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秋の夕暮れからの記憶  作者: 茶々
22/36

第21話 改善策

少し短いです。



「ただいまー」


「お邪魔しまーす」


奏と2人で家に入る。

やはりお父さんはまだ帰ってきていなかった。


「そういえば香太の部屋は初めてだね」


リビングで話そうとしていたのだが、何故か奏が僕の部屋が良いと言ってきた。

拒否する理由もないので部屋で話すことにしたが。


「そっか、前来た時はリビングとキッチンだけだったもんね」


「というか、男の子の部屋に初めて入る…」


「とは言っても僕の部屋何も無いから男の部屋感無いと思う…」


僕の部屋は本当に地味だ。

机にベッド、ミニテーブルにタンスに本棚。

それしかない。

少し男要素があるのは携帯ゲーム機が何種類か本棚の所に置いてあるぐらいだろうか。

だけどゲームが男っていうイメージも古い気がする。


「逆に何も無い部屋って、男の子の部屋っぽいけどな〜、女の子ってみんな色々物を置きたがるから…」


そういうものなのだろうか。


そんな話をしていると部屋に着いた。

ドアを開けて奏を部屋に招き入れる。

思えば部屋に女の子入れるのって初めてなんじゃないか?

事故後は当然だが、どうせ事故前も無かっただろうな。

まあ、女の子を部屋に入れたからなんだって話なんだが…

そもそも自分の部屋がまだ自分の部屋感無いんだよね。


「わ〜、本当に何も無いね〜」


奏が部屋に入り周りを見渡しながらそんな事を言っている。


「でしょ、最初部屋入った時少し驚いちゃったもん。

地味すぎて」


「まあでも、ある意味香太らしい部屋じゃない?」


確かにそうかもな。

僕の部屋が地味じゃないというのも性格上考えられない。


「飲み物取ってくるけど温かいお茶で良い?」


「うん、ありがと〜」


「んじゃ、お湯沸かしたりするからちょっと時間かかるけど、適当に座って待ってて」


「了解〜」


そう言ってから僕はキッチンに向かった。


えーっと…ティーバッグで良いよな…どこ置いてあるっけ…?

物の配置はまだ覚えきれてないなぁ…

あ、あった。

やっぱり寒い日は温かい飲み物が飲みたくなるよね。

とりあえずお湯を沸かして…

適当につまめるお菓子も持ってくか。

なんかあったかなぁ…

お、丁度いい煎餅があるじゃん、いいね。

あ、お湯沸いた。

電気ケトルだから早いね。

お盆にお茶を乗せてっと…

慎重に持っていこう、零したら大変だ。



あ、ドア閉めちゃってたか……左手にお盆、右手に煎餅の袋。

うん、奏に開けてもらおう。


「奏ー、両手塞がちゃってるからドア開けて貰っていい?」


「あ!うん、ちょっと待ってね!」


なんか慌ててるけどなんかあったかな。

僕の部屋には人に見せてはいけない本とかは無かったはずだから、それを見つけたとかは無いよな?無いよね?

退院した後、そういうのは一応チェックしたし…


ガチャ


「ありがと」


ドアを開けてくれたので部屋に入ってミニテーブルにお茶と煎餅を置く。


「お茶と……お、煎餅じゃん〜ありがと〜。

私醤油煎餅好きなんだよね、綾芽には年寄り臭いって言われるけど…」


「はは、でも良いんじゃない?日本人らしい好みだし。

というか僕も煎餅好きだから、年寄り臭い仲間かな?」


軽い冗談を言い、僕はお茶を啜る。

ちなみにほうじ茶だ。


「で、早速本題で悪いんだけど、話したいことって何?」


ああ、お茶を飲んでほっこりしてる場合じゃなかったな。

さて、どう話すべきか。

いきなり本題を言うでもいい気はするが少し気が進まない。

うーん…


「学校で何かあった?」


僕が悩んでいると、奏が心配したように声をかけてくれる。

僕は意を決して話すことにした。


「今日、学校で聞いた話なんだけど………」


僕は竜也から聞いた、学校での奏に対する生徒達の扱いの話をした。

話の最中、奏は凄く辛い面持ちになっていた。


「……やっぱり気付いちゃうよね…」


「朝、登校してきたところをクラスの人達に見られていたらしくて、休み時間問い詰められたんだよね」


「そっか…ごめんね、面倒かけて」


「いや、僕は別に良いんだけど……奏は、その…そういう風な扱いを受けるの辛くないの?」


僕が問い詰められたりする分には、適当に返せば問題無いからそこまで面倒ではない。

でも、奏は絶対に辛いはずだ。


「確かに辛かったけど、最初だけだったかな…今は別に何ともないよ?」


奏はこんな事を言っているけど、流石に嘘を吐いている事が丸わかりだ。

何ともないというのが本当だとしたら、こんな表情にはならなはず。

だって奏のこの表情は……『事故の事で僕に謝罪をしてきた時の顔』と同じだったから。

この表情をする時の奏は辛い気持ちになっている。

だから僕は奏に本当の事を話してもらうことにした。


「奏、嘘吐かないで」


「え……?」


「奏は本当は今でも辛いって思ってるよね?」


「………」


奏は黙ってしまう。

なので僕は、奏の目を見て力強く言葉を発した。


「僕は、奏の味方(・・・・)だよ」


「……っ!」


「だから、奏。

本当の気持ちを言ってくれないかな?」


奏は俯き、静かに言葉を紡ぎ始めた。


「……辛い。

辛いよ、学校で仲のいい人も少ないし、クラスの人に話しかけても敬語で返されること多いし…

でも…何度も何度も改善しようとしたよ…!?

