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秋の夕暮れからの記憶  作者: 茶々
19/36

第18話 先生との会話

途中で視点変わります



奏が笑顔に戻り、僕らは駅に向かって歩き始めた。

今の時間は8時20分だ。

まさか久しぶりの登校で遅刻することになるとね。


「いやー、遅刻だねー」


「ふふ、そうだね」


遅刻確定だと言うのに奏はどこか楽しそうだ。

というか今思い返すと、さっきの奏に対する説教結構酷い事言ってた気がするな。

説教してる時どんどん熱が入って言葉がぽんぽん出てきたからな…


「なんか楽しそうだね」


「んー?ふふ、そんな事ないよ〜」


そんな事ないと言いながら顔は凄く笑ってる。

こんなテンションの奏は初めてな気がする。

そんなにさっきの説教が効いたのかな?

正直頭に血が上ってたのか、説教で何を言っていたのかはっきり思い出せない。

まあでも、今の奏を見てる限り何も問題ないだろう。


「早く行くはずだったのに、逆に遅く行くことになるとはな〜」


「そうだね。

でも、私はこうして香太とのんびり歩くの好きだよ〜?」


「まあ、僕もこういうの嫌いじゃないけどね、でも先生になんて言われるか少し心配だなぁ」


なんたって早く行って事情説明するはずが、連絡も無しに遅刻なんて、確実にお父さんに電話行くな。


「あー、駅着いちゃった。

もう少しのんびり歩いていたかったな〜」


「そうは言ってもねえ…」


「サボっちゃおっか」


「いやいやいや、ダメでしょ」


「ふふ、冗談だよ〜」


奏はこう言ってるが絶対冗談じゃなかった。

僕が否定しなかったらこのまま散歩することになってただろう。

奏がこんな冗談言うなんて、余程テンション高いんだな。


とりあえず駅の改札を抜け、駅のホームへ行く。

次の電車まで5分ほどだ。


「香太」


「ん?」


「制服に涙付けちゃってごめんね」


「いいよ、目立たないし。

それより奏、頬まだ赤いけど大丈夫?」


相当強く叩いたようで、まだほんのり赤い。


「大丈夫、痛みは全くないから」


「さっき突然顔たたき出した時はほんとにびっくりしたよ…綺麗な顔なんだから大切にしないと…」


「……………」


奏が急に黙り込む。

どうしたんだろ?


「奏?」


「!…ごめん、ちょっとぼーっとしちゃってた」


?まあ大丈夫なら良いか。

何となく、頬の赤みが増えた気がしたけど、大丈夫かな?


