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第3話:うちの学校の図書館は朝早くから開いていました

 教室にカバンを置いてきた後、俺たちがやってきたのは図書館だ。

 朝早くの図書館に来る奴なんていない。

 おかげか二人でゆっくりとくつろげる。


「さて、勉強始めるわよ」


 まあ、くつろぐのが目的ではない。勉強するのが目的だ。

 彼女は成績優秀だが、俺はそうでもない。というか劣等生に属する部類だ。

 今は同じ高校にいるが将来進学するとしたらバラバラになるのは必須だろう。


 それは嫌だ。


 彼女が俺の知らない場所で知らない人と過ごすのは嫌だ。

 だからといって彼女が進学する大学を俺レベルに落としてくれなんて言えるはずがない。

 だから俺が彼女レベルにしないといけないのだ。


 あと彼女に勉強を教えてもらえるというのが嬉しいという理由もあるが。いやこれがメインかもしれない。後の恐怖よりも今のハピネス。


「昨日やっと数学iiが終わったから数学Bに移れるのよね」


「そうそう。数学Bは数列からだからヨロシクオネガイシマス」


「なんでカタコト? まあいいや。とにかくこれやってみて」


 渡されたのはA4用紙。裏表に問題がびっしりと書かれている。


「30分で終わらせてみてね」


 終わらなかった。というか4割ほど分からなかった。


「まあ想定内ね。貴方あまり授業中に勉強するタイプじゃないし、復習もしないし」


「できなくてスイマセン」


「だから今から出来るようにするのよ」


 そうやって赤ペン片手に分からなかった問題を解説してくれる。

 彼女の説明は分かりやすい――ことはなくどっちかというと分かりにくい。回りくどい部類だ。それは答えを素直に教えるのではなく、相手に考えさせるクイズ番組みたいな感じだ。


 この教え方は彼女いわく教えてもらう側が一番身につく方法でアクティブラーニングがうんぬんかんぬん言っていたので文句はない。

 事実テストの点は確かに上がっているし。


「これで終わりだけどなんか質問はある?」


「いやまあ……どうやって応用方法を思いつくんだ?」


「それは場数を踏むと自然に身につくとしか言いようがないわね。それか頭を柔らかくするとか」


「場数と頭を柔らかくね……例題解きまくるか……」


「それが良いわ。貴方の頭はダイアモンド並みに固いからね」


「ひどい」


 でも事実。テレビのIQテスト系クイズは大体解けないのだ。ちなみに彼女は大体最初の数秒で解いてしまう。その頭の柔らかさはどういったエクササイズをすればそうなるのでしょうか?


 時計は8時半を示している。その間に図書館にある程度の侵入者はいたが、それでも数は少なく静かだ。こちらを見るような奴もいない。


「終わるのがいつも丁度いい時間だけど、いつも時間配分とか計算してる?」


「してるわよ、当たり前じゃない。キリが悪いところで勉強が終わるのは嫌だし」


 しかし彼女の頭脳に追いつける日は来るのか。今はまだ二年生の一学期終盤であるが、およそ二年ないくらいで追いつけるのか。自信がない。


「昼はどこで食べる?」


「いつも通り裏庭のあそこで良いんじゃない?」


「じゃあそこで」


 そう言って俺たちは教室前で別れた。

 この高校では成績でクラスが分かれる。一年なら入試。二、三年は前年度の期末試験で。

 つまり彼女と俺はクラスは別々だ。

 彼女は一番上。俺は、その3個下だ。 

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