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第十一話 唄と夜

久々にキャラ紹介します

レックス…風画の家の飼い犬。シベリアンハスキーのオス。仔犬のときに捨てられていた所を風画に拾われ、今に至る。忠実な成犬。

 風画達が帰りの電車に乗っている頃、風画の家を一人の男が訪れていた。

「うぁ〜〜。帰ってきたぁ!!」

 その男、風画の実の兄である彼、白狼海雅は荷物をほっぽり出して、一際大きな伸びとあくびをした。所詮兄弟である、血は争えない。

 海雅はまず、家の庭にある犬小屋へと向かった。彼が犬小屋に近付くと、そこから大きなハスキー犬が現れた。

「くぅ〜ん」

 ハスキー犬は喉を鳴らして海雅に近付く。

「おお、よしよし。久しぶりだなあ、レックス」

 海雅はそう言ってハスキー犬のレックスの頭を撫でる。

「さて、そろそろ家の中に入るとするか」

 海雅は放り出した荷物を拾い集め、家の玄関へと向かった。

「おお、懐かしき我が家よ」

 海雅は大袈裟な身振り手振りでドアノブに手をかけつ。

 がちっ。金属が噛み合うのを拒否。

「ありゃ。風画は留守か?」

 海雅はもう一度ドアノブを回す。

 がちっ。前と同じ反応。

「ちっ。こんな時に外出中かよ」

 海雅は悪態をついてドアを蹴った。

「はっはーん。さては唯一無二の兄を迎えるため、色々と歓迎の準備にと買い出しに行ってるんだな。ああ、可愛い弟だ」

 海雅は目を瞑って歓心にひたる。

「うんうん、では、その可愛い弟の帰りを待つとしますか」

「くぅ〜〜ん?」

 海雅はその場にどっかりと座り込み、レックスの体を撫でながら言った。


 突然の雨に降られた風画一行は、近くにあったカラオケボックスのひさしの下で雨宿りしていた。

「どうする? この雨じゃ帰れないよ」

 美奈がそう言うと、雨が激しさを増す。台風の影響により、正に土砂降りとも言える振り方である。

「しょうがねえ。カラオケでもすっか」

 風画はそういって、店内に入ろうとした。すると、進矢が風画を止めた。

「おい! ちょっと待て! 俺はもう金が無いんだよ!」

 進矢に呼び止められた風画は、冷たい視線で返した。

「じゃあ、別に無理しなくてもいいんだよ。お疲れさま」

 あまりに素っ気ない態度に、進矢は愕然とする。

「ふ、風画……」

「なーんてな、ウソウソ、冗談。お前の分は俺が払ってヤルよ。じゃあ、俺、金下ろして来るから」

 風画はそういって、雨に濡れつつ向かいのコンビニへと向かった。

「……。槍牙は大丈夫なの?」

 進矢は槍牙に訊いた。

「ああ、問題ない」

 槍牙は雨で濡れたサングラスを拭きながら言う。

「ところで、他の皆は平気か」

 槍牙はサングラスをかけ、女性陣の方を見た。

「うん、さっき親に電話したら『いいよ』って。この雨だもんね……」

 美奈は外を見た。激しい雨により、車道は既に水で満ちていた。

「私も平気だよ。昨日からウチのお父さん、茨城に出張してるから」

 沙輝の父親は警視庁に勤めており、かなり厳しい。

「そう。裕美は?」

 進矢は裕美の方を見た。裕美は電話をしたまま槍牙の方を向き、しばらくしてOKサインを作って見せた。

 そのおり、風画が戻ってきた。

「ただいま〜。金下ろしてきたよ」

 風画は全身びしょぬれになりつつも、笑顔を作ってみせる。

「あ、そうだ。みんな平気だった?」

 風画が全員に訊いた。すると、あちこちから『大丈夫』や『平気』といった声が聞こえた。

「じゃあ、行くか。今日は進矢の恋愛成就記念だからよ、朝までコースだ!」

 風画はそういって、カウンターへと向かう。

 そそくさと手続きを済ませると、店員からリモコンとマイクの入った籠を受け取り、皆の元へ戻ってきた。

「さあ、行こうか! 三階の三○五号室だってさ」

 風画がそう言うと、彼に従うようにして皆が階段を登る。

 部屋へ向かう途中、風画は足を止めた。

「どうしたの?」

 美奈が風画に訊いた。

「う〜ん、大事な事を忘れてる気がする……」

 風画は黙って考え込む。

「大丈夫なの?」

 美奈が風画を気遣い、風画に近寄る。

「う〜ん。ま、大丈夫だな。行こう」

 風画は気を取り直して、部屋へと向かった。


 海雅は玄関に座り込んだまま、風画の帰りを待っていた。

「遅いなあ。どこまで買い物に行ってんだ?」

 海雅が何気なく空を見上げたとき、激しい雨が降ってきた。

「にょっ! 降り出したか?」

 海雅はいきなりの雨に驚き、奇妙な声を出す。

「……早く帰って来ーい……」

 海雅は暗い夜空を見上げた。


 カラオケボックスの一室は、異様な熱気に包まれていた。

『青空 海 どう?このロケーション』

 風画はオレンジレンジを熱唱する。

『ロコローション!』

 一曲をソロで歌い上げた風画は、何とも満足げだった。

 風画がマイクを置いた直後、画面には点数が表示された。

「ははははは。七八点だってよ!」

 進矢は風画の点数を見て精一杯冷やかす。

「何おう! じゃあ、今度はお前、これ歌え!」 

 風画はやけを起こし、適当な曲コードをリモコンに入力し送信する。

 直後、画面に歌のタイトルとアーティスト名が表示される。

「『長渕剛 豚』……。なんだこりゃ?」

 進矢が首を傾げてる隙に、風画は進矢の手にマイクを忍ばせた。

「はい、では飯島進矢で『長渕剛 豚』 張り切ってどうぞ!」

 風画はホスト口調で言った。

『イエー!』

 美奈達が歓声を上げる。

「おい! ちょっと待て! こんなアグディッシブなタイトルの歌なんか歌えるか!」

 進矢は猛抗議したが、その場の空気はそれを許さなかった。

「ほれほれ、歌え!」

 完全に悪人顔の風画。無慈悲にも流れ始める、曲のイントロ。

「チクショウ……。いや、普通に歌えねえから」

 夜はまだまだ長かった。

大変申し訳御座いません<m(__)m> これから先、マジでずるずるべったりです。平に平に〜〜m(__)m

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