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失敗スキル《ケルベロス》は、六属性の銃口で王国を守る  作者: 竜太郎


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国境で止まる力――遅れた回転

同盟国の河岸砦で、書記官トーマは土壁に埋まった光の粒を確かめた。第268話の課題は、多国籍侵攻を自国国境内で退け、二十四銃口を安定させることだった。周囲は銃口が増えるほど勝利が近づくと考えたが、レオンハルトと王だけは逆に数えた。守れる範囲が広がるほど、意志から外れた一射が奪う範囲も広がる。


 人質交換を装う工作員が決断を迫っても、アルディスは原則を変えなかった。侵略には使わない。試射に生き物を使わない。国境を越えて敗兵を追わない。そして本人の同意なく出動を命じない。切り札を持つ王が最初に示すべき力は、撃たせる権限ではなく、撃たせない責任だった。

 工匠ネロは威力の増大を報告したが、王は不発と停止まで同じ欄へ書かせた。レオンハルトは六属性を同時に回さず、火、水、風、土、雷、光の順をわずかにずらす。完全な同時射撃は強い。しかし回転が本人の呼吸を追い越す兆候を、二人は一度も成長と呼ばなかった。

 戦場へ出た記録だけは、私の言葉で残す。私は敵の中央ではなく、まず左右の退路を見た。逃げ道を塞いで撃てば殲滅になる。守るための射撃は、敵が退ける空間を残さなければならない。私は銃口を低くし、前進を止める地面と防壁だけを削った。

 夕刻、地面には土壁に埋まった光の粒が残った。臣下は24銃口への前進を祝ったが、アルディスは命中数より先に民間被害なしと記した。

「王よ、私をどこまで使う」

「お前が守ると決めた場所までだ。その先へは、王命でも進ませない」

 レオンハルトは短くうなずいた。力を使わない日の記録もまた、《ケルベロス》を人の意思の内側へ留める訓練だった。

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