アンダー・グラウンド
エリアボスの撃破で勢い付いたプレイヤーたちは、我先にと攻略を進めていった。
既にゲーム内で1年が経過した。無論、攻略が常に順風満帆だったわけではない。
PKギルドに殺し殺され血で血を洗うような日々もあった。
不運にも罠に嵌まり抜け出せず死んだものもいた。
目の前で他者を見捨てたこともあった。
それでもプレイヤーたちは立ち止まらずに、デス・ゲームからの脱出を目指して攻略を進め、遂に3つの条件の一つまであと僅かな段階にこぎつけた。
しかし、謎解きが殊のほか難しく、手詰まりになっていた。
いや、半分ぐらい伝聞だけど。
狩りを休んで街で休んでいると、面構えの悪い10人程の剣士が此方を挑発していた。
「あー…やれやれだ。喧嘩なら買ってやるよ。店主、先にカネ払っておくぞ。
…おめーらは外だ。物があるんじゃつい使っちまうからな」
「なめやがって…」
見事にテンプレなセリフとともに激昂するアホ剣士。
俺は串焼きの最後の人切れを食い切ると、ゴミをボックスに投げ込み、外に出た。
どうやら噂を聞きつけたらしく、あたりには人だかりが出来ていた。
ふと屋根の方を見ると、例の黒ローブ集団が(4人に増えて)見下ろしていた。
こりゃ気付いてない方が多そうだな。
10人が出てきたのでルールを確認する。
「ルールはデスマッチ、BHPがゼロになったら戦闘不能、勝敗がつくまで参加者は一切エリアから脱出できない。武器アイテムは使用制限なし。敗者は勝者に対し金銭及び勝者の指定したアイテムを受け渡す。これでいいな?」
俺が訊くと、コケにされたとでも思ったのか喚きだした。
「黙れよ三下、相手してやるだけありがたく思えってんだよ」
こっそりデバイスでステを見たが武器だけたまたま強いものを拾って調子に乗ったタイプだ。
「さて、始めようか」
開始の合図とともに飛び出して俺は手近な1人の顎を蹴り上げ、股間を思い切り蹴り飛ばす。
そして蹴られた男が情けない悲鳴を上げて飛んでいく。
呆然とする9人。
俺は固まっている4人を纏めて独楽のように回転しながら蹴りを加え、弾幕を双銃の乱射で作り出して一斉に発射する。
「あと4人だ。降参は許されんぜ?」
笑みを浮かべて言うと、恐慌状態にでもなったか、1人がこちらに奇声を上げながら剣を振りかぶる。
…折角だ。少し試したいネタをやってみようか。
俺は振られた剣の動きを見定めて双銃を交差させる。
交差した双銃で白羽取り紛いの動きを見て隙だとでも思ったか2人が左右から切り込む。
俺は足で目の前の男の股間を蹴り潰す勢いで膝をぶつけ、目を閉じながら双銃から閃光弾を撃つ。
目を閉じても分かるほどの眩しい光があたりを照らす。
俺はそのまま目が眩んでいる4人を纏めてヘッドショットして決闘を終えた。
「ふぅ…疲れた」
「トナァ…」
ベンチに腰掛けて休んでいると、トナカイのきぐるみを着た槍使いがやってきた。
「何だ、トナカイさんか」
「相変わらずの呼び込み体質のようだね」
「いい迷惑だぜ」
「そんなあなたに、このトナk「それを着るくらいなら腹かっさばいて死ぬわ」
……そうか、残念だ」
すごすごと帰っていくトナカイ。
いやホントアイツ何したいんだ。無駄にイケボなのも腹立つな。
どっちかって言うとこれからのフラグになるタイプのタイトル。というかもう既に限界を感じてるよ私。