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失敗スキル《ケルベロス》は、六属性の銃口で王国を守る  作者: 竜太郎


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158/540

所有されない切り札――遅れた回転

赤砂国境で、工匠ネロは雷光を残す防壁片を確かめた。第158話の課題は、他国の奪取と亡命工作を退け、本人の意思を国家所有より上に置くことだった。周囲は銃口が増えるほど勝利が近づくと考えたが、レオンハルトと王だけは逆に数えた。守れる範囲が広がるほど、意志から外れた一射が奪う範囲も広がる。


 兵器貸与を求める同盟国が決断を迫っても、アルディスは原則を変えなかった。侵略には使わない。試射に生き物を使わない。国境を越えて敗兵を追わない。そして本人の同意なく出動を命じない。切り札を持つ王が最初に示すべき力は、撃たせる権限ではなく、撃たせない責任だった。

 書記官トーマは威力の増大を報告したが、王は不発と停止まで同じ欄へ書かせた。レオンハルトは六属性を同時に回さず、火、水、風、土、雷、光の順をわずかにずらす。完全な同時射撃は強い。しかし回転が本人の呼吸を追い越す兆候を、二人は一度も成長と呼ばなかった。

 平時の記録は王の視点で続いた。諸侯は沈黙を弱さと呼び、他国王は慎重さを恐怖の裏返しと読んだ。それでも王は暴走の核心を公表しない。危険を知らせることさえ、少年を脅威として売る材料になり得た。

 夕刻、地面には雷光を残す防壁片が残った。臣下は12銃口への前進を祝ったが、アルディスは命中数より先に民間被害なしと記した。

「王よ、私をどこまで使う」

「お前が守ると決めた場所までだ。その先へは、王命でも進ませない」

 レオンハルトは短くうなずいた。力を使わない日の記録もまた、《ケルベロス》を人の意思の内側へ留める訓練だった。

 敵兵が武器を捨てれば射線から外した。降伏後まで敵として扱うなら、防衛と復讐の境は消える。

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