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秋の夕暮れからの記憶  作者: 茶々
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第4話 知らない気持ち




奏が同じ高校?しかも生徒の憧れの的って...確かに奏はすごい美人だ。

憧れている人がいてもおかしくないと思う。


でもちょっと待てその前に。


竜也の説明の後数秒考え込んでから話を切り出す。


「えっと...ちょっと待って、竜也が先輩って言ってるってことは奏、ひょっとして年上だった...?」


「実は私は、香太が事故に遭った時に制服見てたから知ってたよ。言おうと思ってたけど言うタイミングが無くてね。」


..................マジか。


「もしかしてこれからは奏先輩って呼んだ方が良いですかね...?」


「んん、今更敬語とか先輩とか言われちゃうとむしろ違和感あるから前のままで良いよ」


奏が笑って答えてくれる。

良かった、今更変えるのも大変だと思ったしな。

そんな奏との会話を聞いて竜也は固まっている。


「おーい、竜也大丈夫かー?」


「...............はっ!?ごめん香太...今日色々ありすぎてわけが分からなくなってた...」


「お、おう、そうか」


まあ僕の記憶喪失を知った時点で訳分からなくなってもおかしくないからな。


「で、俺からも香太に聞きたいんだが、なんで凛堂先輩とそんなに親しそうなんだ...?」


「えっと説明すると長くなるんだけど…」


僕は竜也に事故に遭った日のことを伝えた。

奏がトラックにはねられそうなところを助けて僕が事故に遭ったということなど。




「香太...お前普段は静かで周りの事なんて何も見てないって思ってたのに以外と動ける奴だったんだな…」


「それは僕も驚いてる。正直僕が奏を庇って怪我をしたという事がまだ完全には信じられてないぐらいだしね。」


そう言うと奏はムスッとした顔で


「香太が私を助けてくれたのは本当。私が学校の帰り道トラックにはねられそうなところを助けてくれたんだよ?あの時はなんで何も知らない私なんかのためにって思って凄いびっくりしちゃった...」


奏が悲しい顔になってしまった。


「もしかしたらその時の僕は生徒の憧れっていう奏の事を知っててカッコつけるために助けたのかもね」


場を和ませるために笑いながら言う。

すると竜也が


「え?でも前に俺と廊下歩いてる時凛堂先輩とすれ違って俺が凛堂先輩綺麗だよなって言っても、誰?って言うだけだったぜ?」


おいおい竜也、空気読めよ…


「ふふ、じゃあ香太はほんとに知らない私を助けてくれたんだね。」


口元に手を当てながら笑って言ってくれた。

良かった笑顔に戻って。


「それよりお前、友達になってくださいとか言ったんだな...前のお前からは全く想像出来ねぇ...」


「いやっあの時はとにかく気軽に話せる人が欲しかったっていうか…」


「じゃあ誰でも良かったってこと?」


いたずらっぽく笑いながら奏が言う


「あー!もう!奏だから友達になろうって言ったんだよ!からかわないでくれよ...」


「ごめんごめん、でも嬉しかったよ?あの時友達になってくださいって言われて。」


奏が僕に追い打ちをかけてくる。

顔が熱い。


「もう、この話終わり!すっごい照れくさい!」


奏と竜也が笑う中僕は布団で顔を隠した。


その後2人に学校の事などを聞いた。

僕の通っている学校はネクタイの色で学年が分かるらしい。

だから奏は年下って分かってたのか。

まあ言わないでいてたおかげで年齢とか関係ない間柄になれたんだけども...


そんなことを話しているうちに帰る時間になった。


「じゃあ俺帰るわー」


「私ももう時間だから帰るね」


2人が荷物をまとめてドアの方へ歩いていく。


「えっと、また今度」


「おう、また暇な時くるわ」


「私も出来るだけ来るね、またね香太」


2人がドアから出ていくまで手を振り続けてドアが閉まって数秒後スマホにメールが届く。


『あの時、友達になってくださいって言われて嬉しかったのはほんとだからね?』


奏からのメールで胸がドキッとした。

この気持ち何なんだろうな。


ちゃんと返信はしておこう。



『僕も友達なってもらえて嬉しかったよ』



--------------------




竜也に会って奏が歳上だと知ってから2日後、午前中に石川さんとリハビリの予定やカウンセリングの日程などを決めているうちに昼になっていた。

石川さんが病室から出ていき入れ替わりで食事が運ばれてくる。

昼食を食べていると奏からメールが届いた。


『今から病院行っていい?』


『大丈夫だよ、待ってるね』


と返信。

昨日1日奏に会わなかっただけなのにもう久しぶりな気がする。

昼食を終えて奏が来るのを待っていると病室のドアがノックされた。


「どうぞ」


「おはよー香太」


奏が病室に入ってきていつもの椅子に座る。


「香太、口元汚れてるよ?」


奏が笑いながら言う。


そういえば昼食後口元を拭いていない。

ティッシュを取り口元を拭う。


恥ずかしかったのですぐに話題を変えようと僕から会話を切り出した。


「今日は制服じゃないんだね」


「うん、今日は土曜だしね、わざわざ休みの日にに制服は着ないよ」


「そっか今日土曜か。思えば目が覚めてからカレンダーとか見てないや。」


スマホでカレンダーを開く。


11月18日、土曜日。


今って11月だったのか。

18日ということはえーっと事故に遭った日は...


