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13.パーティ結成!

 アーダベルトが主人公?

 そしてラティリアーナが……敵?

 なんだその意味がわからない運命・・とやらは。


「アーダベルトはね、いずれ世界を救う英雄になるんだ。正確にはその候補の一人なんだけど……。それで、アーダベルトの前に立ちふさがるイベントボス的な存在がキミ──すなわち″悪役令嬢″ラティリアーナなんだよ」

「イベントボス?」

「まぁ宿命の敵役みたいなものかな? ちなみにそのときのキミが使ってくる能力が″魔力無効化″と″衝撃波″なんだよ」


 それで俺に″魔力無効化″と″衝撃波″の能力が使えないか聞いてきたのか! なるほどねー……って、いやいや! そんなの知らんがな!


「リリス。それはタチの悪い冗談だよな?」

「ううん、本当だよ……なんか自信無くなってきたけど」

「だよなぁ。それで、ラティリアーナはなんでアーダベルトの敵になるんだ?」

「うーん、痴情のもつれ?」

「ぶっ!」


 リリスの説明によると、アーダベルトに振られたラティリアーナが錯乱して闇落ちして、最終的にはアーダベルトの前に″世界の敵″として立ちふさがるらしい。なんだそれ。

 そもそも俺がアーダベルトに惚れるというのがありえない。想像しただけで……キモッ! ありえんわっ!


「なぁリリス、俺がそんな理由で世界の敵になると思う?」

「うーん、あんまり思えないかな?」

「だよなあ、俺もそんな気さらさらないし」

「本当に?」

「ありえんわ。そもそも俺、中身は男だぞ?」

「……ですよねぇ」


 そう言いながらも、なぜかリリスは心から安堵したようだった。初めてこいつの年齢相応の顔を見た気がする。もしかしてこいつ、そんな荒唐無稽な運命とやらにずっと振り回されてたのかな?


「そっかぁ、ここにも″運命に抗う存在″がいたんだね」

「ん? なんか言った?」

「ううん、なんでもないよ」


 なんだよ。変なやつ。


「それで、ラティリアーナ。キミは、これからどうありたいの?」

「うーん。正直まだ決めかねてるんだ。元に戻れるなら戻りたい気もするけど、このままラティリアーナの身体でどこまでやれるかチャレンジしたいって思ってる。というかチャレンジしたい!」


 あぁ、改めて言葉にしてみて分かった。俺はやっぱりこの身体でどこまで行けるのか試したいんだ。

 かつては諦めていた気持ちが、今ものすごく盛り上がってるのが自分でもわかる。だって魔力が使えるんだぜ? 痩せたら美少女なんだぜ!

 アーダベルトと痴情のもつれで争うなんてありえない。ならば、運命なんかに左右されない、ゴールのない方向に向かってもいいんじゃないかな?


「ふふふっ、キミって本当はすごく真っ直ぐな人なんだね。言葉の仮面の下に隠れてて全然気づかなかったよ」

「……そうかな、そんなつもりはないんだけど」

「ねぇラティリアーナ、全てを話す前に──ひとつお願いがあるんだ」

「お願い?」


 何を此の期に及んで妙なことを言い出してるんだ? こちとらもう既に全部さらけ出してるってのに。


「いやいや、そんな顔しなくてもいいじゃないか。お願いっていっても別に難しいことじゃないよ。ボクの……いや、ボクと″パーティ″を組んでもらいたいんだ」

「パーティ? パーティってあれかい? 冒険者同士が組むっていう、あの?」


 ″千眼の巫女″の口から出てくるとは到底思えない言葉に、俺は思わず確認してしまう。


「そうだよ。ボクとパーティを組んで欲しいんだ」

「でもさ、パーティったって、こっちは侯爵令嬢……あー、悪役令嬢だっけか? で、そっちは巫女様だろ? それが冒険者にでもなろうっての?」

「そういうわけじゃないんだけど、その方が説明が簡単だってのもあるし、あと……こっちにもちょっと切実な理由があってね」


 なんだか遠い目をするリリス。なにか辛いことでもあったんだろうか。まぁいっか、大して悩むことでもないし。


「その程度で良ければ構わないよ」

「本当!? ありがとう!」


 リリスが嬉しそうに差し出してきた手を握る。その瞬間、頭の中にポーンという音がなった。


『ラティリアーナとリリスは″パーティ″となりました。自動的にモードレッドともパーティとなります』


「な、なんだ今の音と声は!?」

「あれ、知らない? システムの声だよ。スキルとか魔法使うときに頭の中に流れたりしない?」

「し、知ってるけど……これはシステムの声って言うのか」

「システムの声っていうのはボクが勝手に言ってるだけだけどね。こっちの世界・・・・・・では″神の声″とか言ってるみたいだけど」


 こっちの世界? また変なキーワードが出てきたぞ。


「まぁここから先の話はモードレッドを呼んでからでもいいかな? さっきから心配して廊下に控えてるんだ」

「え!? そうなの!?」

「モードレッドは元々ボクとパーティを組んでたから、こうなったからにはラティリアーナのパーティの一員でもあるからね。あ、そっちも呼びたい人がいたら呼んでもいいよ?」


