continuation of tea(お茶会の続き)
「喧嘩する程仲が良いって感じですね」
「まったく、その通りです」
また暫くの間、リビィとミリツァの微妙な距離感を保った問答は続き、リンベルとブラムはそれを傍観した。
ただ、エミリアはどこか浮かない表情でいる。視線はリビィ達に向いているのに、心はどこか遠くを視ているかのように。
「でもよ、俺より鈍感な奴も居ると・・・」
苦境のなか、突拍子もなく切り出したリビィだったが、何かを思い出したかの様に口を閉ざし目を伏せる。
その彼の行為に、一瞬ほんの一瞬だがリンベルも視線を外す。
「そんな人、居るんですか?」
「私も、皆目見当が付かないんですけど」
どうにか繕う道を模索しているリビィ。しかし、それは取り越し苦労のようだ。
ミリツァとブラムは、リビィが話題を転嫁しようとした相手に心当りはなく、ただただ小首を傾げるだけで、追求し詮索する行動を取る様子が見えなかったからだ。
「私にも分かりませんな。調理長より鈍感で無粋・・・いや、不粋な人はそう居りませんよ」
窮状に耐えていたリビィにとって、リンベルの差し挟んだ言葉は何よりの救済となりそれに急かさず呼応する。
「だあぁぁ! 寄って集って俺の事貶しやがって。はいはい、どうせ俺は無粋で不粋な上に愚鈍で矮小な人間ですよ」
精一杯の芝居口調に、自虐をトッピングして少し拗ねた演技も追加する。
そんなぎこちなさ、二人の気遣いに反応しないエミリアではなかった。
「大丈夫、貴方は無粋でも不粋でもないわ。ただ、心は不細工ね」
「畜生、なんて上手い返しなんだ。てか、お前も俺の事虐めてそんなに楽しいか?」
「えぇ、もの凄く清々しい気分だわ」
頭を抱えるリビィの姿は、芝居でも演技でもなく本当に落ち込んでいるようだ。
「まぁまぁ、吹っ掛けた私が言うのも変な話ですけど、調理長は悪い人ではないですよ。私がやるはずの仕事もいつの間にか終わってたり、水場の仕事なんて部下の私に任せてくれれば良いのに、調理長は「どんくさいお前にはやらせたくない」ってぶっきらぼうに答えるんです。でも実は私の事を気遣ってくれているんだって、気付いたんです。それまでは、本当に仕事が出来ないんだなって少し落ち込んだりもしましたけど」
華やかで、儚い百合のような面持ちでありながら、照れたような色も携えたミリツァ。今度は、そんな彼女が目を伏せる番になってしまった。
「んなことはねーよ。たまたま自分の仕事が早く終わっただけだ」
見事に、爽快なくらいに、分かりやすい言い訳を立て並べるリビィは頭をわしゃわしゃと掻いた。
その行為は、皆見慣れ過ぎて最早定番になっていた。それは、彼が照れ隠しにする行動なのは最早語るまでもなく確定的だ。