そんなこんな雑談しているうちにで電車が来たので乗り込む。

ちなみに凄く混んでた…

これが満員電車、ありえねえ…



--------------------



「朝の電車…恐ろしい…」


「ほんの数分だけど長く感じるよね…」


北城西駅に着き、駅から出て第一声についつい愚痴を言ってしまう。

それほど満員電車というものはきつかった。

ちなみに今はもう8時40分なのでホームルームには出れないだろう。


「とりあえず学校行こうか」


「うん」



--------------------



校門前に着き、僕は深呼吸する。

初日に遅刻というとんでもない事態になってしまったが大丈夫だろうか。


「香太、頑張ろう。

ここからは香太が頑張るしかないから私は力になれないけど、応援してる」


「ありがとう、奏。

やっぱり緊張するけど、頑張るよ」


校門からゆっくりと昇降口に向かう。

下駄箱で靴を履き変えて、学校に入る。


「じゃあ奏、また放課後」


「うん、頑張ってね香太!」


そう言って奏は僕に笑顔を見せてくれた。

これだけで頑張れる気がするのは気のせいじゃないだろう。


奏と別れた僕は教室に向かって歩き始めた。



--------------------



今日から香太が学校に来ると言っていたが何故か来ていない。

やっぱり香太の家寄ってくるべきだったかなぁ…

そんな時の担任の石田(いしだ)ちゃんから声をかけられる。


「藤井君、秋海君から連絡ない?」


そろそろ朝のホームルームが始まる時間だ。

この時間まで来てないのは明らかにおかしいだろう。


「特に連絡無いっすね…」


「そう…今日、朝早めに来て職員室で話す予定だったのだけど、何かあったのかしら…」


正直香太が遅刻とか考えられない。

なんたって香太はこれまで風邪以外での欠席は無かったし、遅刻も無かったのだ。

やっぱ何かあったのか…

学校楽しみって言ってたけど、直前になって不安に駆られたとか有り得そうだな…

なんたって記憶喪失の事を隠し通さなきゃいけないし、香太にとってはみんなが初対面みたいなもんなんだ。

直前に怖くなって家から出れなかったとしても誰も責めれないだろう。


「とりあえずお家にはホームルームの後で連絡するけど、藤井君の方も秋海君から返信きたら教えてね」


「了解っす」


そう言ってから石田ちゃんは教卓の方へ向かった。

ほんとにどうしたんだよ香太。



ホームルームが終わり先生が教室から出ていく。

まだ香太からの返信はない。


「香太、マジで大丈夫かな…」


誰にも聞こえないぐらいの声で呟きながら窓の外を見る。

ちなみに俺の席は窓側の後ろから2番目だからよくこうして窓の外を見たりする。


その時俺はありえない光景を目にする。


校門の前に香太が居た。

しかも、凛堂先輩と一緒に。


とにかく香太が来れたのはよかった。

だけどその場所で凛堂先輩と仲良さげに話すのはやばいぞ…


「あれ、凛堂先輩じゃね?」


「え?あ、マジじゃん。

あの人でも遅刻ってするんだな」


「てか、一緒にいる奴だれ?」


「あれ?あいつ秋海じゃね…?」


「え、秋海ってうちのクラスの?」


「入院して休んでる?」


「藤井!あれ秋海だよな?」


ほらね、こうなると思ったよ。


「おう、香太だな。

一応今日から来るって言ってたから、ちょっと遅れたけど来たんじゃないか?」


既にクラスの大半が窓際に集まっている。

男子の大半は「なんで秋海と凛堂先輩が?」と言い、女子は「凛堂先輩と仲良くしてる男子初めて見た」と言った具合で驚いてる。