 そう言われて、舞夢マイム美虎ミトラの顔が脳裏に浮かんだけど、すぐに打ち消す。ダメだダメだ、彼女たちは俺のことを本物のラティリアーナだと思ってるんだから、バラすわけにはいかないわ。


「いや、こっちは特に居ない」

「そう? じゃあモードレッド、入っておいで〜」


 音もなく入口の扉が開き、黒の夜着に身を包んだ黒髪の美女モードレッドが入ってきた。相変わらずスタイルが良いし美人だ。


 ──その時の俺が″魔導眼″を使ったのは、ほんの気まぐれでしかなかった。なんとなく、本能的に使っていた。

 魔導眼によって映し出されたモードレッドを見たとたん、俺の全身が総毛立つ。

 彼女は、普通ではなかった。まるで魔力が血液のように身体中を細い線で循環していたのだ。


「な、なんなんだ彼女は……」

「ん? 気づいたの?」


 俺のつぶやきに気づいたリリスが軽く首を傾げる。大きな赤いリボンが揺れて可愛らしい。モードレッドが無表情のままリリスに声をかける。


「どうやら交渉は無事成立したようですね、マスター」

「マスター?」

「あぁ、ボクのことだよ。ラティリアーナは気づいたみたいだけど、彼女はこう見えて優秀なゴーレムなんだ」

「なにっ!? ゴーレムだって!?」


 俺が知るゴーレムは、ダンジョンの奥などに設置された魔導式の機械人形ロボットだ。ただそいつらは石や金属で造られていて、無骨で角張ったブロック状の部品と、関節用の丸い部品を組み合わせた体であることがほとんどだ。

 一方、目の前のモードレッドは、どう見ても人間にしか見えない。しかもかなりの美女だ。ただ──″魔導眼″で見たときだけ異常なのだ。


「彼女はね、世界で他に発見例がない″生体ゴーレム″なんだ。ちょっと縁があってボクのボディガードを務めてくれている。こう見えてすごく強いんだよ」

「改めてよろしくお願い致します、サブマスター」

「え、ええ。よろしく……」


 動揺しながらなんとか返事は返したものの、ペコリと頭を下げてくるモードレッドはどう見ても人間にしか見えない。

 たしかに無機質だとは思ってたけど、よもやゴーレムだったとは。なんだか凄いのとパーティ組むことになったなぁ。



 ◇




「さぁ、こうしてパーティを組めたから、色々と出来るようになったことがあるよ。まずは昼間には確認できなかったラティリアーナのステータスを見てみようか」

「ステータス?」

「百聞は一見にしかずだよ。──ステータス、オープン──」


 リリスがタブレットを操作すると、俺の目の前になにやら光る板のようなものが出現した。そこにはなにやら文字と数字が書いてある。




『ラティリアーナ・ファルブラヴ・マンダリン』

 15歳、女性、165cm、78kg、人間族

 レベル:1

 HP:37/68

 MP:3264/8926

 状態:全身筋肉痛(軽)

 ギフト:魔眼(魔力可視化)

 魔法具マギア:《 紅き魔導書スカーレット・グリモア

 パッシブスキル:●◇%▲

 称号:『悪役令嬢』、『オーク令嬢』、『肥満(大)』、『令嬢の嗜み』、『断魔の力(小)』、『魂に不確定要素あり』




「なに、これ……」

「レベル1にしてはかなり素晴らしい数値ですね」

「ふふふ。これがラティリアーナの情報、すなわちステータスだよ。ボクのタブレットを使えばこんなのを見ることができるんだ。それにしてもモードレッドの言う通り、MP──魔力値がすごく優秀だね」