それなのに何も変わらない!

今更どうにかしようなんて無理に決まってるよ!」


奏が険しい表情になる。

ここまで感情的になった奏は初めて見たかもしれない。

竜也にはどうにかしようとするなって言われてたけど、こんな奏を見てしまったら助けないわけにはいかない。

奏はどうにかしたいと思っているんだから。


「奏は今まで1人で戦っていたよね?

でも今は、僕もいるよ」


「でも…1人が2人になったってそんなに変わらないよ…」


「それはやって見なきゃ分からないよ」


「そう…かな…」


「うん、今すぐに改善策は見つからないかもしれない。

だけど2人でならすぐ見つけられるよ」


実は既に1つ改善策は思いついている。

成功するかは分からないけど、無意味では無いであろう策だ。

少しだけ後が怖い策だが。


「うん…ありがとう香太。

私と香太でなら出来る気がする。

もう諦めてたけど、私は1人じゃないんだね」


「そう、1人じゃないよ。

だから諦めないでね」


「でも、どうすれば良いんだろう」


そういえば、奏はこういう風になってしまった原因は分かっているのだろうか。


「奏はなんでこういう風になったか知ってるの?」


「多分だけど知ってるよ。

そして原因は私にあると思う。

色々と人との関わり方を間違っちゃってね…」


色々と…か。

濁して言うということは、あまり言いたくないことなのだろう。

そこら辺は奏が話してくれるまで待とう。


「そっか…。

とりあえず今日はまだ時間あるから、考えられるだけ考えよう」


「うん…」



--------------------



「流石にすぐは出てこないね」


「そうだね…

ごめんね、香太、面倒かけて…」


奏が謝ってくる。

謝ってもらいたくは無いんだけどな…


「僕が好きでやってる事だから、謝罪よりも感謝の言葉の方が聴きたいかな」


ちょっと意地悪を言ってみる。

今言っておかなければ今後も感謝より謝罪が先に出てきてしまうだろうしね。


「うん、そうだね。

ありがとう、香太」


奏が笑顔でお礼を言ってくれる。

やっぱり奏には笑顔が合ってる。

どうにかして学校でも奏が思いっきり笑えるようにしてあげたいな…


やっぱりあの改善策をやるしか無いのかな。

奏に言うと絶対に止められるから言えないけど、来栖さんには相談しよう。

というか来栖さんの協力も必要だからね。


「ただいまー、お?誰か来てるのか?」


玄関の方からそんな言葉が聞こえてくる。

どうやらお父さんが帰ってきたようだ。


「あ、結構長居しちゃったね」


「はは、そうだね。

ちょっと話するだけだったはずなのに、もう19時半になっちゃってるもん」


3時間ぐらいは話していたようだ。


「香太ー、開けるぞ。

ただいま、あ、凛堂さんいらっしゃい」


「お邪魔してます。

とは言ってもそろそろ夕飯の時間なのでお暇しますが」


「そっか、もう19時過ぎだもんな。

香太、ちゃんとお茶だしたりしたか…って、テーブルに湯呑みが二つ乗ってるんだから大丈夫か」


「うん、そこは大丈夫だよ」


「流石香太、しっかりしてるな。

とりあえず今から夕飯作るから、20時までには帰ってもらってな」


そう言ってお父さんは部屋から出ていく。


「ん、了解。

そういう事だけど、もう帰る?」


「そうしようかな、多分うちもそろそろ夕飯だろうから」


「了解。

送っていく?」


「そんな遅い時間でも無いし大丈夫だよ、ありがとね」


まあ、この間奏が来た時みたいに夜遅い訳でも無いしな。

会話をしながら奏はダッフルコートを着ていたのでもう帰る準備は完了している。


奏と一緒に玄関まで歩いて行く。


「じゃあ、帰るね。

今日は話してくれてありがとう。

私も頑張って改善出来るように考えるね」


「うん、一緒に頑張ろうね。

また明日」


「うん、また明日!」


玄関のドアが閉まり、奏の姿が見えなくなる。

さて、改善策を考えるとしますか。

1つは思いついてるけど、他を考えるのも無駄ではないだろう。

正直結構とんでもない策だしね。


そんな風に考えながら僕は部屋に戻ってきた。


「湯呑み片付けておくか」


僕はお盆を持ち上げる。

ちなみに煎餅は2人で食べ切っていた。

少量だったし夕飯は問題無いだろう。


「あれ?日記机に出しっぱなしだったっけ」


机の上に僕の日記が置いてあった。

昨日の夜読んでたんだっけ。

時々過去の自分を思い出せないかと、日記を読むことはあるけど昨日読んだんだっけな。


「まあ、いっか」


そう言って机の棚に日記を仕舞った。


「香太ー、風呂洗ってもらえないか?」


「分かったー」


さて、湯呑みだけ片付けて風呂洗うか。

そう思い僕はキッチンに向かった。

改善策を考えながら。



次回は奏視点で、奏の過去の事を書きます。


次回の更新は3/11です

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