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牧野、「漢」道

〈待ち人をしつ認める春の唄 涙次〉



【i】


駿河本臨氣(するがもと・りんき)- 駿河本組組長である。彼は【魔】の囁きに依り、彼が直接盃を受けた雪川組組長・雪川正述に牙を剥いた。【魔】はかう云ふ。「お前の目の上のたん瘤、雪川正述を亡き者とするのだ-」



【ii】


これは要するに、【魔】の嫉妬なのである。雪川正述は武闘派ヤクザ集團・雪川組を率いてゐたが、その義侠心から、一部の血氣に逸つた若者逹には、絶大な支持を受けてゐた。【魔】、「やつてゐる事の本質は、我々と同じ『惡』だ。それを任俠道などゝ云ひ、もて囃す人間逹は愚かである」-と云ふ譯。それで、雪川組に内部抗爭を引き起こして、関東一圓にその勢力を張る、彼らを殲滅せんと企てたのだ。



【iii】


駿河本臨氣は、雪川正述にとつて「子供格」なのであつたが、雪川の課する嚴しい掟に嫌氣が差してゐた。其処にこんな【魔】の誘ひを受けたのだから、堪らない。彼が擁するのは、たつた10名余りの子分逹であつたが、いづれも精鋭揃ひの猛者で、戰闘力には絶對の自信を持つてゐた。カンテラ、* 行き掛かり上この抗爭に卷き込まれたつて譯だが、その根本には【魔】が関係してゐるのだと、薄々勘付いてはゐた。雪川には内緒にしてゐたのだが-



* 當該シリーズ第54話參照。



【iv】


「【魔】が絡んでゐるならば、俺も出張らないとな」と、じろさん、カンテラの助太刀を買つて出た。「ついでにフルも連れて行かう。* ヤクザ界の事を良く知るフルだ。きつと良い働きをしてくれるだらう」。そんな譯で、牧野舊崇、久し振りに自慢の二丁拳銃に彈丸を込めた。



* 前々シリーズ第21話參照。



【v】


牧野、今回は「龍」への要請ではなく、彼自身を、カンテラ・じろさん、強いて云へば雪川正述が必要としてゐると聴いて、武者震ひを禁じ得なかつた。最近めきめきとその男振りを上げてゐる彼である。* 新妻・尊子は彼の身を案じたが、「なに、久々にドンパチやりたい氣分なんだよ。男つてそんなものなのさ」と牧野、優しく諭した。



* 前シリーズ第195話參照。



【vi】


抗爭- 【魔】逹は特にこれと云つた動きを見せなかつた。髙見の見物、と云ふ譯である。カンテラ、「何だ、俺逹は用なしか」。牧野「え、カンさんじろさんのバックアップなしなんですか!?」-じろさん「これもフル、きみが男として更にランクアップする機會だと思つて、連中(駿河本組組員)をやつゝけて來な」。



※※※※


〈白梅が綻ぶ頃に食膳は菜花添へ置き一氣に春めく 平手みき〉



【vii】


チャカ對チャカの爭ひである。牧野は獅子奮迅した。結果、掠り傷を少々負つたが、駿河本組の構成員は、一人殘さず牧野が殺つた。



【viii】


殘るは組長の駿河本だけである。「ま、待つてくれフル(彼は牧野がまだ雪川組のヒットマンだつた頃、兄貴分だつた)、組の跡目はお前に譲る。生命ばかりは助けてくれ」-その命乞ひは、牧野の目にも醜く映つたのだが...



【ix】


雪川正述、「そいつはいゝ。フル、いや牧野さん、俺と兄弟分の盃を交はさう」-「えつ!?」-牧野、ちらとカンテラ・じろさんの方を盗み見た。二人は「それも面白さうぢやないか」と云ふ顔をしてゐた。



【x】


と云ふ經緯で、カンテラ事務所付「開發センター」管理人兼、駿河本組組長・牧野舊崇の誕生と相なつた。子分は雪川が分けてくれた。アパートに帰つて牧野、「尊子、俺、組長になつちやつたよ」-尊子「え、え、一體何の話!?」



【xi】


カンテラ、「面白いものを見せて貰つた。俺からも禮を云ふよ。きみもこれで一國一城の主だ」-じろさん、その脇でたゞにやにやしてゐる。今回は収入こそ派生しなかつたが、雪川正述が牧野と云ふ一人の「漢」を得て、上機嫌なので、カンテラそれで良しとした。



【xii】


暴力團の動向に詳しい或る週刊誌が、でかでかと、「カンテラ一味のメンバー、牧野が組長に!?」と書き立てた。カンテラ、「參つたなあ、また無法者集團のリーダーだと揶揄されちまふ」とぼやきながらも、その實まんざらでもなさゝうだつた。「フルは本懐を成し遂げたんだな」-



【xiii】


「開發センター」センター長にして、一味の専属エンジニアである安保さん、目をぱちくりさせてゐた。そして、「世間の見る目は變はるだらうが、俺は今迄通りきみをこき使ふからな」-牧野、「そりやさうです。さうして貰へないと、こつちが調子狂つちやふ」。飽くまでも謙虛ないつものフルが、其処にゐた。お仕舞ひ。



※※※※


〈異星より來たる人かな春の水 涙次〉



PS: 牧野は嘗て果野睦夢がその黑ミサの「祭壇」役に指名した男であり、あの* 謝遷姫が岡惚れしてゐた男でもある。今回の件は、その頃から胚胎されてゐた事だと、思つて頂ければ良いのではないかな?



* 前シリーズ第88話參照。



〈戀、と掛けて...〉


月の頃は三日月です

お日様は春を謳ひ

きみと俺とを見てゐる

きみは俺のピアスを

外す事が出來るかい?

實際はじろじろ見てゐる

パパやママになる事が出來た

運のいゝ人逹の

良心を試すやうな存在なのに

俺逹- と絶句

さあ可能なら一緒に

夜をぶつとばさう

晝間は戀の時間帯ぢやない


-永田-



半ば無理矢理詩を插入・笑。長いPSをこれにて終へる。ぢやまた。


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