「香太が私を助けてくれてからもう10日も経ったんだね。」


奏が僕のスマホを覗き込んでくる。

ちょっと顔が近いんですけど。


「てことは僕は8日に事故に遭ったんだ...」


「うん。そういう事だね。」


奏が僕のスマホを覗き込むのをやめて悲しい顔をする。


空気重くなっちゃったな...

なんとかして明るい話題に...


「そういえば僕って目覚めてから自分の顔見てないや。どんな顔なんだろ...」


気になるけど、とんでもなく不細工だったら悲しいな。

僕がスマホでカメラを起動させようとしたら

それより先に奏が僕の写真を撮る。


「ふふ、香太自分の顔の写真見たい?」


奏が笑いながらスマホの画面が見えないように僕の前にチラつかせる。


ぬぅ...なんか癪に障るな。


僕は右手で奏のスマホを奪う。


「あっちょっと勝手に取らなくても言ってくれれば見せるよー」


奏が声を荒らげて言う。


奏のスマホは僕の手の中にあるので恐る恐るスマホの画面を見る。


「なんというか、普通...?」


僕は自分の顔を見てそう言う事しかできなかった。

別に不細工という訳でもないがカッコイイとも言えない。

反応に困るな...

とりあえず奏にスマホを返す。


「なんか不思議な気分だなぁ、自分の顔なのに自分の顔じゃないみたいな、そんな感じがする。」


「大丈夫、間違いなくこれが香太の顔だから。私は香太の顔好きだよ?」


むぅ、お世辞だとしてもそんな風に好きとか言われると勘違いしちゃいそうだ。


「ふふ、香太赤くなってる。照れちゃったのー?」


奏が僕を見ながら笑ってる、その奏の頬が軽く赤みがかってる気がした。

多分気のせいだろう。


「もう...からかわないでよ。さっきの写真消しておいてね?恥ずかしいから。」


「ふふ、消さないよー、折角香太の写真手に入れたんだもん、記念に取っとく。」


「なんの記念だよ...」


これは言っても消さないなと思いため息をつく。

そうだ、こっちも奏の写真撮ればお互い消すってなるかな。


パシャリ


不意を付いて奏の写真を撮る。


「あっ、勝手に撮った!お互い様にする作戦か...むぅ...やりおるな」


むむむと奏が唸ってる。


「そっちが僕の写真消してくれたらこっちも消すよ?」


「えーそんなの勿体ないよー」


そしたら奏が「あっ、そうだ...」と言い


「分かった消すよ、だからそっちもちゃんと消してね?」


奏がスマホを操作して僕の写真を消してくれた。

約束は約束だ僕も消そう。

スマホを操作してさっき撮った奏の写真を消した、ちょっと勿体ないな。


「ということで、えいっ!」


突然奏が僕の顔の横までくっついてきた。

突然の事に動揺していると奏がえへへと笑いながら


「一緒に写真撮れば万事解決かなって思ってね」


くそぅ...やられたな...

やっぱり奏には適わないのかなぁ。


「突然くっついてきたからビックリしたよ…」


照れながら言うと奏は


「ははは、ごめんね」


と謝ってくれた。


今度は気のせいじゃない。

奏の頬が赤みがかっている。

奏も恥ずかしかったのかな?

まああんなに密着したらそりゃ照れるか。

僕だって凄い恥ずかしい。


「男に対してあんな事したら勘違いされちゃうよ?」


「え?あーそうだね、確かに勘違いされちゃうかも知れないね。でも大丈夫!香太ぐらいにしかこんなことしてないから!」


なんだろ、凄いドキドキする。

僕以外にはこういう事しないのか。

僕が俯いて唸っていると奏が顔を覗き込んできた。


「香太、顔赤いよ?大丈夫?」


そう言っておでこに手を当ててくる。


「凄い熱いよ!大丈夫!?えっと、えっと体温計は...」


そっかドキドキしてたのも熱のせいかな。


「そこの引き出しに体温計入ってるから取ってくれない?」


「あっ、ここね、はい!」


引き出しを開けて体温計を取ってくれる。


体温を測ってると、


「ごめんね、体調悪いのにからかったりしちゃって...」


からかってた自覚はあるんだな。


「奏が謝る必要はないよ、熱に気付いてなかった僕が悪いんだから。」


ピピピッ


体温が測り終わり体温計を見てみると


36.5℃


ありゃ、平熱じゃん...


「熱無いのにあんなにおでこ熱かったなんて変だね」


奏が笑いかけてくれたので僕も


「ほんとにね、からかわれて照れてただけかな?」


笑いながら返す。


その後も少し他愛もない話をして奏が帰る時間になり


「じゃあまた来るね、ばいばい香太」


「うんまた今度」


ドアが閉まり奏が帰ったあとふとさっきの気持ちを思い出した。


「熱無いのになんでドキドキしてたんだろ...」


そんなことを考えてるとスマホにメールが届く。


『そういえばさっき撮った写真香太に送っとくね』


メールを少し下にスクロールすると僕と奏が写った写真が載せてあった。



おいおい僕、驚きながらも凄い楽しそうに笑ってんじゃん。


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