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そばにいて、ずっと。  作者: ゆたぽん
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恵みは外部の刺激により与えられるものだ。

「と、まぁ大体冗談だけれど」

「は!?」


あきらは呆然と私の方を見た。他の3人もキョトンと私の方を見つめる。


「おっ前な!なんつー悪趣味な冗談言ってんだよ!マジやめろそういうの!!」


「私の今までの言動の数々が悪趣味だとするなら、誠のストーカー行為はユニークか何か?あんたのも十分悪趣味だと思うけど」


私の一言に、うっと言葉がつまる。「悪かったと思ってるよ…」ボソッとそんな言葉が聞こえたような気がした。こいつなりに反省はしているのだろう。しかし世の中やっていいことと悪いことのけじめはつけなければならない。


「今回は特別。ゆずもいるし。次やったら縁を切る。」


「スミマセンデシタ。モウ二度ト致シマセン。」


こいつは少し調子にのりすぎる。故に、面倒くさいのだ。私の手間を省くためにも、今回は芝居まで打って説教させてもらった。


いささか酷い手段だと自覚している。反省だってしている。後悔はしていないが。


大体、こいつの粘着質っぷりは出会ったときからそうだ。


一緒に帰ることを拒否しても家まで勝手についてくるし、私の始めた習い事は大体こいつも始めるし、遊びの電話を断った際も、その電話の周囲の音から居場所を突き止めて直接会いにくるし。


お分かり頂けただろうか。ただのストーカー。一歩間違えれば犯罪…いや、もうすでに犯罪である。こんな犯罪者と付き合い続けているだけ、褒めてもらいたいものだ。


勘違いさせてしまった竜たちに謝罪をしようと、竜たちの方へ向き直った。


「勘違いさせてごめん。でもまぁそういうことだから大丈夫。」


「も〜!びっくりしちゃったよ〜!」


「でもまぁ…よくよく考えたら…詩織…だもんね…ある…ある…」


竜とゆたろの心の広さを実感した私だったが、ここで気づいた。2人は以前からの長い付き合いでの許容だ。…しかし柚はどうだろう。こんなことが受け入れらてしまう危ない輩だと思われていないだろうか。(実際そうなのだが)


「えっと…柚、ずっとこんなんじゃないよ。いつもは普通に…ちょ、ちょっとキツくいう時はあるけど…でもそれは誠が悪くて…あ、いやその…「素敵だと思う」「え」


まさかの割り込みゼリフに一瞬フリーズしてしまった。よくてスルー悪ければ絶縁まで考えていた私にとって、柚のこの発言は、世の中から腐女子が消えるくらい有り得ない発言だった。


「女子って、はっきり言わない生物じゃない?はっきり言ったとしても陰口だったり、男子には媚売って何も言わなかったり…私そういう輩とか俗物が苦手で。詩織がそういうのじゃなくて良かった。」


ゆっくり笑みを浮かべながら優しいトーンで語っていく柚。それはさながら子供をあやす母親のようだった。


しかし実際語られているのは閻魔の説教。今この子、生物っていった?輩に、俗物?はっきりすぎて最早爽快な柚の言葉に、私を含めた4人は唖然となる。


「えーと、とりあえず…お腹減ったね?」


この場の雰囲気に耐えきれなくなったのか、ゆたろが引きつった笑みを浮かべながら口にした。


するとニコニコと笑顔を浮かべた柚がこう言った。


「そうだね。何食べる?」


その笑顔、何か怖い。目がもともと細いのもあって何だか威圧感というものが感じられる。…こんな子だっただろうか。


「ドーナツ!ドーナツにしようぜ!」


そしてこいつは立ち直るの速すぎだろ。これは次もやらかすとみた。本当は縁を切ってしまおうか。


4人に1人加わって、5人になった。グループというのは偶数が好ましい。2人で分かれた時に、1人余ってしまうからだ。2人席はあるのに、3人席がなかったりするのが、そのいい例である。


しかし何故だかこの5人なら、うまくやっていけてしまう気がするのだ。とりわけ根拠も理論もないが、ただただ勘でそう思うのだ。


「俺は…この前の喫茶店がいい…あそこ…好き。」


自宅自室第一の竜が気に入る店とは、なかなかやる喫茶店だ。確かに、どこか落ち着く場所ではあったな、と感傷にひたる。


「はー!?この前ドーナツって言ったし!な、詩織!ドーナツドーナツ〜♪」


うるさい。耳元で喚かないでもらいたいものだ。これも注意事項に入れておこう。この近さだと何かに勘違いされてしまいそうだし、それもそれで個人的に不快だ。


相変わらずのニコニコ笑顔の柚は、不気味であることは否めないにしても、やはりどこか安心感がある。


人が苦手で、いつも俯いていビクビクしている竜なのに、柚には何故か関わろうと自主的に動いている。私の友達に悪い人はいないと以前語っていたことを思い出した。何だかむずがゆい様な恥ずかしい様な。


ゆたろは人に好かれこそするが、1人の時間もキチンと大事にする。気を遣いすぎるところがあり、常に疲れてしまうのが悪い癖だ。最近はそんな自分に気づいてセーブしていたにも関わらず、こうして私の対人関係には進んで付き合ってくれる。


考えれば考えるほど、自分が友人に恵まれているのだと思わされる。


誠だってそうだ。何も考えていなさそうで、実は1番気を遣っているのかもしれない。

人とは、分からないものである。


「誠、やっぱりさっきのはごめん。言い過ぎてる。一緒にいてくれるのは素直に嬉しい。しつこすぎるとダメだけど。ありがとう。」


怒る時も素直なら、謝る時も素直になるべきだ。


「…な、なにお前、ようやく俺の有り難みに気づいちゃった訳〜!?あ、もしかして、俺に惚れちゃった的な!?自分の気持ちに素直になっちゃった的な!?ま、まぁどうしてもってんなら考えてやらなくもー…「天に召されろクズ」


前言撤回。やっぱりコイツは例外だ。いつも通り真面目に締めようと思っていたのに。


「喫茶店行こうか」


「は!?ドーナツってお前この前…」


「日にちは指定してない。」


本当にめんどくさい。鬱陶しい。でも私は友人には恵まれているのだ。こんなやつでも少しは付き合ってやろう。


誠のドーナツコールをシカトしながら、柚と会話を交わす。それを後ろの竜たちが遠巻きに見つめる。


…幸せだなぁ。









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