香太と凛堂先輩が見えなくなったところで1人の男子生徒が俺のところへ来る。

俺と同じ部活の田村だ。


「秋海と凛堂先輩って仲良かったのか?」


「悪いけど、その辺は分かんねえわ」


「というか、秋海がお前以外と話してる所見たことない気がするんだけど、他に仲良い人居ただけでも驚きなのに凛堂先輩と友達とは…」


田村は2人を友達と言うが、正直それ以上の関係になってもおかしくない気がする。

というか絶対両想いだろあの2人。


そろそろ一限目が始まるのでみんな席に戻り始める。


その時、教室のドアが空いた。


みんなのお待ちかね秋海香太の登場だ。



--------------------



ガラガラガラ


僕が教室のドアを開けて教室に入った瞬間、クラスの全員の視線が僕の方へ向いた。

そしてみんながざわざわと小さな声で話している。

僕は思わず1歩後ずさってしまったが、その時後ろから声がかかった。


「秋海君!良かった〜全く連絡付かないから心配したよ!今お家に連絡したら7時半には家を出てたって親御さんに言われて…とにかく良かった。

あ、秋海君の席は藤井君の後ろね、授業始まるから座っちゃって。

それと、次の休み時間私のとこ来てくれるかな?」


恐らく担任の先生だろう。

黒髪のショートカットの優しそうな先生だ。

恐らく人気の先生だろう。

なんたって美人だ。


「あ、すいません、少し道に迷ってしまって…まあその辺の話は後でするんで、とりあえず席つきますね」


「はいはい、あ、一限目は国語ね、教科書ある?」


「大丈夫です、時間割は事前に聞いてましたから」


「よし、大丈夫そうね。

じゃあ授業始めるわね、他の子達も私語終了!静かにー」


先生がそう言ったので僕は席に向かった。

まさかの竜也の後ろだ。

しかも、窓際の一番後ろという最強の席。


鞄から筆記用具と教科書とノートを取り出し机に並べる。

さあ、ついに授業だ。

静かに気合を入れたところで竜也がこちらを振り返って小声で話しかけてくる。


「初日から遅刻とはな…ったく、連絡付かなくて心配してたんだぞ?メール気づかなかったか?」


「あ、ごめん…全く気付かなかった…」


多分だけど、奏に説教中に来てたんだな。

そりゃあ気付かないわけだ。


「とにかく色々話したいことはあるが、休み時間、覚悟しておけ」


「え?どういうこと?」


「時が来れば分かるさ、次の休み時間…は先生と話すだろうから大丈夫だけど、その次、多分やばいぞ」


「え、待って待って話が見えない」


「軽く説明するとだな、さっきの校門の所での」


「藤井君、秋海君。

授業始まってますよ?」


竜也の話の途中で先生が言葉を遮る。

やっべ、授業中なの忘れかけてた。


「後で、事情教えてよ?」


一応竜也に釘を指しておく。


「いや、教えなくてもわかると思うぞ…」


その言葉を最後に僕は授業に集中した。

前回の授業の続きなんだろうが、僕は続きも何も分からない。

とりあえず、板書をノートに写すことだけはしっかりしよう。



授業が終わるまであと少し、僕はホッとしていた。

ノートの書き方を無意識に覚えていたようだ。

前までのノートと見比べても特に違和感は感じない。

良かった、本当に良かった。

ちなみにノートの右下には、ここ重要と書いて先生の言葉を書いておいた。

何となく書きたくなってしまったのだ。

これが体は覚えてるということなのだろうか?

それはともかく授業終了のチャイムが鳴った。


「それじゃあ授業ここまで、さっき渡したプリント明日までにやっておいてねー!

