フレディ・メルヴィルの恋
俺は、フレディ・メルヴィル。
魔術師の中では、有力な一族メルヴィル家の一員だ。
固有魔法は、変身魔法。
いろいろな動物に変身できる。
それを生かして、犬や鳥の姿で尾行したり、ネズミになって潜入捜査をしたりしている。
自分で言うのも何だが、結構優秀なんだ。
今日は、またいとこのプリシラと組んで尾行をしている。
彼女も王宮魔術師だ。
プリシラは、一族でも特に優秀で、学園を首席で卒業している。
入学前から地元の騎士団に協力して、犯罪者の捕縛や、尋問にも協力していた。
固有魔法は、おできができたり、下痢をしたりする、なんともえげつない魔法だ。
今日は犬に変身して尾行だ。
ターゲットはいかつい中年男だ。
その辺の野良犬を装いながら、男の加齢臭をたどって尾行する。
ターゲットの前に回り込んだプリシラが、げり魔法を叩き込んだ。
俺はすかさず避けたけど、中年男には直撃した。
「げっ!」
俺は男からの臭気に悶絶した。
犬の嗅覚は、人間の一万倍以上なんだぞ!
ちょっとは、周りのことも考えろ!
プリシラの阿呆!
ちょっと問題はあったが、無事に犯罪者の捕縛は済んだ。
今日はのんびり、王宮の食堂で昼食だ。
いるいる!
俺はいつも食堂に来ると、ある人を探す。
今日も運よくいた。
俺の癒しだ。
オリビエさんを初めて見たのは、俺が駆け出しのころだった。
俺は、追跡中の犬の姿だったので、オリビエさんは気づかなかったと思うけど。
まだそのころは新米で、うっかり尾行対象に近づき過ぎてしまった。
「なんだぁ、このちび犬。後をうろうろして、目障りなんだよ!」
そう言って俺のことを蹴ろうとしていたのを、止めてくれた。
尾行対象は、舌打ちをしてそのままどこかへ立ち去っていった。
「ひどい目に遭ったね。怪我はしていないかい?大丈夫みたいだね。よかった。」
まるで人間に話しかけるような態度に、俺は自分が犬の姿であることも忘れて見入ってしまった。
にっこり笑って俺の頭をなでてくれるオリビエさんは、天使のようだった。
その時俺は恋に落ちたのだ。
まるで危ないところを助けられた乙女のように、ずぎゅーんと俺のハートは撃ち抜かれたのであった。
なれそめはかっこ悪くて、人に言えたもんじゃないが、俺の気持ちは真剣だ。
彼女を食堂で見かけるたびに、胸の鼓動が高まる。
自分がこんなに乙女チックだとは思わなかった。
尾行や潜入は得意なのに、恋愛はさっぱりだめだ。
まだ彼女に話しかけることも出来ない。
などと考えていたら、いつのまにかプリシラがやってきて、俺の前の席に座った。
そこに座ると、オリビエさんが見えないんだが......。
俺にかまわず、プリシラは、小さな包みを差し出してきた。
「何、これ?」
「この間のお詫び。げり魔法のとばっちりの件。
王都で評判のお菓子屋さんで買ったの。
私が作ったんじゃないから、安心して。」
「うん、ありがたくもらっておくよ。」
俺はうわの空で包みを受け取り、オリビエさんを見ながら答える。
「ふーん、わかりやすいね、フレディって。」
「何のこと?」
「何か、恋のお悩みとかありませんか?
このプリシラ・メルヴィルがお役に立ちますよ。」
「別に頼むことなんか、ないよ!」
「本当?」
「うるさいな!お前の自白魔法なんて、絶対に頼まないからな!
俺は自分でオリビエさんに告白するの!
人の力なんて借りない!」
と、思わず叫んでしまった。
あたりは一瞬しーんとした。
しまった!
絶対オリビエさんにも聞かれた。
どうしよう。
「行ってきたら?
こういうことのフォローは早い方がいいよ。」
プリシラに言われて、俺はオリビエさんの方へ行く。
顔を真っ赤にして。
「あ、あの、俺はフレディ・メルヴィルって言います。
聞こえたかもしれないけど、あなたのことが好きです。
結婚を前提にお付き合いしてもらえませんか?」
ドキドキして心臓がどうかなっちゃいそうだ。
頑張れ、俺。
「はい。でもその前に正式に父に申し入れていただけますか。」
にっこり笑って、そう言ってくれた。
ああ、天使のほほえみ。
どこからともなく、ぱちぱちと拍手が聞こえ、食堂にいた人たちの祝福を受け、俺とオリビエさんは食堂を後にした。
よかったね、フレディ!
私がおせっかいを焼くまでもなかったね。
ちょっと頼りなげだけど、フレディは真面目でいい奴だ。
お幸せに!
人のおせっかいばかりしていないで、私も素敵な恋を見つけなきゃ!
「素敵な恋人ゲット計画」始動です。




