第九話 A fiery sunset
今回のサブタイトル。はっきり言って適当です。
見せ場なのにすんませんm(><)m
岩山の上の二人は、互いに海を見詰めていた。助けが来るのをじっと待っているのである。
「来ねえなあ……」
進矢は小石を海に向かって投げた。
「そうだね……」
裕美は進矢の投げた小石の行方を見た。
小石は力無く失速し、海中に消えた。
「風画達……、気付いてるよな?」
進矢は裕美に訊く。
「うん、多分気付いてると思う……」
進矢達が岩の上で風画達の助けを待っている頃、風画達は大きな問題に直面していた。
「槍牙ぁ! 消防署は一一九だっけ?」
風画は携帯を手にして言った。
「風画クン、違うよ。消防署は一一〇番だって」
美奈は風画から携帯を取り上げ、一一〇番をプッシュしようとする。
「美奈、違うよ。一一〇番は警察。ついでに海の事故は一一九じゃなくて……」
沙輝は途中まで言いかけて口籠もる。
「なんだったっけ?」
一同ずっこける。
「槍ク〜ン。なんだったっけ?」
沙輝は槍牙に助け船を求めた。
「一一七だ」
槍牙は堂々と即答した。
「すご〜い。さっすが槍クン」
沙輝は早速その番号にかける。
『ピッピッポ〜ン。只今の時刻、午後四時……』
携帯を耳に当てた状態で固まる沙輝。
「どうした?」
槍牙が沙輝に問いかける。
「今ね、四時三五分だって」
風画は槍牙を睨んだ。
「じ、時報じゃねえかぁぁぁぁ!」
風画は槍牙を追いかけ回す。
「違ったようだ」
「さらりとまとめんじゃねえ!」
進矢達が救出されるには、まだまだ時間が要りそうだった。
岩山の上で待つこと数時間。待てど暮らせど一向に助けの来る気配はなかった。
「はぁ〜あ。もう日が暮れてんじゃん。何やってんだよアイツ等は〜」
進矢は手で手頃なサイズの石を探したが、めぼしい石は既に投げ尽くしていた。
投げれる石が無いことを知った進矢は、ふと顔を上げた。進矢の視界には、遙か先の水平線が、今にも太陽を飲み込まんとしている情景だった。沈みかけた太陽に照らされた空間は、ほのかな朱色に染る。
「……キレイ……」
裕美はとても小さく呟いた。それほどまでに、その時の夕暮れは美しかったのである。
「……」
進矢は美しい夕焼けなどそっちのけで、燃えるような夕焼けに魅入られている裕美を見ていた。
(いまなら……、きっと……)
進矢は覚悟を決めた。裕美の右手にそっと自分の左手を重ねる。
「えっ!」
裕美は進矢の行動に驚き、進矢の方を向く。
「高木ちゃん。俺、一度断られたけど……、やっぱり諦められない!」
進矢は裕美の瞳をじっと見詰める。裕美は目を逸らさずに、真っ直ぐに進矢を見詰め返した。
「俺……」
進矢は裕美の両手を、自分の両手で包むようにしっかりと握った。
「高木ちゃんのことが……」
鼓動の音しか聞こえなくなる。
「……好きだ!」
進矢は瞬き一つせず、裕美の答えを待つ。
「……私も……」
裕美が口を開いた。
そして。
ザザー。
裕美の答えは、波の音にかき消された。
しかし、裕美を真っ直ぐに見詰めたいた進矢は、彼女の口の動きを見逃さなかった。
あのとき、裕美の口は二回だけ動いた。
唇をすぼめるような動きと、歯が見えそうな開き方。
「……本当に……」
「……うん」
裕美は静かにうなずいた。
「ありがとう」
沈みかけた太陽は、二人の影を長く伸ばしていた。
告白から数分間。二人はそのままの姿勢で互いに見つめ合っていた。
「ねえ」
最初に口を開いたのは裕美だった。
「何?」
進矢は何気なく応える。
「どうやって帰る?」
状況は深刻だった。潮は引いた物の、波のうねりは激しさを増していた。
「どうしよ……」
進矢は困り果てた顔で辺りを見回した。
進矢が自分の背後を見たとき、進矢の目には信じがたい光景が広がっていた。
「あ、すげえ」
「どうしたの?」
裕美は進矢と同じ方向を見る。
「うわあ……」
潮が引いたせいだろうか、二人の視界には、陸地までつながる岩の道が出来ていたのである。
「これで帰れる」
進矢はそう言って、勢いよく始めの一歩を踏みだした。
「ははっ、これで帰れる。さ、高木ちゃん!」
進矢はそういって、『おいで』と言わんばかりに裕美に右手を差し出す。
裕美は顔をほころばせて言った。
「『裕美』でいいよ」
裕美はそう言って、進矢の右手と自分の右手を重ねる。
「じゃ、俺の事も『進矢』で」
進矢は軽い笑みを浮かべていった。
「うん。ヨロシクね、進矢」
二人はそう言って、夕暮れの岩道を渡り、皆の居るビーチへと帰り始めた。
この回の為にアイデアを下さった方々、有り難う御座いました<(_ _)>