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And Without Saying Goodbye Also   作者: sugar
sweets bitter(苦くもあり甘くもある)
39/40

youthful(若々しく)

 耳元を離れたミリツァは、照れくさそうに顔を伏せる。そして、リビィは口元に手をあて呆然としたまま、椅子に体を預け固まっている。


「意外とウブなのね、リビィって」

「るっせぇ...」


 手で覆い隠した口元から精一杯の反抗。リビィ以外には聴こえていないのだが、彼の行動ひとつで全てを悟ることができる。勿論、リンベルもブラムも少なからず感じる所があるようだ。特に何かを言うわけでもなく、行動を起こすわけでもなく、ただほんの僅かに進展した二人の関係を皆が心のなかで祝福していた。



 一頻り談笑を進めていた五人だったが、ブランとミリツァの慎ましやかな欠伸によって終幕の時を迎えようとしていた。


「あら、もう一時を回っているんですね」


 使い古された銀時計を覗くエミリア。


「そんなに経ったのか。どうりで、こいつらが間抜けな欠伸をするわけだ」


 睡魔に誘われ、可愛らしく目元を擦るブラムとミリツァ。ミリツァに至っては体をこくこくと揺らし、やがてリビィに預けるかのように倒れ込む。

整った寝息と安らかな寝顔はどうやら今の彼には毒だった様で、顔を背けてしまう。


「時間も時間ですし、そろそろお開きにしましょうか」

「そうですな。ブラムさん、立てますか?」

「あっ、ふぁい…大丈夫ですぅ…」


気の抜けた声に覚束ない立ち姿、今にも倒れてしまいそうだ。見かねたリンベルが肩を貸す形をとる。しかし、背丈が違いすぎる為か彼は中腰で顔を並べる。


「執事長、私が代わりましょうか?」

「なんのこれしき。まだまだ若い芽に負けてはいられませんからな」


老輩らしからぬひしとした足元、余裕にすら見えるうら若い笑み。彼が実年齢よりも若々しく見えるのは、この余裕の後ろ側に裏付けされた身体能力の高さが滲んでいるからだろう。流石に、エミリアはそこから先の言葉をたて並べるほど野暮ではない。


「ブラムさんを送り届けたらまた戻ってきます。お二人が宜しければ、お付き合いいただけますか」


ゆっくりと歩き出したリンベル達は、去り際にそう発する。


「私は構いませんよ。貴方は?」


受け取ったエミリアは、相槌を求めてリビィに目をやったのだがタイミングが悪かった。

目を固く閉じ、どうにかしてミリツァを起こそうとしていた彼は空間を把握しきれていないのか、胸をまさぐろうとしている格好になっている。




 


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