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失敗スキル《ケルベロス》は、六属性の銃口で王国を守る  作者: 竜太郎


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最初の六銃口――十体の案山子

黒樹谷で、レオンハルトは淡く光る石粉を見つけた。記録に残る魔法は普通、一つの属性だけを帯びる。ところが《ケルベロス》の痕跡は六つに分かれ、しかも同じ一点から始まっていた。

 この区間では、魔獣に追い詰められた極限で六属性の兵装が初めて現れる。周囲は《ケルベロス》を便利な火力として数えたが、レオンハルトは同意しない。彼にとって六銃口は褒美ではなく、極限まで追い詰められた時だけ現れた生存手段だった。

 牙熊が判断を急がせても、国王アルディスは使用条件を変えなかった。領土を奪うためには使わない。国境を越えて追撃しない。人間や魔獣を試射の標的にしない。王前で能力を示した時も、防具を着せた案山子を十体並べ、それ以外を射線から外した。力を知るために命を使えば、最初から守る国ではなくなる。

 宮廷魔術師リゼは威力だけを報告書へ書こうとしたが、王は撃たなかった時間も記せと命じた。六属性を同時に放てば、鎧も障壁も単一属性の対策では耐えられない。だからこそ重要なのは、何を破壊できるかではなく、どこで止められるかだった。レオンハルトは退路を先に空けるため、呼吸と銃口の回転を一つずつ合わせた。

 訓練の終わり、地面には王だけが封じた試射記録が残った。臣下たちは成長の証と喜んだが、二人だけは黙った。六銃口が一組増えるたび、守れる範囲と同じだけ、誤った一射が奪う範囲も広がる。最終形が六組ではなく、六銃口を十組重ねた六十銃口だとすれば、国家すら一人の感情に耐えられない。

「私は武器か」

「違う。武器にされぬよう、私が王でいる」

 短い答えのあと、レオンハルトは次の訓練位置へ歩いた。第26話の記録には命中数より先に、民間被害なし、国境越えなしと記された。

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