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24.ルクセマリアの想い

 

 イシュタル王国の王女ルクセマリアは、いつになく気分が荒れていた。

 水色の美しい髪や瞳は王都ヴァーミリア近郊にある聖湖ラプールの色に例えられ、女神のように優しげな面差しは多くの人々を魅了する。王国の人々から″イシュタルの睡蓮花″と称されるほどの美貌を持つ彼女であったが、ただ一人──苦手としている人物がいた。

 その人物の名は、ラティリアーナ・ファルブラヴ・マンダリン。


 世間から″オーク令嬢″と呼ばれている彼女とルクセマリアは、実は幼馴染であった。父親である現国王 アレス四世は若かりし頃マンダリン侯爵と共に冒険者をしていたことがあり、その縁で小さい頃から一緒に遊ぶことが多かったのだ。


 ラティリアーナは幼い時から自己主張が強い子で、おっとりとした性格のルクセマリアは、彼女によく振り回されていた。

 それでも同じ歳ということもあり、同年代の子が少ない貴族界において彼女はかけがえのない大切な友人であった。


「ラティリアーナはね、あたしの親友なのよ!」


 たとえ彼女が肥え太っていても関係ない。むしろラティリアーナの──最低限の言葉遣いは守るものの相手が王女であろうと無関係に歯に衣着せぬ物言いは、王家への礼儀を尽くしつつ本音を出さない他の貴族の子供達と比べて好ましく映る時さえあった。


 そんな二人の関係が、決定的に変わる時が来る。

 ″麒麟児″ アーダベルトの出現である。


 ある舞踏会の夜、それまで夜会に参加することがなかったエレクトラス伯爵子息のアーダベルトが初めて姿を見せた。美しく輝く金色の髪に、憂いを秘めた切れ長の大きな瞳。均整の取れた長身に、整った顔立ち。ずば抜けたルックスを持つアーダベルトの出現に、若き令嬢たちは一瞬で恋に落ちた。

 それは、深窓の姫であるルクセマリアも例外でなかった。絵画の中から飛び出してきたかのような″リアル王子様″の容貌を持つアーダベルトに、ほのかな恋心を抱いたのだ。


 しかし彼女は、自身の″王女″という立場をわきまえていた。自分が自由恋愛などできないことは、真面目な彼女は十分すぎるほど理解していた。


 ただ、遠くから眺めてるだけでいい。

 願わくば、彼が素敵な女性と愛で結ばれますように。


 決して報われることことのない、だけど相手の幸せを願うという選択を、ルクセマリアが選んだ矢先のことだった。

 ──ラティリアーナが、あらゆる手を使ってアーダベルトの婚約者という地位を得たのは。



 アーダベルトに恋に落ちたのは、ラティリアーナも同様だった。だけど彼女はルクセマリアとは違った。己の欲望を抑えることなく、手段すら選ばない。ぎりぎりグレーゾーンなことまでやってのけたという。


 結果、ラティリアーナはアーダベルトと婚約した。

 王家に二人とその親が婚約の報告をしに来た際に、ラティリアーナの勝ち誇った瞳と、アーダベルトの生気の完全に失せた死んだ目を、ルクセマリアは今も忘れることができない。


