表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/12

第二話 sailing day 〜出航の日〜

河合美奈かわいみな 女 身長…178センチ 体重…68キロ  女子バスケ部のキャプテンの高校二年生。スポーツ万能、成績優秀、容姿端麗という三拍子揃った人。その上性格も良く、、周囲の男の魅了して止まないが、彼氏が風画なので、すり寄ってくる男は少ない。カワイイ系の美女。大好物は馬刺。


 部活の無いある日。風画達は電車で一時間半の海岸に来ていた。

 男性陣は、風画、槍牙、進矢の三名。女性陣は美奈、女バス二年の高木祐美、別の高校に通う槍牙の彼女の滝川沙輝の三名である。

 一行はとりあえず、パラソルの設営を始めた。風画と槍牙が持参したパラソルを、六人で協力しながら、さながら青春ムービーみたいに仲むつまじく設営する。

 程なくしてパラソルは設営され、一行はとりあえずくつろぐことにした。

「ふいい。じゃあ、着替えるか」

 と、進矢が切り出した。

「そだね。じゃあ、着替えよう」

 復唱するようにして、風画が言った。

 風画の一言に従うようにして、男性陣が服を脱ぎ始める。服の下に水着を着用済みなので、特に問題はない。

「私たちは向こうで着替えてくるね」

 美奈はそう言って、海の家の無料更衣室を指差す。男性陣は既に上半身裸の状態だったが、女性陣は特に驚いた様子は無く、風画が『うん、分かった』と言うと、軽く手を振ってその場を後にした。

 女性陣の後ろ姿を見届けたところで、進矢が口を開いた。

「俺さ、あの髪の長い子がいいと思うんだけど」

 髪の長い子とは、沙輝のことである。進矢は、沙輝が槍牙の彼女であることを知らない。

 風画はその事実を知りつつ、進矢を少し泳がすことにした。

「じゃあ、最初からガンガン行っちゃう?」

 風画の目は完全に悪役の目だった。しかし、皮肉にも進矢はそれに気付いていない。

「いっちゃうしかないんじゃない?」

 風画に乗せられ、やる気満点な進矢。

 そんな進矢に、槍牙が横槍を入れる。

「あまり、妙なことをしたら、そのときは覚悟しておけ」

 深く渋みのある声で槍牙が言った。それこそ、任侠映画さながらのドスの利いた口調であった。

「えっ。どういう意味?」

 進矢はうかれ気味の笑顔のままで硬直し、槍牙の方を見た。

 直後、風画が吹き出す。

「ぷわーはっはっは! 槍牙ちゃーん、それ言っちゃダメでしょー」

 涙目で笑い転げる風画。彼の笑い声は、人気のない砂浜で虚しく響く。

「えっ。だから何?」

 進矢は天性の鈍感らしい。

「わっかんないかなあ。つまりね、髪の長い子は」

 そこで風画は黙る。

「……の」

 風画は『そうが』と口パクで言ってから、槍牙を指差した。

「……」

 丁度良い間を設けてから、小指を立てる。

「わかったぁ?」

 意地悪なにんまりとした笑みを浮かべる。

「う、嘘だぁぁぁ」

 五秒間のエコー。

 海でどれだけ声を出しても、空気振動を跳ね返す物が無いので、これは心理的な描写である。ちなみに、進矢の嘆き声は着替え中の女性陣の耳にも届いた(妙な想像力を働かせた君。減点です)。

「まあ、でも。高木ちゃんも結構可愛いよ」

 風画は詫びる様に慰める。

 進矢はうなだれながら、力無く答えた。

「いや。実は。高木にはもう告った」

 風画と槍牙は呆気に取られる。

「と言うと」

 槍牙が訊いた。

「実はな。夏休み入るちょっと前にな、体育館裏に呼び出して告ったんだ」

 二人は更に驚いた。夏休み前といえば、ほんの一週間前である。

「そうか。そりゃあキツいな。でさ、何て断られたの?」

 再び現れた、悪人モードの風画。

 この年頃の男は、例え親友の失恋話でも恰好のいじりネタになる。

「いや、その。『今は、飯島クンと付き合う気にはなれない』って……」

 うつむく進矢を、槍牙が励ます。

 人の弱みに漬け込むようないじり方をする場合には、そばには必ず、いじられる側をフォローする人がいる。いじられる側が何も喋らなくなるのを防ぐためである。

「そう気を落とすな。それに『今は』なら、まだ望みはある」

 槍牙は進矢の肩に手を乗せる。

 すると、進矢の顔に生気が戻った。

「そうだよな。まだ大丈夫だよな」

 進矢は力強くガッツポーズをする。

「そうだ! まだ望みはあるぞ! 今日良いところを見せて、男らしさをアピールすればいいんだ!」

 風画はいつの間にか励ます側になっていた。

「おう! 頑張って祐美の心をゲットする!」

 進矢の言葉の後に、ちょうどよく波が寄せたりする。それこそ、某有名映画会社のタイトルロゴが映されるカットの如く。ちなみに、そこは砂浜だった。

「そうだ! その意気だ! 何事も気合いだ!」

「おう! 気合いだ! 気合いだ! 気合いだ! 気合いだあぁぁぁ!」

 進矢は一人で盛り上がり、海に向かって雄叫びを上げた。

「ねえ。何が気合いなの?」

 見ると、女性陣が着替えを済ませて勢揃いしていた(誰がどんな水着を着てるかは、皆さんのご想像にお任せします)。

「あいつは今、『恋』という大海原に、自分の舟を浮かべたんだ」

 槍牙がさらりと、気の利いた文句を放つ。実際、気が利いていたかどうかは曖昧な線引きだったが、それでも槍牙は満足げだった。

 進矢はこのときも、海原に向かって吼え続けていた。

飯島進矢いいじましんや 男 身長…180センチ 体重…74キロ           バスケ部の二年生でスタメン。顔も良く、バスケの腕もなかなかのもので割と明るい性格なのだが、頭の悪さといい加減な性格が災いして彼女がいない。典型的な部活人間。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