第十話 雨は夜更け過ぎに…
忘れなーいで この小説は あくまでもコメディーです♪
忘れなーいで このお話は 笑いながら読んでね♪♪
(某サラ金業者のCMソングのノリで)
二人はゆっくりと岩を渡り、悠々と風画達のいるビーチへと帰ってきた。
帰ってきたとき、二人は手を繋いでいた。風画達はそんな二人を見て、精一杯の祝福と冷やかしをした。
「裕美〜。良かったね」
美奈は裕美の手を両手で握り、涙目で祝福した。
「ありがとう。全部美奈のおかげだよ」
祝福ムード満点の女性陣に背を向けるようにして、風画は進矢をあれこれと拷問じみた尋問をしていた。
「言え! 高木ちゃんと何があった! いや、高木ちゃんと何をした!」
風画は進矢の首をスリーパー・ホールドで締め付ける。
「……いや、……何も……ない」
気道を圧迫され呼吸すらままならない進矢。
「ウソをつくな! 二人っきりになったんだろう!? 何も無い訳があるかい!」
お次はコブラツイスト。
「痛い! 痛い! だから、何もないってぇ!」
激痛に身悶えする進矢に、風画が追い打ちをかける。
「口の固い野郎だ! じゃあ、これならどうだあ!」
風画は右脇で進矢の頭を抱え、進矢の右わきの下に頭を入れる。そして、左腕で進矢の右足をホールドし、そのまま後方へブリッジしながら投げつけ、そのままフォールした。
それを見ていた槍牙は小さく呟く。
「おお、あれは藤波辰爾の『フィッシャーマンズスープレックスホールド』。まさか、こんな身近に使い手が居たとは……」
風画に大技を喰らった進矢は、泡を吹いて悶絶する。
「ウィナー。藤波たつ〜〜みぃ〜〜!!!」
風画は仁王立ちで両腕を高々と掲げ、風画自らウィナーコールをした。
夕暮れのビーチで一際やかましい一団。
そんな一団に近付く影があった。
「あのー」
声の主は海の家のバイトの従業員だった。
バイトの従業員は、泡を吹いて倒れている進矢に詰め寄りこう言った。
「沈んだボートは弁償して下さい。これが請求書です」
バイトの従業員は辛うじて意識を取り戻した進矢に、何やら紙切れを手渡した。
「えーと、なになに。『右の金額を請求致します。 ゴムボート代 金参八〇〇〇円 海の家 マドラス』……」
進矢は言葉を失い、再び気を失った。
帰りの電車の中で進矢は嘆いた。
「ちくしょ〜〜。今日は散々な日だ……」
浜辺で風画に投げられた挙げ句、沈んだボートの代金の支払いのせいで財布まで痛手を負ってしまったからだ。ちなみに、そのとき手持ちが足りなかった進矢は、風画達に借金をし、それでも足りなかったので、明日から一週間、海の家で働く事になったのである。
「あ〜あ、明日から一週間タダ働きかぁ〜」
進矢は大きなため息をつき、窓の外を見た。台風の影響だろうか、空はどす黒い雲に覆い尽くされている。
「まあ、でも。裕美と付き合えるわけになった事だし、プラマイゼロだな」
進矢にとって裕美と付き合うということは、それほどまでに大きなことなのである。
帰りのサラリーマンやフリーターや学生でごった返す車内で、進矢は一人感慨深げに呟いていた。
「くぁ〜〜。帰ってきたぁ〜〜!!」
風画が降りた駅のホームで、伸びとあくびを同時に放ち、かなり大袈裟な声を出す。
「ふぁ〜〜。今日はいつもの数倍疲れた。な、進矢」
風画は進矢の肩を叩いた。進矢は風画の方を向き、適当な相槌を打つ。
「じゃ、明日からの一週間タダ働き頑張ってねえん」
風画は「疲れた」と言っておきながら、進矢を冷やかす気力と体力と遊び心は残っていた様だった。
「はあぁ〜〜あ。だりいなあぁ〜〜」
進矢は深く重苦しいため息を放った。
「顧問には私から断っておこう。理由は『親族の葬儀』ということにするから、口裏合わせを忘れるな」
槍牙はサングラスをかけ直しながら言う。
「ああ。宜しく頼む……」
進矢は力無く答えた。
一行は階段を下り改札を抜け、切符売り場の前まで来た。
「さて、じゃあ解散にする? もう遅いし」
風画は駅の時計を見た。時刻は既に八時を回っていた。
「そうだね。そうしよ」
美奈が言った。
「じゃあ、解さーん」
風画がそう言うと、各々が家路に就き始めた。といっても、全員が同じ方向に住んでいるため、実質的には六人でぞろぞろ歩き始めたといった感じである。
一行が駅舎の外に出たとき、暗雲から低く重い音が聞こえ、雲の隙間から青白い光が漏れた。
「ねえ、風画クン。雨降りそうだよ」
「そうだな。よし、急ごう」
風画がそう言った直後、強烈な雷鳴が轟き、一瞬の閃光の後に激しい雨が降り始めた。
「やべえ。急げ!」
風画はそう言って走り出す。残りのメンバーは風画に急かされるようにして、一斉に走り出した。
ぐずぐず感漂う結果となりました。もう平謝りですm(__)m