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メルヴィル一族

フレディ・メルヴィルの恋

作者: 山田裕子
掲載日:2026/08/03

俺は、フレディ・メルヴィル。

魔術師の中では、有力な一族メルヴィル家の一員だ。

固有魔法は、変身魔法。

いろいろな動物に変身できる。

それを生かして、犬や鳥の姿で尾行したり、ネズミになって潜入捜査をしたりしている。

自分で言うのも何だが、結構優秀なんだ。


今日は、またいとこのプリシラと組んで尾行をしている。

彼女も王宮魔術師だ。

プリシラは、一族でも特に優秀で、学園を首席で卒業している。

入学前から地元の騎士団に協力して、犯罪者の捕縛や、尋問にも協力していた。

固有魔法は、おできができたり、下痢をしたりする、なんともえげつない魔法だ。


今日は犬に変身して尾行だ。

ターゲットはいかつい中年男だ。

その辺の野良犬を装いながら、男の加齢臭をたどって尾行する。


ターゲットの前に回り込んだプリシラが、げり魔法を叩き込んだ。

俺はすかさず避けたけど、中年男には直撃した。


「げっ!」


俺は男からの臭気に悶絶した。

犬の嗅覚は、人間の一万倍以上なんだぞ!

ちょっとは、周りのことも考えろ!

プリシラの阿呆!


ちょっと問題はあったが、無事に犯罪者の捕縛は済んだ。

今日はのんびり、王宮の食堂で昼食だ。

いるいる!

俺はいつも食堂に来ると、ある人を探す。

今日も運よくいた。

俺の癒しだ。


オリビエさんを初めて見たのは、俺が駆け出しのころだった。

俺は、追跡中の犬の姿だったので、オリビエさんは気づかなかったと思うけど。

まだそのころは新米で、うっかり尾行対象に近づき過ぎてしまった。


「なんだぁ、このちび犬。後をうろうろして、目障りなんだよ!」


そう言って俺のことを蹴ろうとしていたのを、止めてくれた。

尾行対象は、舌打ちをしてそのままどこかへ立ち去っていった。


「ひどい目に遭ったね。怪我はしていないかい?大丈夫みたいだね。よかった。」


まるで人間に話しかけるような態度に、俺は自分が犬の姿であることも忘れて見入ってしまった。

にっこり笑って俺の頭をなでてくれるオリビエさんは、天使のようだった。

その時俺は恋に落ちたのだ。

まるで危ないところを助けられた乙女のように、ずぎゅーんと俺のハートは撃ち抜かれたのであった。


なれそめはかっこ悪くて、人に言えたもんじゃないが、俺の気持ちは真剣だ。

彼女を食堂で見かけるたびに、胸の鼓動が高まる。

自分がこんなに乙女チックだとは思わなかった。

尾行や潜入は得意なのに、恋愛はさっぱりだめだ。

まだ彼女に話しかけることも出来ない。


などと考えていたら、いつのまにかプリシラがやってきて、俺の前の席に座った。

そこに座ると、オリビエさんが見えないんだが......。

俺にかまわず、プリシラは、小さな包みを差し出してきた。


「何、これ?」


「この間のお詫び。げり魔法のとばっちりの件。

王都で評判のお菓子屋さんで買ったの。

私が作ったんじゃないから、安心して。」


「うん、ありがたくもらっておくよ。」


俺はうわの空で包みを受け取り、オリビエさんを見ながら答える。


「ふーん、わかりやすいね、フレディって。」


「何のこと?」


「何か、恋のお悩みとかありませんか?

このプリシラ・メルヴィルがお役に立ちますよ。」


「別に頼むことなんか、ないよ!」


「本当?」


「うるさいな!お前の自白魔法なんて、絶対に頼まないからな!

俺は自分でオリビエさんに告白するの!

人の力なんて借りない!」


と、思わず叫んでしまった。

あたりは一瞬しーんとした。

しまった!

絶対オリビエさんにも聞かれた。

どうしよう。


「行ってきたら?

こういうことのフォローは早い方がいいよ。」


プリシラに言われて、俺はオリビエさんの方へ行く。

顔を真っ赤にして。


「あ、あの、俺はフレディ・メルヴィルって言います。

聞こえたかもしれないけど、あなたのことが好きです。

結婚を前提にお付き合いしてもらえませんか?」


ドキドキして心臓がどうかなっちゃいそうだ。

頑張れ、俺。


「はい。でもその前に正式に父に申し入れていただけますか。」


にっこり笑って、そう言ってくれた。

ああ、天使のほほえみ。


どこからともなく、ぱちぱちと拍手が聞こえ、食堂にいた人たちの祝福を受け、俺とオリビエさんは食堂を後にした。



よかったね、フレディ!

私がおせっかいを焼くまでもなかったね。

ちょっと頼りなげだけど、フレディは真面目でいい奴だ。

お幸せに!

人のおせっかいばかりしていないで、私も素敵な恋を見つけなきゃ!

「素敵な恋人ゲット計画」始動です。

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