帰還命令・2
六属性訓練場で、私の背後に並ぶ六銃口の輪が低く鳴った。数は48。水属性の砲身だけが先に熱を持ち、残る五属性が遅れて追いつこうとしている。敵影より先にそのずれを数えたのは、勝つためではない。暴走する前に、私自身が止まるためだった。
四十八銃口は、四十二銃口までとは別の兵装だった。八組の六属性が互いを増幅し、一組へ命じた停止が隣の組を加速させる。国王アルベルトと私だけが知る危険は、威力の大きさではない。撃ち続けるほどガトリングが私の判断より早く次の標的を選び始めることだった。
敵軍は国境砦を越え、避難民の列へ騎兵を向けた。私は射線を地面へ落とし、土で進路を割り、風で砂幕を作り、水で火矢を消した。火と光は鎧の手前へ撃ち、闇は後方の伝令だけを遮る。六属性を同時に使っても、殺すための一斉射撃にはしなかった。
砲兵長グレンが退却路の確保を告げる。軍議室からは追撃許可を求める声が届いたが、王の返答は短かった。「国境を越えるな」。敵が背を向けた瞬間こそ、兵器にとって最も撃ちやすい。私は四十八すべての照準を空へ外した。
一組ずつ閉じれば最後の輪が暴れる。そこで六属性を一発ずつ大地へ逃がし、八組を同時に沈黙させた。膝は落ちたが、銃声は止まった。国王アルベルトは勝利の旗を上げず、私が自分の意思で立ち上がるまで周囲を空けた。
夜、六属性訓練場には銃声の代わりに救護班の足音が続いた。私は砲身の熱が完全に消えるまで一人にならず、砲兵長グレンの報告を聞いた。倒した数ではなく、避難できた人数と国境外への着弾がないことが先に読まれた。
「次も、止まれますか」
私は簡単にうなずかなかった。危険が消えたふりをしないことも制御の一部だった。それでも、次に開くかどうかを決めるのは兵装でも国家でもない。私だった。




