辺境への帰路・2
停戦監視塔で、私の背後に並ぶ六銃口の輪が低く鳴った。数は60。闇属性の砲身だけが先に熱を持ち、残る五属性が遅れて追いつこうとしている。暴走する前に、私自身が止まるためだった。
十組目が開き、六十銃口が六重の円を描いた。北、東、西から同時に侵攻した諸国は、王国が最終形を敵領へ向ければ世界の脅威だと宣伝していた。王は全軍へ同じ命令を出した。守るのは国境内の生命だけ。退いた兵を追わず、城も都も焼かない。勝利を侵略の許可へ変えない。
私は六属性を同時に放った。火は攻城塔の車軸だけを焼き、水は火薬を濡らし、風は矢雨を押し返す。土は騎兵の前へ壁を起こし、光は照準を奪い、闇は号令を断った。雨のような連射は大地を覆ったが、銃口は国境標の向こうへ一度も向かなかった。
六十銃口は標的を失っても止まらない。次の脅威を探し、退却する背中へ照準を移そうとする。私は王の声ではなく、自分で決めた境界を思い出した。六属性を互いへ循環させ、十組を一息に閉じる。最後の光が掌の前で消えた。
魔術技師ノエルは追撃を求めず、負傷者の救護を始めた。敵兵にも水が渡される。辺境騎士リゼは六十銃口の戦果ではなく、国境外への着弾が一発もなかったことを記録した。最終形は世界を征服できる証明ではない。これほどの力を持ちながら、どこで止まるかを選べるという証明だった。
夜、停戦監視塔には銃声の代わりに救護班の足音が続いた。私は砲身の熱が完全に消えるまで一人にならず、魔術技師ノエルの報告を聞いた。避難できた人数と国境外への着弾がないことが先に読まれた。
「次も、止まれますか」
私は簡単にうなずかなかった。危険が消えたふりをしないことも制御の一部だった。それでも、次に開くかどうかを決めるのは兵装でも国家でもない。私だった。