 ずきん。ルクセマリアの胸が強く痛んだ。

 理由はわからない。だが彼女は、その理由がアーダベルトを不憫に思ってのものだと判断した。

 胸を襲う痛みに目を瞑って、ルクセマリアは決心する。


「……アーダベルトの相手は、素敵な淑女でなければならない」


 だけどラティリアーナは違う。彼女は自由と我儘を履き違えた存在だ。そんな人が、アーダベルトを幸せにできるわけがない。

 であれば、自分にできることは──ラティリアーナを正すことだ。

 胸に穴が空いたような痛み。その痛みを埋めたのは、怒りの感情だった。


「ラティリアーナ。あたしは今のあなたを……決して認めないわ!」


 この瞬間、ルクセマリアはラティリアーナとの決別を決めたのだった。



 それからの二人の関係は、悪化の一途を辿っていった。

 舞踏会で顔を合わせては、お互いに嫌味を言い合う。ラティリアーナはこんなときでさえ、相手が王女であろうと御構い無しだ。

 喧嘩するたび、ルクセマリアの胸は痛んだ。それでも態度を変えることはなかった。


 ルクセマリアが 《 月下氷人の杖キス・アンド・デス 》に認められたのはこの頃だ。15歳になった際の儀式として、王家伝来の神代魔法具ディバイン・デバイスに手を触れ、淡い光とともに主人として認められた瞬間、彼女は自分が″特別な存在″だということを改めて強く意識した。


 やがてルクセマリアの周りには、それまではラティリアーナが怖くて距離を置いていた他の貴族たちが近寄って来るようになった。その中の一人に、パンダナト男爵令嬢イレーネがいた。

 イレーネはルクセマリアに輪をかけて内気な少女だった。決して美少女というわけではないが、おっとりとした顔立ちは万人を安心させる雰囲気がある。そんな彼女に親近感が湧いたルクセマリアは、彼女を妹のように可愛がった。


 つい3日ほど前のこと。お茶会のあと王宮の薔薇園を散歩している際、側に付いていたイレーヌが暗い顔をしながらルクセマリアに相談してきた。


「王女様、実は……わたしの家に犯行予告が届いたのです」

「犯行予告? そんな荒唐無稽なことをするのは一体誰なの?」

「それが……今王国を騒がせている怪盗マスカレイドなのです」


 怪盗マスカレイドは、ここ数ヶ月ほどの間で一気に名の知れた盗賊だった。

 イシュタル王国の王都ヴァーミリアに居を構える貴族邸に忍び込み、高価な魔法具マギアを盗んでは犯行声明を残していく。その手口は徐々に大胆になり、最近では犯行予告を出したり、シルクハットに燕尾服という奇特な姿まで晒すようになった。

 さすがに目元はマスクで覆って顔は隠していたものの、あまりにも人を小馬鹿にした態度に、貴族たちは激怒し、平民たちは「義賊の誕生だ!」と拍手喝采を送っていた。


「怪盗マスカレイド──そいつが犯行予告をしてきたのね?」

「はい。この《 銀嶺の雫 》を奪いに来ると」


 イレーネは首から下げた銀色のネックレスをルクセマリアに見せる。

 確か《 銀嶺の雫 》はBランク──ウルトラレア級の魔法具マギアだと記憶していたルクセマリアは、疑問から首をかしげる。確かにウルトラレア級といえばそれなりの価値はある。だが、犯行予告までして奪い去るようなものなのだろうか。


 だが今考えるべきはそんな事ではなく、目の前のイレーネを安心させることだと思い至り、すぐに頭を振って疑問を頭から追い出す。


「大丈夫よ。今おとうさま──国王陛下が騎士団を組織して対策チームを準備してるわ。隊長はダスティと聞いているし、必ず怪盗を捉えてくれるに違いないと思うの」

「まぁ! ダスティ様が!」


 ダスティ・ジョーンズはわずか21歳で騎士団の分隊長に任命されるほどの剣の使い手だ。豪快な性格で王国いちの腕前との評価も高く、筋骨隆々たる肉体は一部の貴族令嬢たちに大変評価が高かった。

 ルクセマリアはあまり筋肉的な男性が好きではなかったので興味を持っていなかったが、どうやらイレーネはそうではなかったようだ。目をハートマークにしている様子を見て、苦笑いを浮かべながら言葉を続ける。


「だから安心して明後日のダンスパーティには参加してね」

「はい! 楽しみにしてますね!」


 実はこの時のルクセマリアは、心の中で怪盗よりも別のことが気がかりになっていた。それは、明後日のパーティーに、最近めっきり顔を出さなくなったラティリアーナが、″千眼の巫女″リリスを連れて参加する、ということだった。


