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秋の夕暮れからの記憶  作者: 茶々
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第8話 サプライズ

ちょっと短めです。



「「退院おめでとう!!!」」


「ふぇ?」


玄関で数秒間フリーズしている所に後ろから声がかかる。


「いやーなんというか、そういう事だ香太」


その言葉でやっと再起動する。

目の前には見知った顔が二つ並んでいる。

そういう事と言われてもなぁ...

とりあえずこういう時は状況整理だ。

この感じ病院で目が覚めて最初に奏が来た時思い出すなぁ。


えっととりあえず家に帰ってきました。

家に入りました。

突然退院おめでとうと言われました。

なるほどわからん。

まあそれはいい。

何よりも奏と竜也が家にいた。

そしておめでとうと言われた。

じゃあまずはお礼を言わなければ。


「えっと、ありがとう?」


疑問形になってしまった。



--------------------



その後は玄関で僕の質問タイムだ。


「えっと一応説明してもらえる?」


僕は主犯であろう奏に質問を投げかける。


「えっと事の始まりは香太がそろそろ退院って言ってた次の日になるんだけど…」


そう言って奏は言葉を紡ぎ始める。


奏曰くこういうことらしい。


僕がそろそろ退院と言った日の帰り道石川さんに退院の日を聞き出してサプライズをする事に決めたらしい。

その次の日の学校で竜也に声をかけて僕の家の場所を聞きお父さんにサプライズを提案したようだ。


「突然教室で凛堂先輩に呼ばれた時は驚いたよ…」


竜也がしみじみ呟いている。


そして、奏と竜也とお父さんでサプライズを計画していたらしい。

今日病院に来るのが遅れたのはサプライズの準備に時間がかかっていたかららしい。

そして家に着いた直後お父さんが携帯をいじっていたのは竜也か奏に着いたと連絡していたのだろう。

そして今に至る、と...


「要するに、僕を喜ばせるためにやった事なのか...」


「そう!そうだよ!だからもっと喜んで!」


奏がここぞとばかりに言ってくる。


まあ普通は喜ぶだろうな...

だけど僕の場合今日は覚悟を決めた形で家に入っちゃったからなぁ。


「まあ凛堂さんも竜也も香太を喜ばせるために色々試行錯誤してくれてたんだ、質問はそれぐらいにしてやったらどうだ?」


うむ、それもそうだな。

そもそも奏たちの悪い要素はゼロなんだから。


「よし!記憶にない家ということで覚悟を決めてたけどそれはもうやめだ!存分にサプライズを受けるよ!」


僕が大声でサプライズ楽しむ宣言をしたらその瞬間、


「よっしゃー!そう来なくっちゃ!おい香太!リビング来いよ!凛堂先輩すげえんだぞ?」


「ん?何が?」


僕の質問は聞かずにさっさとリビングに向かってしまう奏と竜也。


「いやー香太もいい友達持ったよなぁ。」


お父さんが笑いながら言っている。

そうか竜也の事はお父さんも知ってるのか。


「それより香太、自己紹介はしてもらったが、凛堂さんとは元々知り合いだったのか?上級生だろ?」


「あー、その辺は後で話すよ、とりあえずリビング行こ」


そう言って僕達は洗面所で手を洗ってからリビングに向かって歩いていった。


リビングに着くとテーブルの上に美味しそうな料理がたくさん並んでいる。

竜也が言ってた凛堂先輩すげえんだぞってもしかして...


「これ、奏が作ったの?」


「えへへ、退院祝いということで腕によりをかけました!!」


マジか...奏って料理も上手なのか。


「凛堂さんにキッチン貸してくださいって言われて、言われるがままに貸したけど、まさかこんな豪華な品々を作るとは思わなかったなぁ」


「俺もこれは予想外だった…」


竜也とお父さんは感激を通り越して唖然としている。

僕もこれは驚いた。


「マフラーもそうだったけど、奏ってほんとに器用だね。」


「えへへ〜それほどでも〜」


僕が褒めると奏は満更でもなさそうに照れている。


「よし!家を見て回りたい気もするけどその前に食べちゃおっか」


そう僕が言うとみんな椅子に座りご飯を前にする。


「「「「いただきます!」」」」


みんなで一斉に挨拶をして絶品料理たちに舌鼓を打った。



--------------------



「ふう、ごちそうさまでした。」


「お粗末さまでした」


食べ終えるのは僕が最後だった。

僕が食べ終えたのを見計らって奏が食器を片付け始めた。


「あ、奏片付けは後でやっとくから大丈夫だよ」


「そう?ありがとね」


「あ、でもとりあえずテーブルの上だけでも片付けようか。お父さんたちも運ぶの手伝って」


そうしてテーブルが片付きみんな分のお茶を用意する。


「奏、料理ありがとね、すごい美味しかったよ」


「凛堂先輩ほんと美味しかったです!ありがとうございました!」


「ああ、ほんとに美味しかった。香太の彼女は料理が上手くて美人なのか!」


「「「え?」」」


お父さんの発言に3人の声がハモる。


「えっとお父さん?奏は彼女とかでは無いよ?」


僕の言葉に同意するように奏が頷く。

気のせいか顔は赤い。


「え?そうなのか?てっきり付き合ってるもんだと思っちゃったよ」


何故そう思ったのか…

あ、でもそうか記憶を無くしてる人にサプライズとかを考える同じ学校の女性ってなるとそう思ってもおかしくないか。


「えっとね、お父さん、奏は僕が記憶を失くしたあとに初めて会ったんだよ」


そう言うと奏は何か言いたそうにしていた。

だが一瞬だったので気にせずに話を続ける。


「お父さん、僕が事故にあった時に女性を庇ったって言うのは病院の人に聞いてるよね?」


「ああ...聞いてるけど…って!まさかその女性ってのが凛堂さんってことか!?」


「まあそういう事かな。ついでに言うと病院で目が覚めた日に突然病室に来て謝られた」


「なるほどなぁ…でもそれにしても仲良さそうに見えるけどな、名前で呼びあってるし。」


「そう!それ!俺も疑問に思ってた!凛堂先輩の事なんで普通に名前で呼んでるんだよ!」


竜也が喚き出した。


「えっと経緯を説明するとね…」


そう言って僕と奏の出会ってからの話をしていくうちに時間が過ぎて言った。


1番追求されたのは、僕が最初、初対面レベルの時に奏のことを名前で読んだことだった。

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