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USBメモリ 13
『私は、職業柄もあるけど、あんまり他人に私のこと知られたくないんだ。
知らない人に知られるのが、怖いの。
それも職業柄だけど、たぶん元からでもあると思う。
……元を知らないから、断言はできないんだけどね。
なのに、寂しいの。
誰も私のことを知らなくて、もちろん私も自分のことなんか何も知らないのに、誰が私のことを知っているんだろうって思うとね、なんか、ここがジワってするの。
涙はでないんだよ?
私、こう見えて、あんまり泣かないの。
おばけ屋敷とかで怖かったり脅かされると、もちろんでるよ?……でも、卒業式とか、お葬式とか、そんな感じのでは、今まで一回も、泣けたことはないの。
どうしてなんだろう。
みんな泣いてるのに、私だけ泣いてないなーって思うとね、もっとジワってするの。
でも、やっぱり泣けないんだけど。
慣れちゃったのかな。
──お別れに。
そんな私が、誰かに覚えていてほしい、なんて、生意気だよね。
──ワガママだよね。……烏滸がましいかも。
なのに、やっぱり、私は……
……生きて、たいなぁ──……』