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第五話 男らしさ其の弐

なんだかんだ言って、この進矢という男、かなり恵まれてますね。




 進矢が裕美の所に戻ると、そこには既に風画と美奈がいた。

 進矢は裕美の肩を叩き、

「追っ払って来たよ」

「うん、ありがとう」

 裕美は振り返って言った。

 そのやり取りを耳にした風画は、進矢を脇に抱えて皆と少し離れる。

「進矢。俺のいない間に何があった?」

「盗撮野郎が出てさ。俺が追っ払ったんだ」

「マジ!? よくやった。これは高得点だ」

 そのおり、裕美の話し声が二人の耳に入った。

「ねえ、美奈。お腹すかない?」

 風画は即座に反応し、すぐさま、進矢に耳打ちする。

「進矢、良く聴け。これから高木ちゃんをメシに誘え。そして、沢山話せ。勿論、メシ代はお前持ちだ。いいな!?」

 風画はそう言って、進矢の肩を強く叩いた。

「おう。わかった!」

 進矢は力強く答えた。


 進矢は裕美と一緒に、海の家のテーブル席に座っていた。彼の誘いはタイムリーヒットし、見事、二人っきりでの食事にこぎつけたのである。ちなみに、進矢はカレーを頼み、裕美は冷やし中華を頼んだ。

「空いててよかった」

 進矢の言った通り、店内は空いており、空席も目立つ。

「まだお昼前だもんね」

 時刻は十一時半を回ったばかりだった。

 店内が空いているせいか、注文の品はすぐ届いた。

「カレーと冷やし中華になります」

 バイトと思しき店員が、二人の所に料理を運んできた。

「いただきまーす」

 最初に料理に箸を付けたのは裕美だった。

 進矢はそこで初めて気付いた。自分が知らず知らずのうちに、裕美に見入ってることを。

「食べないの?」

 なかなかカレーに手を出さない進矢を気遣ってか、裕美は進矢に声を掛ける。

「おおっ! いや、食べるよ。ははは」

 進矢は笑って誤魔化すが、結局、カレーには手を出さない。

「はは……。それ、おいしい?」

 進矢は裕美に訊いた。どうやら、風画の指示が頭から離れていないようだ。

「うん。おいしいよ」

 裕美は一回だけ進矢を見た。

(ちくしょう。会話が続かない)

 進矢は心の中で悲観した。元々、明るい性格なのだが、意中の相手の前ではそうはいかないようだ。

 そのおり、裕美の箸が止まる。

「ん。どうした?」

 裕美の一挙手一投足に全神経を注いでいた進矢は、裕美の異変を見逃さなかった。彼女はこわばった表情のまま、冷やし中華の皿を進矢に差し出す。

「どうしたの?」

 進矢は疑問を抱きつつも、冷やし中華の皿に目をやった。すると、冷やし中華の麺に隠れるようにして、一匹のフナムシが潜んでいた。

「のわっ。なんじゃこりゃ!」

 進矢は驚いた拍子に、膝のテーブルにぶつける。すると、潜んでいたフナムシは息を吹き返し、麺を押しのけるようにして、その場から逃げ去って行った。

「高木ちゃん。大丈夫?」

 進矢は裕美の身を案じて訊く。

「うん。大丈夫……」

 裕美はこくりと頷いた。

 そのときだった。進矢の脳内で天才的なアイデアが湧いたのは。

「高木ちゃん。俺のカレー食べなよ」


 浜辺では、槍牙の穫って来たサザエとアワビの浜焼きが、槍牙の手によって振る舞われていた。

 ちなみに、フナムシのせいで昼飯を逃した進矢は、余ったサザエを美味しく頂いた。この話は、進矢と槍牙だけの秘密である。

海と言えば、フナムシしかないでしょう!

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