 たしかに、HP──おそらく体力に比べて、魔力の方の数字が恐ろしく高い。


「普通はどれくらいなの?」

「平均的な数値は100となります」

「ええっ!?」

「つまりラティリアーナは凡人の90倍くらいの魔力を持ってる。これはすごいことなんだよ」


 どうやらラティリアーナはとてつもないポテンシャルを持ってるみたいだ。これまで無魔力だった身としては感無量だよ。

 ところで「称号」とか、なんか読めない字が書かれた「パッシブスキル」 ってのは何なんだろうか。


「称号は、その人物に与えられた資格みたいなもので、能力値とかに影響を与えるものなんだ。あと、んー。文字化けしてるから内容は分からないけど、パッシブスキルというのは常時発動してる能力のことだよ」

「常時発動──だったらあの変な口調のことかな?」

「あはは、それはあるかもね」


 まさかラティリアーナ節がスキルだったとは……いらねー、マジで外して欲しいわ。


「あとレベルってのは?」

「強さのランクのことかな? 敵と戦ったりすごい経験をすると上がっていくよ。ラティリアーナは開始前だからまだ1だね。でも大丈夫、これなら成長の余地があるってことだからさ」


 成長の余地がある。ああ、なんて素晴らしい言葉だろうか。


「せっかくだからボクたちの数値も見せよっか」

「もしかして、他の人のも見れるのか?」

「うん、見せれるよ。同じパーティメンバーならボクの魔法具マギアの効果範囲内だからね。それじゃまずはモードレッドから」




『モードレッド』

 175cm、--kg、生体機械バイオ・ゴーレム

 レベル:--

 HP:6500

 MP:300

 状態:正常

 スキル:全身兵器

 称号:『生き人形』、『無感情』、『小姑』、『秘書』、『戦闘マシーン』




「あのー、ところどころにぶっそうな名称が付いてるんですが……」

「モードレッドは元々ガーディアン用のゴーレムだったからね。そのあたりはご愛嬌ってところかな」

「はい、必要に応じて全力を尽くさせていただきます」


 全身兵器とか戦闘マシーンがご愛嬌って……。ジャキンッ! という金属音とともに、モードレッドの右腕が剣に変化する。なんだそりゃ!

 スキル名からして、もしかして全身があんな感じなんだろうか? 敵に回さなくてよかったかも。くわばらくわばら。



「そして次はボクのステータスね」




『アマリリス・アマテラス』

 15歳、女性、138cm、35kg、人間族

 レベル:12

 HP:54/54

 MP:173582/180000

 状態:正常

 ギフト:転生チート(魔力ブースト)

 魔法具マギア:《 千里眼情報板ラブリィ・タブレット

 称号:『千眼の巫女』、『モードレッドのマスター』、『転生者』、『運命に抗うもの』、『合法ロリ』



 ……えーっと、いろいろつっこみたいところがある。

 一体どこから突っ込むべきだろうか。


「……あんた、本名はアマリリスっていうのか」

「うん。でも長いからリリスでいいよ。女神様の名前だから気に入ってるし」


 女神? 俺の知る限りリリスなんて名前の女神様はいなかった気がするんだけど。


「あと──あんた15歳だったのかっ!! どう見ても10歳くらいだろう!!」

「うるさーい! これでも気にしてるんだよ、いつかはボンキュッボンになれると信じてたのに……。うぅ、なにが合法ロリだよ。いくらこの世界が15歳から成人だとはいえ、これはないだろぉ。しくしく」


 ありゃりゃ、こいつ急に泣きだしたよ。なんかまずい事言ったかな?


「マスターはグラマラスな女性が大好きなのですよ」

「ふーん」


 なんか思ってたよりもどうでもいい理由だった。


「マスター、うそ泣きはほどほどにしてください。話が終わりません」

「はぁーい。まったくモードレッドはいけずだなぁ」

「うそ泣きだったんかい!」


 なんかこいつらといると調子狂うなぁ。くそっ、誤魔化されずに大事なことを聞かないとな。


「あと、なんだよこの魔力量は? 何か間違い?」

「間違いじゃないよ。僕の魔力量は18万ありまぁ〜す」

「じゅ、18万!?」


 俺も多いって言われたけど、なんか桁が違うぞ? これだとええと……。


「一般人の1800倍、サブマスターの約20倍になります」

「あ、ありがとうモードレッド。教えてくれて」

「どういたしまして、サブマスター」

「ってトンデモないなオイ! もはや人間兵器レベルじゃないか! 」

「まぁチートだからね。転生者にはこれくらいのサービスはつきものだよ」


 ──転生者。

 そう、それ。それが一番聞きたい事なんだよ。


「その──転生者ってのは何なんだ?」

「読んで字のごとく、だよ。ボクはね、別の(・・)異世界から(・・・・・)この世界に転生してきたんだぁ」


 そう言うとリリスは、幼い容姿に不釣り合いな大人びた笑みを浮かべたんだ。


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