所有されない切り札――届いた亡命状
灰鷹街道で、辺境兵ユストは回転が遅れた第十八銃口を確かめた。第191話の課題は、他国の奪取と亡命工作を退け、本人の意思を国家所有より上に置くことだった。周囲は銃口が増えるほど勝利が近づくと考えたが、レオンハルトと王だけは逆に数えた。守れる範囲が広がるほど、意志から外れた一射が奪う範囲も広がる。
制御記録を狙う夜鴉局が決断を迫っても、アルディスは原則を変えなかった。侵略には使わない。試射に生き物を使わない。国境を越えて敗兵を追わない。そして本人の同意なく出動を命じない。切り札を持つ王が最初に示すべき力は、撃たせる権限ではなく、撃たせない責任だった。
辺境兵ユストは威力の増大を報告したが、王は不発と停止まで同じ欄へ書かせた。レオンハルトは六属性を同時に回さず、火、水、風、土、雷、光の順をわずかにずらす。完全な同時射撃は強い。しかし回転が本人の呼吸を追い越す兆候を、二人は一度も成長と呼ばなかった。
平時の記録は王の視点で続いた。諸侯は沈黙を弱さと呼び、他国王は慎重さを恐怖の裏返しと読んだ。それでも王は暴走の核心を公表しない。危険を知らせることさえ、少年を脅威として売る材料になり得た。
夕刻、地面には回転が遅れた第十八銃口が残った。臣下は12銃口への前進を祝ったが、アルディスは命中数より先に民間被害なしと記した。
「王よ、私をどこまで使う」
「お前が守ると決めた場所までだ。その先へは、王命でも進ませない」
レオンハルトは短くうなずいた。力を使わない日の記録もまた、《ケルベロス》を人の意思の内側へ留める訓練だった。
敵兵が武器を捨てれば射線から外した。降伏後まで敵として扱うなら、防衛と復讐の境は消える。




