冬の女王救出作戦
私が暖炉で暖まっていると、突然、けたたましく扉を叩く音がした。
何かと思い開けると、そこにいたのは国の兵隊だった。
「何か用ですか?」
兵隊は、冬の女王が塔から出てこない、と説明し、もし塔から出させることが出来た者には褒美を取らす、と言った。
お金に困っていた私は、これはついているぞ! と早速、塔のある湖畔に向かった。
毛皮を羽織って馬車に乗り込み、湖畔に到着すると、何やら豪華なドレスに身を包んだ女性が、塔を見つめながら立っていた。
「あなたも冬の女王を連れ出しに来たのですか?」
しかし、女性は思わぬことを口にした。
「私は春の女王。 あちらに渡りたいのですが、流氷のせいで船で渡れないのです」
私は少し考えた。
流氷のせいで渡れないのなら、いっそ湖畔を凍らせてしまえばいいのではないだろうか?
そう思い、湖畔を泳いでいるカモを捕まえ、こう命じた。
「冬の女王に、春の女王が湖畔を渡れないから、もっと気温を下げてくれと伝えて欲しい」
カモは私の命じた通り、湖畔から羽ばたき、塔の二階から中に入った。
しばらくすると、周りは吹雪始め、湖畔は瞬く間に凍り付いた。
私と春の女王は、塔まで湖畔を渡り、扉の前にたどり着くことが出来た。
「これで中に入れるな」
そう思って扉に手を触れたが、全く動く気配がない。
どうやら、扉も凍り付いて動かないようだった。
ドンドン扉を叩くと、くぐもった声が奥から聞こえてきた。
「凍りついて扉が動かないのです。 外に出れません」
声の主は冬の女王であった。
冬の女王は、冬なんて嫌いだ、という町の人の声を聞いて、感情的になり、仕返しにいつもより厳しい冬にしたのだと言った。
「でも、取り返しのつかないことになってしまった……」
冬の女王はそう言って泣き出した。
「大丈夫だ、この扉は私が何とかする。 一旦街に戻ろう」
私と春の女王は、国王に選りすぐりの氷細工の職人を集めるように頼んだ。
直ちに国王は氷細工の職人を集め、みな私の出した指示に従った。
丸一日かけて、湖畔から削り出した巨大な氷の玉が出来上がった。
「これを山の上まで運び、転がして扉に命中させるんだ!」
国の人間が一丸となり、玉を山頂まで運んだ。
そして、それを転がすと、見事塔の扉に命中した。
「やったぞ!」
こうして、塔の扉は開かれ、無事に春を迎えることができた。
終わり