第3話 村外れで見つけたもの
村の中を見て回ったあと、
ミアは「村の外」に足を向けます。
見捨てられてきたのは、人だけではありませんでした。
一通り村の中を見て回ったあと、私はそのまま村外れへと足を伸ばした。
家々が途切れ、道が細くなり、やがて視界が開ける。
そこに広がっていたのは、草の生い茂る荒れ地だった。
本来なら畑として使われていたはずの土地。
だが今は、背の低い雑草と転がる石ばかりが目につき、耕された形跡はほとんど残っていない。
「……放棄、されたのね」
誰に聞かせるでもなく呟き、私はその場にしゃがみ込んだ。
指で土を掬い上げ、そっと握る。
乾いてはいる。
けれど、粉のように崩れ落ちることはなかった。
(死んだ土じゃない)
指の隙間からこぼれる土には、わずかだが粘りがある。完全に痩せきった土地なら、こんな感触はしないはず。
「おかしい……」
私はそのまま地面に指を立て、ゆっくりと土を崩した。
表面は荒れているのに、少し掘るだけで奥の土には湿り気が残っている。
(この土地……本当に、何も育たないの?)
視線を巡らせた、そのときだった。
雑草に覆われた一角に、わずかな違和感を覚えた。
地面が、ほんの少しだけ盛り上がっている。
草の根が絡み合い、まるで何かを隠すように。
「……?」
無意識に、その場所の草を掴んでいた。
力を込めて引き抜くと、乾いた音とともに雑草が抜ける。
次の瞬間――
土の中から、丸みを帯びた影が覗いた。
「……うそ」
一瞬、呼吸が止まる。
慌てて周囲の土を払いのけると、指先に伝わる、ごつごつとした感触。
さらに掘り進めると、同じ形の塊が、いくつも連なって姿を現した。
――芋だ。
それも、ひとつやふたつじゃない。
地中深く、静かに、しかし確かに根を張っている。
「……ジャガイモに、そっくり」
思わずそう呟いていた。
前世――栗原茜として生きていた頃、
それはあまりにも身近な食材だった。
子どもたちにせがまれてカレーライスの食材を買う途中、事故に遭い、そして私はこの世界で“ミア”として生きている。
だからこそ、この形、この感触、この重みは、嫌というほど覚えている。
掘り出した芋は小ぶりで、表面には傷みも見える。
芽の部分が黒ずんでいるものもあった。
けれど、腐敗臭はない。
触れた感触も、内側に張りを残している。
指先で転がしながら、胸の奥がざわつく。
(もし、これが食べられるなら――)
その瞬間、疑問が一気に押し寄せた。
なぜ、この芋は放置されているのか。
なぜ、誰も掘り起こさなかったのか。
あるいは――掘り起こして、何か問題があったのか。
前世の知識がある私にとっては、あまりにも「普通」の作物。
だが、この村では見かけない。見かけないどころか、存在しないかのように扱われている。
(……独断は、危険ね)
私は芋を布に包み、慎重に立ち上がった。
「まずは、村長のロアンに話を聞こう」
事実を確かめずに、結論を出すわけにはいかない。
(この村が、ここまで追い詰められた理由は――
きっと、私がまだ知らないところにあるはず。)
その判断が、やがてこの村の食卓を――
ひいては、村そのものの在り方を変えることになるかもしれない。
何もないと思われていた場所に、
実は「眠っていたもの」がありました。
この村が本当に失っていたのは、
作物ではなく、
それを見つけようとする余裕だったのかもしれません。
次話、この発見が村にどう受け取られるのか。
少しずつ、人と人の距離が動き始めます。




