表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
秋の夕暮れからの記憶  作者: 茶々
34/36

第33話 無気力な生活

お久しぶりです。

久しぶりですが、少し短いです。

 放送室でぼーっとしていると、校内に予鈴が鳴り響いた。

僕はスマホを取り出し時間を確認する。

すると、スマホにメッセーがに届いていたことに気づく。

メッセージの送り主は来栖さんだ。


『奏が教室からいなくなっちゃった!ごめん引き留めておく約束だったのに!怒ってる様子だったから、気を付けてね』という内容だった。


 これを事前に見ていれば、何か違ったかもしれない。

奏と喧嘩をせずに済んだかもしれない。

 …………やめだ、そんなこと今更言っても意味はない。

今は、教室に戻らないと…。


 僕は、どこかおぼつかない足取りで教室に向かって歩き出した。


 なんで、こうなったんだろう。

 何がダメだったんだろう。

 僕はいいことをしたはずなのに、どうして。

 奏に相談しておけばよかったのかな…。

でも、それで改善策が成功する保証はない。

だけど、そんなことを言い出したら、今回の策だってどこにも成功の保証はなかった。

 正解が、分からない。

そして、今後どうしていくのが正解なのかもわからない。

 僕は、どうすればいいんだろう。

 奏と仲直りをする?どうやって?

来栖さんに協力を仰ぐ?

いや、だめだろう。

これは僕と奏の問題だ。

 自分たちだけで解決しなければ。

だけど、どうすればいいのかが全く思いつかない。

そもそも、奏と話すタイミングがあるかどうか。


 はぁ…、奏の誕生日前なのに。

というか、告白の準備もしてたのに…。

気が重い。


 考え事をしながら歩いていると、あっという間に教室についてしまった。

入るのが少し怖いが、そんなことも言ってられない、入らねば。


 ガラガラとドアを開ける。

すると全員の目が僕の方に向く。


「おぉ!秋海おかえり!放送お疲れ!」


その言葉を暁に口々に「おつかれ!」「なかなか心に響いたぜ」などなど、声がかかる。


 僕は戸惑いながら、自分の席に向かう。

そして席に着いてすぐ、竜也に話しかける。


「これ、どういう事…?」


「どういうことって…、お前が頼んできたんだろう?」


 確かに頼んだが、ここまでなってるとは思わなかった。

なんか、みんなの僕を見る目が怖い。

まるで英雄でも見るかの目で見てくる。

何をどうすればこんなことになるんだよ…。

 そこのところを問い詰めると

 

「いや~…軽く声を掛けただけだったんだけどな…なんかみんなのやる気スイッチがついちゃったようで…」


「やる気スイッチがついて、どうなったの…?」


「一、二年全員がお前の意見に賛同して、凛堂先輩を笑顔で卒業させるぞって息巻いてる」


「は?」


 今なんて言った?

一、二年全員…?

流石にあり得ないだろう。

なんたって僕は、竜也に『できそうなら隣のクラスも…』程度しか言っていない。

それが、二年全部、果ては一年も全クラスって…。


「まあ、なんだ、やりすぎちゃった、てへ」


「てへ、じゃないよ…」


 そんな時教室の前に立っている人物から、教室全体に声がかかった。

 

「皆さん、授業始まってますよ?」


「「「すいません」」」


 クラス全体が一気に静かになった。

 

 


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




「で、だ。策を実行した本人の香太はなんか気にしてるっぽい顔だけどどうした?」


 流石というべきか竜也にはすぐに気づかれてしまった。

ここは正直に言った方がいいだろう。

無論一人で解決するつもりだが。


「ちょっと奏と喧嘩しちゃってね」


「は?うそだろ?お前らが喧嘩って想像できないんだが…」


「まあ僕の配慮不足だったかな…」


 僕がもう少しやり方を変えていればまず喧嘩にはならなかっただろう。

だが、今回は奏にも非があると思っている。

なんたって僕は奏のためを思って策を実行した。

そして、解決に向かって急速に事が動いている。

なのに、奏は僕を責めた。

いや、責めるのはいい。奏に何も言わなかったのだから。

 だが、ここまで怒ることはないだろう。

そして奏は感謝すらしてくれなかった。

解決しそうで嬉しかったとは言っていたが、ありがとうとは言ってくれなかった。

 別にお礼が欲しいわけではないが、少し酷いとは思った。

だから、喧嘩になったの奏にも非があると思う。勿論僕も悪いんだが。


「俺になんかできることあるか?」


「ありがとう、でもごめん、今回の事は僕と奏の問題なんだ。だから手助けはいらない」


「そうか…、分かった。でもきつかったら言えよ、俺はお前の親友なんだからな」


「うん、ありがと」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 何もしていないのに二日の時間が過ぎてしまった。

放送室での喧嘩以来奏とは会っていない。

朝も家まで来てくれることはないし、一緒に帰ることもない。

 そして今日は奏の誕生日だ。

頑張ってこの日までに解決しようと改善策を早め早めで準備してきたのに、無駄になってしまった。

いや、まだ無駄と決まったわけではない。

今日が終わるまでは…。


 学校が終わった。昨日と同じで僕は一人で家に帰ろうと、席を立つ。

階段を降り、玄関で靴を履き替え、昇降口を出ようとしたその時、校門付近に見覚えのある後姿が見えた。

僕は走って駆け寄ろうとした。

そして声を上げれば聞こえるぐらいのところまで来た。

僕は口を開けて名前を呼んだ。


「かなで……」


 声がほとんど出なかった。

こんな小さな声では聞こえるはずもなく、奏はどんどん離れてしまう。

話し合わなければいけないのに、僕は怖気づいてしまって声を掛けれない。

こんなんじゃ、仲直りなんてできない。

それどころか、今後かかわりが無くなってしまうのではないだろうか。

そんな想像までしてしまう。


 そんなことを考えているうちに、奏の姿は見えなくなってしまった。

僕は通学路から外れ、いつぞや意識を失った公園へ来た。

ベンチに座って頭を空っぽにする。

今何かを考えると、すべてがネガティブなことになってしまいそうだ。

 僕はそのままベンチで一時間ほど、ぼーっとしていた。

 