あ、秋海君ちょっと職員室まで来てもらえる?」


教卓の所から僕に向けて声をかけてきた。

とりあえず机の上だけ片付けて石田先生の方へ行く。


「じゃ、行こっか」


先生の後ろについて行くように廊下を歩く。


「石田ちゃん、おはよー!」


「ともちゃんおはよーっす!」


「ちゃん付けで呼ばない!それに愛称も禁止!石田先生でしょ!」


廊下を少し歩くだけで石田先生は沢山の生徒に挨拶されている。

やっぱり親しまれてる先生だったな、今度石田ちゃんって呼んでみるか。


階段を降りてる途中に先生が声をかけてくる。

ちなみに2年の教室は3階で、1年は4階で3年は2階という構造だった。


「秋海君、怪我の方はもう大丈夫なの?」


「はい、一応杖は常に持ち歩きますが、もう杖無しで普通に歩けるぐらいには治ってますね」


「そう…良かったわ。

それで…一応病院の人や親御さんから軽く事情は聞いてるけど、その…大変だったのよね…?」


大変と言うのは記憶喪失の事だろう。

お父さんが言っていた話だが、担任の先生には事前に電話で話していたらしい。

まあ、話したと言っても記憶喪失なんて実際に見てみないと信じられないだろうけど…


「まあ、最初の頃はかなりキツかったですね…今はだいぶマシになったんですけど…」


話している内に職員室に着いた。


「込み入った話は職員室入ってからにしましょうか。

あ、もし他の教員方にも聞かれたくないなら隣の生徒指導室でも良いけど」


職員室のドアの前で先生がそんな提案をしてくれる。

どうせ10分休みなのでそんなに話さないだろうけど、出来るだけ人に知られたくないので指導室にしてもらおう。


「じゃあ、指導室の方で良いですか?やっぱり人がいると話しづらいので…」


「うん、分かった。

じゃあ指導室の方行こっか」


そう言って先生は指導室のドアを開けて入っていった。

僕も続いて入る。


机を挟んで向かい合うように椅子が置いてあり、先生は奥側に座ったので僕は手前側に座った。

お互いが座り終えたところで先生が話を切り出す。


「親御さんから聞いた話だと…記憶喪失なのよね?」


「はい、そうですね…」


「で、その事は出来るだけみんなに隠したいって事だったけど…」


「はい、多分ですけど、僕が記憶喪失って分かると色々と質問してくる人とか居ると思うんですよね。

正直、記憶の事について人に触れられたくないんです。

大人の方なら大丈夫だとは思うんですが、やっぱり高校生とかだと悪気は無くても僕にとっては聞かれたくないこととか聞いてしまうと思うんですよ…」


「確かにそうね。

特にうちのクラスの子達だと色々と失礼な事聞いちゃいそう」


この間電話で竜也に聞いていた通り好奇心旺盛な生徒達のようだ。


「で、その…嫌だったら答えなくても良いんだけど、記憶喪失ってどれぐらいの事を忘れちゃったの…?」


まあ、そこは聞いておかなきゃダメだよな。

もし勉強の事とかも全て忘れていたら補修とか多くすることになるだろうし…


「えっと…勉強の事や日常用語など、基本的な事は覚えてました。

ですが、人の名前や過去の思い出などは完全に記憶に無かったですね」


「え、それじゃあ最初は親御さんも…?」


「はい、最初に病室に来た時は初対面にしか思えませんでした。

今日学校で最初に先生やクラスの人達を見た時も同じですね」


この辺は包み隠さず言っておいた方が良いだろう。

そう言ったところで先生は凄く辛そうな顔をする。


「…………。きっと凄く辛かったよね。

多分、私には想像もできないぐらい辛かったんだよね。

それなのに秋海君凄いね、その辛さに打ち勝っちゃってるんだもん…。

でもね…、辛いことがあったらすぐに相談してね?秋海君だってまだ子供なんだから」


「はい…、ありがとうございます。

正直、たまにキツイ時あるんで、相談させてもらうかもです」


学校で相談が出来る相手が居るのは良いだろう。さらに先生だ。勉強面も教えてくれるだろう。


「うん、いつでも相談してね」


先生が優しく微笑んでくれる。

そしてその直後、少し目付きを鋭くして僕を見てくる。


「えっと、何か…?」


「秋海君ちょっと変わったよね、前までは話しかけても生返事ばっかりだったし…

それになんとなくだけど顔つきも大人っぽくなった?」


おい、前までの僕。

先生に対しても返事適当だったのかよ。


「病院で目覚めてから人と話す機会が多かったからですかね?

普通に話せるようになったのはそれが原因だと思いますよ」


「そっか、でもいい方向に変われたようで良かったわね、前までは勉強は出来ても人間関係ダメダメだったし…」


ふふふ、と口に手を当てて笑っている。


「そんなにダメダメだったんですか…」


そんな時2限目開始のチャイムが鳴り響いた。


「あっ!2限目始まっちゃう!ごめん!少し話し過ぎちゃった!」


「今から行けばきっと大丈夫ですよ、えっと2限目何だったかな…あれ?2限目体育だった気がするんですけど…」


昨日の夜、事前に教えられてた時間割を確認しながら準備をしてたから覚えているが、体育だったはずだ。

体育って体操着に着替えたりとか移動とか少し準備必要だよな…

あ、でも体操着は大丈夫か。

怪我してるし見学だろう。


「ほんっとごめん!えーっと2年体育だから…黒川(くろかわ)先生ね!後で遅れた理由は話しておくから、黒川先生には少し私と話してたってだけ言っておいて!」


「あ、はい、それは大丈夫ですけど…先生…次の授業行かなくて大丈夫何ですか…?」


僕がそう言うと「はっ!?」となってさらに慌て出した。

もしかしたらこの先生以外とドジなのかも知れない。

少し可愛く見えてしまい、僕は指導室を出る際、軽い意地悪をした。


「では、先に行かせてもらいますね。

話聞いてくださってありがとうございました、“ともちゃん”先生」


「はい、授業頑張って…ね…?今、愛称で呼びませんでした!?さっき廊下で呼ばれてるの聞いてたの!?」


先生が喚いているが僕は聞こえないふりをして指導室を出る。

ドアが閉まっていく際、指導室の中から「貴重な石田先生と呼んでくれる生徒が…うぅ…」と聞こえたが聞かなかったことにしよう。


僕は体育の準備をしようと教室に戻った。

すると教室には竜也が残っていた。


「おせえよ香太…」


「ごめん、というか先行ってても大丈夫だったのに」


「香太が教室を出た後に次の時間体育ってこと思い出してよ…これは石田ちゃんも忘れてんなって思って仕方ないから待ってたんだよ。

体育館の場所とか分かんないだろ?」


確かに分かんないな。

てか、竜也も石田ちゃんって呼んでるのか…


「まあとにかくありがと、じゃあ案内よろしくするわ」


「おう、任せとけ」


そう言って僕は竜也に着いて行き体育の授業に向かった。

次回の投稿は2/18です

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