 先日、ルクセマリアは父親であるイシュタル国王から直接ある密命を受けていた。それは、″神代魔法具ディバイン・デバイス″の所有者であるリリスを王宮に招待すること。

 その際ラティリアーナも一緒に連れてくるように言われたものの、そのことはさほど重要視していなかった。


「どうせおとう様のことだもの、あたしとラティリアーナが今も仲良い子供のままだと思ってるんだわ。あたしたちはもう普通に遊ばなくなって随分経つというのにね」


 とはいえ、わざわざ誤解を解くほどのことでもないと考えたルクセマリアは、父親の指示を無視してリリスだけを誘おうと決めていたのだが──。



 久しぶりに見たラティリアーナは、まるで別人のように変わっていた。

 かつての傲慢で自己中な態度はなりを潜め、悠然と会場で″千眼の巫女″らしき美女とその連れの少女と談笑している。


 だけどこの時のルクセマリアには、その態度が″勝者の余裕″のように感じられた。


『わたくしは既にアーダベルト様を手に入れましたわ。だからあなたがたのように舞踏会で必死に男漁りをする必要もありませんの。せいぜい残り物たちで血眼になって自分と釣り合いのとれた相手を探すことですわね。おーほっほっほ!』


 そんな幻聴が聞こえてきそうなほど、ラティリアーナからは余裕が感じられた。それが──ルクセマリアのしゃくに触った。


 だから、彼女らしくもなく突っかかってしまった。対するラティリアーナも、かつてのように嫌味たっぷりで返してくる。いつものようないがみ合い。

 二人のとりとめのない言い争いを止めたのは──皮肉にも予想外な乱入者の登場だった。


 まさか、怪盗マスカレイドが王家主催の舞踏会に乱入してくるとは、さすがのルクセマリアも予想していなかった。なにせ王宮ヴァンデミリアンにまで忍び入る命知らずが居るとは思わなかったのだ。

 舞踏会の会場となっていた広間は比較的離れた場所にあり警備が手薄なほうだといっても、王宮ヴァンデミリアンは厳重な警備と警戒魔法で知られており、間違えて侵入するなどありえなかった。仮に入れたとしても、無数の騎士や警備兵が控えていたので、不審者などすぐに捕縛されるだろう。


 だが、怪盗マスカレイドはやってきた。

 眠りと目くらましの魔法で警備兵たちを尽く昏倒させ、堂々と登場したのだ。


 よもやこのような事態を想定なかったので、頼みの 《 月下氷人の杖キス・アンド・デス 》も宝物庫に預けたまま。怪盗に対抗するすべはもはやない。

 気絶したイレーネを抱きしめながら、ルクセマリアは奥歯をくいしばって己の不覚を悔いていた。


 なにが安心しなさい、だ! 《 月下氷人の杖キス・アンド・デス 》を手に入れて、驕っていただけではないか。魔法具マギアが無ければ私には何の力もない、ただの一人の女の子なんだと痛感させれられる。


 だからせめて、我が身を張ってイレーネは守ろう。震える身体を必死に抑えながらそう誓い、歯を食いしばりながら顔を上げる。すると──。

 ──目の前に、美しい紫色の髪を持つ女性が立っていた。



 その女性がラティリアーナだと気づいた時、ルクセマリアの心の中に大量の感情が一気に流れ込んできた。


「なんでラティリアーナがあたしの前に?」「ラティリアーナってば、ずいぶん痩せたわね」「この子、もしかしてあたしを守ってくれようとしているの?」「やだ、なにこれ」「あの子、こんなにカッコよかったっけ?」「あぁ、でもやっぱり最後に助けてくれるのはラティリアーナなんだ」「あたしが求めていたのは、本当は──」「いいえ、騙されちゃダメ。ラティリアーナは裏切るんだから」「裏切る? いつ裏切った?」「それは──自分ではなくアーダベルトを選んだ時に?」「どうしてあなたは、あたしじゃなくて彼を選んだの?」「だってあたしは、ラティリアーナのしんゆ──」


