国境で止まる力――国境線の内側
王都南門で、侍従長マルクは風に削られた空の薬莢を確かめた。第289話の課題は、多国籍侵攻を自国国境内で退け、二十四銃口を安定させることだった。周囲は銃口が増えるほど勝利が近づくと考えたが、レオンハルトと王だけは逆に数えた。守れる範囲が広がるほど、意志から外れた一射が奪う範囲も広がる。
偽の救援要請が決断を迫っても、アルディスは原則を変えなかった。侵略には使わない。試射に生き物を使わない。国境を越えて敗兵を追わない。そして本人の同意なく出動を命じない。切り札を持つ王が最初に示すべき力は、撃たせる権限ではなく、撃たせない責任だった。
外交官エマは威力の増大を報告したが、王は不発と停止まで同じ欄へ書かせた。レオンハルトは六属性を同時に回さず、火、水、風、土、雷、光の順をわずかにずらす。完全な同時射撃は強い。しかし回転が本人の呼吸を追い越す兆候を、二人は一度も成長と呼ばなかった。
戦場へ出た記録だけは、私の言葉で残す。私は敵の中央ではなく、まず左右の退路を見た。逃げ道を塞いで撃てば殲滅になる。守るための射撃は、敵が退ける空間を残さなければならない。私は銃口を低くし、前進を止める地面と防壁だけを削った。
夕刻、地面には風に削られた空の薬莢が残った。臣下は24銃口への前進を祝ったが、アルディスは命中数より先に民間被害なしと記した。
「王よ、私をどこまで使う」
「お前が守ると決めた場所までだ。その先へは、王命でも進ませない」
レオンハルトは短くうなずいた。力を使わない日の記録もまた、《ケルベロス》を人の意思の内側へ留める訓練だった。
工匠は壊れた標的より、停止後の銃口角度を測った。強さの証明より、戻ってこられる境界を知るためだった。




