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序章2
たかだか十歳にしかならない娘との誓約の口づけは、なんとも甘美なものだった。
力が一気に戻り、光の放出となって当たりを照らす。
衰退していた力の戻りは、数瞬の内だった。
今までに感じたことのない若々しい息吹が、身体中を駆け巡る。
男は久方ぶりのその感覚に、酔いしれるように口の端に笑みを滑らせた。
重ねられた手はいつの間にか離れていた。
男は意識を手放した少女をそっと抱き上げると、その顔を覗き込む。
ふと、なんという名だっただろうかと思った。
少女との会話を思い出し、男は答えを見つけることなく不気味に笑った。
「こちらも、約束は果たさなければなるまい」
赤銅の翼を音もなく羽ばたかせると、男は少女を抱いたまま、闇夜に姿を消した。