 ルクセマリアは、巡り来る想いを断ち切るように声を上げる。


「ら、ラティリアーナ!? なぜわ、私の前に立つの? ここにいては危ないわ! 相手はあの怪盗マスカレイド、そして狙いは私とこの子……。だから早く私の側から離れなさい!」


 だけど、彼女の心の声はラティリアーナには届かない。


「ルクセマリア王女こそ下がっててくださます? あとはこのわたくしが、あの不埒者を成敗しますので」

「だ、ダメよそんなの! そもそもあなたに力なんて……」

「あーら、それってわたくしのこと見くびってなくて?」


 ラティリアーナの全身が、紫色の輝きに包まれる。

 目の前には──身震いするほど美しい美少女に【変身】したラティリアーナが、剣を構えて立っていた。


「ら、ラティリアーナ? あ、あなた、その姿は……?」

「あら王女様、あいにく″ 神代魔法具ディバイン・デバイス ″に選ばれているのは、あなただけではなくてよ?」

「そ、それって……!?」


 ラティリアーナが左手に持つ本を一目見て、ルクセマリアは全てを理解した。彼女は、自分と同じ″ 神代魔法具ディバイン・デバイス ″に選ばれた人間なのだと。そして──ラティリアーナが″美しさ″をも得たのだという事実を。


 リリスの魔法により解呪された人たちが次々と目を覚まし、怪盗マスカレイドが立ち去った後も、ルクセマリアは茫然自失したままだった。

 いつのまにか元の太っちょに戻っていたことから、彼女以外の誰も″痩せたラティリアーナの姿″を見たものはいない。しかし、怪盗が彼女に残した呼び名は、全員の耳に残っていた。


 ── 紫水晶アメジストの乙女。


 この日を境にラティリアーナを指し示すことになる二つ名が誕生した瞬間だった。



 ◇



 翌日。

 ルクセマリアは未だに呆然としたまま、父王アレス四世の横に立っていた。もちろん、前夜の英雄であるラティリアーナとリリスを出迎えるためだ。


 彼女たちの待っている間、父親のアレスはルクセマリアに優しく諭すように語りかける。


「ルクセマリア、もう心配しなくていいぴょん。パパが結界を貼り直したから大丈夫ぴょん」

「はい……おとうさま」

「でもまさか余の結界を破る魔法使いがいるとは思わなかったぴょん。油断したぴょん」


 ちなみにこの『ぴょん』という口調は、場を和ませるためのアレス王の口癖である。と本人は言っているが、ルクセマリアはあまり信じていない。


「しかし、リリスというものはなかなかの魔法使いのようだぴょん。ぜひイシュタル王国に引き入れたいぴょん」

「それは……難しいかもしれません」

「なんでぴょん?」

「なぜなら、リリス様はラティリアーナのパーティメンバーだからです」

「ほほぅ?」


 キラリ、アレス王の目が鋭い輝きを放つ。


「そうかぴょん。ではラティリアちゃんごと抱え込めば良いぴょん?」

「そ、それは……」

「ふふふっ。良いぴょん、あとはパパに任せるぴょん」



 ──しばらくして、騎士隊長を務めるダスティがやってきて、ラティリアーナたちの来宮を告げる。現れたのは、太っちょのままのラティリアーナと、″千眼の巫女″リリス、お付きのモードレッドの三人だった。

 結局ルクセマリアは、あのときなぜラティリアーナが痩せた姿になったのか、話を聞くことができなかった。


「もしかして、見間違いだったのかしら……」


 しかしあのときラティリアーナは、自分も″ 神代魔法具ディバイン・デバイス ″に選ばれたと言っていた。であれば、あのときのあの姿は──。


「よくぞルクセマリアを守ってくれたぴょん! ラティリアちゃん、それにリリス、モードレッド。三人には感謝してるぴょん」

「アレス陛下。わたくしどもは当然のことをしたまでですわ」


 ルクセマリアが考え事をしている間にも謁見は始まっていた。とはいえ国王とラティリアーナは既知の仲なので、おそらくアレス王的には娘の友達と話しているような感覚もあるのだろう。