 日が落ちて、あたりは暗くなっている。

何をしているんだろう、僕は。


「帰ろう」


 そう呟いて、帰路に就いた。


 家に着いてからも特に何も変わらない。

最近の僕はずっとこうだ。常に上の空で、返事は生返事になってしまう。

はぁ…。このままじゃ、お父さんに心配をかけてしまう。

 既に生返事ばかりの事をお父さんに咎められたこともあった。

だからと言って、奏と仲直りする術が思い付かない。

どうすればいいんだよ、僕は。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 さらに一週間が過ぎた。

まだ何も変わっていない。

いい加減きつくなってきた。

メッセージを送っても反応ないし、電話をしても反応なしなんだからどうにもならない。

教室に行っても、いつも奏はいない。

学校帰りに見かけても、最初と同じだ。

 もう、どうしようもないじゃないか。

僕はどうすればいいんだろう…。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 今日は23日、クリスマスイブの前日だ。

本来の予定では、イブに奏に告白しようと思っていたが、もうそれも叶わないだろう。

なにせ、連絡すら取れないのだから。

 土曜日という事で、僕は朝からだらだらしていた。

最近は何のやる気も出ないのだ。

ただただぼーっとしている時間が多い。

 はぁ…、どうすればいいんだろうなぁ…。

来週の火曜から冬休みだから、奏とも会いづらくなる。

さらに仲直りは難しくなるだろう。

 要するに月曜日がラストチャンス。

そこを逃したら、もう後は無いかもしれない。

奏と仲直りしなくちゃ。


 誰かいい相談相手はいないだろうか。

奏の事を知らない相手の方が望ましい。

完全な第三者の意見が聞きたい。

僕と奏の状況を言って、客観的な意見をくれる人。

だけど、あいにく僕の知り合いはみんな奏の事も知っている。

 竜也に手助けはいらないといったのは、僕と奏の事を両方知っている人だと、間を取り持つことも可能になってしまうからだ。

それで、仲直りしたとしても、僕は自分で自分を許せない。

きっと奏も同じだろう。

だから、竜也は勿論、綾芽、しずねえ、お父さん、先生には相談できない。

 だけど、僕には知り合いが少ない。

誰か、僕の知り合いで、奏の事を知らなくて、相談できそうな人はいないだろうか。


「……いた」


 その人物の名前が思い浮かんだ瞬間思わず呟いてしまった。

そうだ、あの人なら相談にはうってつけだ。

僕の事は知っていても奏の事は知らないはずだ。

そして、相談しに来てもいい(・・・・・・・・・)と言ってもらえている。

 僕はすぐに連絡を取った。

連絡先は知っていたので、メールを送る。


 ポロン

 

 メール送ってからほんの10分ほどで返信が来た。


『お久しぶりです。相談という事でしたが、そちらさえよければこれからどこかで話しませんか?私は今日一日暇だったので。秋海さんも今日予定がないのでしたら、この後話をしましょう」


 驚いた。返信の速さにも驚いたが、まさか今日相談に乗ってくれるという。

正直電話でも良いと思っていたが、向こうの都合が合うなら、直接会って話した方がいいだろう。

 僕はすぐに返信をして、メールで集合場所と時間を決めた。


 向こうも結構近くに住んでいるようで、すぐに集合できそうだ。

僕はすぐさま準備した。

集合時間までは余裕があるが、すぐに準備してしまった。

 僕は焦っているのだろう、奏に仲直りを持ち掛けるチャンスが少ないことから。

準備を終え、お父さんに出かけてくると言い、家を出た。

集合場所は駅前だ。

今から行っても、だいぶ早くついてしまうだろう。

 それでもいい、今は何よりも早く解決の術を見つけ出したい。

今回の相談は、解決の兆しが見えるかもしれない最後の希望なのだから。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 駅前に着いた。

当然だがまだ相手は来ていない。

集合時間の30分前に着いたんだから当たり前だ。

 さて、ひとまず待ち時間だが、何もすることがない。

とりあえずどういった風に相談をするかを考えておこう。

まず事の顛末を話してから、僕の意見を言うか。

僕も悪いとは思っているが、ここまで怒る奏も悪いのではないかという事を。

もしかしたら客観的にみると、圧倒的に僕が悪くて奏は怒っても当然の可能性もある。

 とりあえず、そこのところの意見を聞いてから、どうやって仲直りをすればいいのかを相談していこう。

きっとあの人ならいい意見を言ってくれるはずだ。

なんたって、記憶を失った僕を支えてくれた人の一人なのだから。


 10分ほど経過した。

ついに相談相手がやってきた。

 凄く久しぶりな気がして、少し緊張してしまう。

 

「お久しぶりです、秋海さん」


「はい、お久しぶりです。急に来てもらってすいません土屋(・・)さん」


 そう、相談の相手というのは、僕が入院していた時のカウンセリング担当だった土屋雫さんだ。


ずっとどこかで出したいと思っていた土屋さんを出すことが出来ました。


毎度のごとく遅れてしまってすいません。

次回は遅れることを見越して、投稿予定日を遅くしておきます。

最近私生活が忙しくて週一はきついですので。

という事で次回の投稿予定日は8月19日です。

26日になる可能性もあります。

出来るだけ日曜に投稿と思っていたのですが、今回のように平日にポンと投稿されることもあるかもしれませんのであしからず。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