼は言葉を紡ぎだしてくる。
『俺の妹の性格については知ってるよな?』
「勝手に物事を決めて巻き込んでくるからメンドクサイとか聞いたくらいね」
『まぁそういう事だ。急に富士山行こうって言いだして、寝てる間にバスに乗せられた……』
「えぇ……」
思わず変な声が出た。なんて無茶苦茶な。
……そんな無茶苦茶で私たちのカルボナーラは食べられなくなったのか。
楽しみにしていたのに。
「……何時帰ってくるの?」
『ええと、聞いてみる………………明々後日になりそうってさ』
「今、どの辺にいるの?」
『今? ああ、一番近いサービスエリアを通りすぎたところだな』
「じゃあ私も富士山行くから」
『へ?』
「じゃあ」
『いやちょっとま――』
スマホをポケットに入れ、準備を始めた。
今日入れて3日かけて登山するのならば今日は登らず泊まるはずだ。
なら、彼の元に行ける。
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「はぁっひやっ……」
「ふははは。ブラザー。ザッコイねぇ。このくらいでブレスを激しくするなんてね」
「ぃや、明らかにペースがおかしいぞ……」
俺は妹とともに富士山を登って行った。……何故か0合目から。
富士山について良く知らない俺だが、5合目から登るのが普通だということぐらいは分かる。
けど、妹は「なんか楽しそうだから」という理由で0合目から登山を始めたのだ。
というか、そもそも俺らは登山行く格好ではない。
妹は半袖にハーフパンツでスニーカーっとランニングしに行く格好だし、俺に関してはジャージにサンダルと完全にコンビニに行く格好だ。
にも関わらずマラソンレベルのペースで登っていく。辛い。
「もう、休もう、そろそろ、げんかい」
「まだハーフもクライム出来てないのに、ウィークだなぁブラザー」
「いや、夏だぞ、今。めっちゃ、熱くて、辛い」
「……熱中症になるのは迷惑だなぁ」
そう妹は言って、近くの木陰で休むことが出来た。……のだが、
「おい。なんで水稲の中身が熱いお茶なんだよ」
「へへへ。デリィシャスでしょうブラザー」
デコピンを繰り出したら避けられた。