「せっかくだから、ラティリアちゃんには褒美をとらせるぴょん。なんでも言っていいぴょん」

「では、せっかくですので陛下に望みがありますわ」

「……ほぅ?」


 ラティリアーナの望みなど、どうせ高価な宝石や貴重な魔法具マギアだろう。そう思っていたルクセマリアの予想を裏切るように、ラティリアーナは言った。


「怪盗マスカレイドを、わたくしにまかせていただきたいのですわ」

「ラティリアに……任せる、とな? ラティリアちゃんが怪盗を捕まえる、とでも言うのかぴょん?」

「ええ、そうですわ。そして、わたくしが捕らえたおりには、マスカレイドの処理をわたくしにお任せいただきたいんですの」


 ルクセマリアは強い衝撃を受けた。まさかラティリアーナがそのようなことを言うとは……。

 動揺を隠せないでいるルクセマリアに向けて、ラティリアーナが語りかけてくる。


「もちろん、怪盗を捕まえるのは簡単ではありませんわ。ですので陛下と──ルクセマリア王女にお願いがありますの」

「ふぇっ!? あ、あたし?」

「ほぅ、お願いとな?」

「まず、ルクセマリア王女。あなたにはパンダナト男爵令嬢イレーネの持つ《 銀嶺の雫 》をひと月ほどお借りできるよう、彼女にお言葉添えを頂きたいですわ」

「えっ? イレーネに? か、借りるの?」

「それと陛下には、一月後に″ 仮面舞踏会 ″を開催する許可を頂きたいですの」

「ふむ……」


 《 銀嶺の雫 》を貸してほしい。

 そして一ヶ月後に″仮面舞踏会″を開催してほしい


 いったいその二つでどうやって──あの″怪盗マスカレイド″を捕まえると言うの? ルクセマリアが混乱から立ち直ることができない間に、アレス王が大笑いを始める。


「ふぉふぉふぉ! 愉快だぴょん! まさかラティリアちゃんが怪盗を捕まえるなどというとは……だが、怪盗マスカレイドは王国内では重大な問題だぴょん。無条件で処遇まで任せるのは、なかなか他の貴族も納得しないぴょん」

「わかりました。一月の間に怪盗成敗を成すことができませんでしたら、そのときは──わたくしたち三人、陛下の望むようにしていただいてかまいませんわ」


 望むようにして良い。それは、三人がイシュタル王国の配下になることを意味する。

 成功すれば、怪盗は消え去る。失敗しても″ 神代魔法具ディバイン・デバイス″の持ち主が二人も傘下に入る。アレス王としてはどちらに転んでも悪くない結果だ。であればこの申し出は──。


「ちょ、ちょっと待って!」


 そのとき、声を上げたのはルクセマリアだった。


「ルクセマリア、どうしたぴょん?」

「お父様! あ、あたしも怪盗マスカレイドを捕まえるわっ!ダスティ! 」

「はっ、王女様」

「あなたはあたしが怪盗マスカレイドを討伐する手伝いをなさいっ!」

「は、はぁ……陛下、よろしいので?」


 いつもは豪快なダスティの困ったような視線を受けて、アレス王はルクセマリアからの唐突な要求について考えた。確かに娘は才能はあるものの、その優しさからなかなか使いこなせないでいた。だがラティリアーナという同年代のライバルと競い合うことで、一気に成長するかもしれない。

 この瞬間、アレス王の心の中は完全に固まっていた。


「……ラティリアーナ、おぬしはどうだぴょん」

「構いませんわ」

「よし、では決まりだぴょん! これから一ヶ月の間、ルクセマリアとラティリアちゃんのどちらが先に怪盗マスカレイドを成敗するか、競争だぴょん! 勝った方に怪盗マスカレイドの生殺与奪権を与えるぴょん!」


 こうして── ルクセマリア&騎士隊長ダスティ の『プリンセス・アンド・ナイト』チーム対、ラティリアーナたちのチームによる、怪盗マスカレイドを巡る一ヶ月間の戦いの幕が切って落とされたのだった。

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